病院5
退院の朝
この病院は意外と居心地が良かったこともあり、去るのがちょっと寂しくもある。
実際この数日で少女と会ってみてわかったことがある。
妹って結構いい。
うん。なんともいえない感情が湧き上がる気がする。
小動物を見てる気分になるくらいとても癒される。
どうやら彼女は話すことができないようだったが、それでも余りあるほどの愛嬌の持ち主である。
今日は朝、早く起きすぎてしまったこともあって、病院の表で先に兄として、少女を待つことにした。
凍えそうになるくらい寒い。
やはり寒いのは嫌いだ。もっとも、暑いのはもっと嫌いだけど…
外は一段と寒く、雪に視界が阻まれ、これから先に対しての不安が掻き立てられる。
行くあてもないし、院長が手配してくれたところへ行くけど。
何があるかあるかも分からないし、本当に不安だ。
少女も来て、出発するから時になり、言葉が投げられる。
「行ってらっしゃい。何かあれば、いつでも戻ってきて構わないから」
それは嬉しいが、ならずっとここにいるのはダメなの?って思う。
院長やスタッフ共々笑顔で、僕らを見送っている。
でもその笑顔は何故か不気味に思えた。
それでも、僕は進まなければいけないらしい。
どこにって?そんなん知るかヨ
雪の中を僕と少女で手を繋いで歩いている。
寒いし、少女は何も話さないし、寒いしでとても過酷な状況だった。
きっつ。
歩くのもしんどい。
何にも考えられない。
ただただ寒い。
でも、隣で手を繋いでる少女は弱音や苛立ちを見せることすらもなく、ただひたすらに歩き続けている。
僕が彼女の顔を覗き込むとまるで人形のようにふんわりとした笑顔を見せてくる。
だが、疲労からか、その笑顔に色がないように感じられた。
大丈夫か——
問いかけようとするが、喉がひりついて声にならなかった。
カッスカスの掠れた声がしか喉を通らなかった。
少女は小さく首を振った。
そうは言ってもどう見ても寒そうだった。
自分がこんな寒いのにそれよりも薄手の彼女が寒くないはずもない。
僕はそっと、自分の羽織っていた。上着を彼女にかけて、小さな手を握りしめた。
少女のては氷の様に冷たかった。
実はこのこの数日の間で、僕は優しいお手本の様な兄になると誓ったんだ。
困っていたら手を差し伸べ、凍えていたら服を羽織らせ、泣いていたらその涙を拭ってあげられるようなね。
だから兄として、妹であるこの少女を全力で守るんだ。
そう改めて誓った。
そうして吹雪が吹き荒れる中、少年と少女は進み続けた。
———進み続けなければならない。
失われたものを取り戻すために。
立ち止まってはならない。
喪われたものを取り戻すまでは
私は進み続ける———
— μετά—
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