地下都市3
「荷物はそこに置いて」
その女はそう言いながら、玄関近くの床を指差した。
そこにはまるで植物の葉を乾燥させたような香りのする、板状のマットが敷かれている。
なんか凄い独特な香ばしい匂い?みたいなのがする。
表現が難しい…でも意外といい匂いだ。
嗅いだことない匂いだけど、嫌いじゃない。
そんな感じだ。
僕は言われるがまま、肩にかけていた荷物をそっとそこへ置いた。
「さて、まず私はヘルン。君たちの名前は何と言うの?」
と、問いかけてきた。
そう言われてもな…
そういえば僕もこの少女も名前ないじゃん。
僕は少年。名前はまだない。ってか?
….あれ?このフレーズってなんだっけ。
「僕は……名前はまだありません」
女は軽く頷いた。
そして、少女の方を見て同じと問いを繰り返した。
「そう。じゃあお嬢ちゃんは?」
当然のことながら少女は何も言葉を発しない。
そりゃそうだ。
僕があの寒い中どれだけ話しかけても返事は一切なかった。
逆にここで返事をし出したら僕が嫌われてるってことになっちまう。
その沈黙があまりに長いので、僕は彼女の代わりに口を開いた。
「この子も、僕と同じです」
少女が何も言わないのを見て、彼女は一瞬困ったように眉を寄せた。
しかし、すぐに納得したかのように静かに頷く。
「なるほど。二人とも名前がないというわけね。じゃあ、新しい名前を与える必要があるわね」
彼女はそう言いながら、言葉を続ける。
「それと、君たちには会ってもらわなければならない人たちがいるの」
そう言い残し、再び螺旋階段へと足を向けた。
今度は上へ向かうらしい。
今度こそ待望の浮島かと胸を弾ませる。
階段を登りながら、「何か質問は?」と彼女がふいに問いかけてきた。
僕は迷わず、行き先について尋ねる。
「えっと……これからどこに行くんですか?」
彼女は足を止めることなく、ちらりと振り向きながら、人差し指を天に向けた。
「そこよ」
それは浮島のことを指していた。
ついにだ。
未知の体験っていつでも興奮するよね?
なぜ浮島が浮いているか。
それから、ずっと気になっていた疑問を口にする。
「あの……浮いている島って、どうやって浮かんでいるんですか?」
その質問は向こうに行ってからきこうと思っていたが、興奮のあまり、フライングしてしまった。
彼女は微かに口角を上げ、曖昧な笑みを浮かべる。
「その答えは、今から行く場所で直接聞くといいわ。私よりも、もっと詳しい人がいるから」
— μετά—
なろう作品らしい表現でふわっと投稿してきますんでよろしく〜
なろう特有の一人称視点的作品に飽き飽きしてるそこの君はこっち見て優越感にでも浸っててくれ。
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