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その日はそのまま、実家に泊まった。
子供たちと遊んでいたら遅くなったし、久しぶりに両親ともたくさん話をしていた。
公爵家には、一応連絡をいれておいた。
ダービンはどうせ帰ってこないだろうけど、私の帰宅を待ってくれているメイドさんたちに知らせるためだ。
翌日は実家から出勤した。
社長室で母と今日の予定や商談の打ち合わせをしていると
「あー、しまった。今日来られるクリスティーヌさんのお菓子、用意するのを忘れてたわ」
「それって、クランドールのマカロン?」
「そう。ねぇ、買ってきてくれない?私いまから別の商談があるのよ。それに、あのマカロン同じようなのがいくつかあるから、クリスティーヌさんのお気に入りはあなたしか分からないし、説明しにくいし」
「わかった。じゃぁ、早速行ってくるね」
「ありがとう!あ、一緒に経理部のジャンも連れてってくれる?社員たちの分のお菓子も何か買ってきて、経費で落としちゃって。ジャンがいれば財布 兼 荷物持ちにもなるでしょ?」
「いいの?ありがとう。じゃぁ、ジャンさんと行ってくるよ」
ジャンさんに声をかけ、一緒にクランドールまで買い出しに出かけた。
「クランドール?のお菓子ですか?」
「そう。いま女の子達の間で人気のお店なんだけど、そこのマカロンがすごくおいしいの。
クリスティーナさんって甘いのが苦手らしいんだけど、それだけは好きなんだって。
でも、普段はお仕事で各地を回っていらっしゃるから、社長がお会いする時にいつもプレゼントしてるんです。」
「そうだったんですね。俺、男兄弟で育っているうえに女の子とも親しくないから、そういうのに疎くて。」
「え?ジャンさんって彼女とかいないんですか?」
「いませんし、いたことありませんよ。欲しいとも思わないし」
「そうなの?その容姿なら女の子が放っておかなそうなのに。」
「お褒めにあずかり恐縮ですが、対した容姿はしてませんよ」
そう言って、ジャンはハハハと笑っていた。
そんな話をしながら歩いていると、街の一角がガヤガヤと賑やかになっていた。
どうやら第一王子と王女様が市場の視察に来ていたようだった。
「レイナ!」と声をかけられ振り向くと、ダービンが立っていた。
そうか、王子がいるところにダービンありだった。忘れていた。
気を利かせたジャンが「あっちで待ってる」と少し離れていった。
「昨日は実家に、そのまま泊まったんだな。」
「ダービン様、お疲れ様です。昨日は甥姪たちとあそんでいたら遅くなりましたし、両親とも久しぶりに話し込んでしまったため、泊まらせていただきました。」
「そうか。おじ様やおば様たちは元気にしてた?」
「はい、お陰様で。」
「そう、それは良かった。」
後に続く言葉を待っていると
「ダービン様、そろそろ移動されます」
と誰かが声をかけてきた。
「どうぞ、お仕事にお戻りください。私も人を待たせていますので。」と言うと、
「あ、あぁ。ではまた。」と言って、戻られて行った。
ダービンが何か言いたそうにしていた気がしたけれど、何だったのだろうか?
「お待たせしてすいません。行きましょうか。」
「今のって、、、」
「あぁ、夫です。第一王子の補佐官をしているので、今回の視察にも同行していたみたいです」
ふ~んとジャンは興味がなさそうな返事をしていた。
聞いてきたクセに。
まぁ興味を持っていろいろ聞いてこられても、久しくまともに会っていないので、困るだけなのだけれど。
そのまま無事お使いも終わり会社に戻ると「社長からの差し入れでーす」と社員のみんなとお菓子を堪能した。




