第1話「死に戻り幼馴染」
俺はハルト。どこにでもいる、しがない一般キャベタ農家だ。
一応補足するとキャベタは、葉っぱが折り重なり玉のような形になった、緑色の葉物野菜である。
俺はナイフを持ち、朝露を浴びた瑞々しいキャベタの根本を刈り取る。
「ふぃ~、今日も愛いなあ」
キャベタの輪郭をなぞるようになでおろす。こうするとキャベタは俺のフェザータッチに反応して、より甘くなるのだ。
「おはよ。今日もキモイわね。ハルト」
「おう、おはよう。ナツ。今日も可愛いな」
キャベタとの戯れに茶々を入れてきたこの薄い赤髪の少女は、俺の幼馴染であるナツだ。
「あ、朝からなんてこと言うのよ!!キャベタしか脳にないくせに!!」
「キャベタしか脳にないなんて心外だな。俺はレディのこともちゃんと考えてるんだぜ?」
「レ、レディって。ハルトもらしくない冗談止めなさいよね!!ハルト、私以外の女と話したことなんてないでしょ」
ナツは珍しく俺の言葉に驚くと、すぐさま嘲笑した。
いや流石にナツ以外の女と話したことがない訳ないだろ……まあ忘れられていること多いけど。
「冗談じゃねえって!俺だって少しは勉強してるんだぜ!この前レオンに村の合コン?とやらに連れてかれてさ……」
「は?」
「え?どうしたんだ。ナツ」
「どうしたもこうしたもないわよ。合コン?何それ聞いてないんだけど」
「いや、レオンがさあ『お前は女を知らなすぎる。俺が教えてやるからついてこい』っていうから行ったら、綺麗なお姉さんが沢山いて思わずグラッと来ちまっ……ナツ?どうした?」
「何日前?」
「え?」
「何日前か教えなさいって言ってるのよ!!この軟派童貞野郎ッッ!!!!」
「ヒ、ヒィ!?た、確か3日前だった気が……」
「はっきりしなさいよ!!さもないとそのナイフでお前のそのキャベタの芯にも劣る矮小なチ〇ポ切り落とすわよ!!」
「グスッ……そこまで言わなくても…………ヒィ!?ナイフ奪わないで!!3日!!3日前です!!」
「……そう。じゃあね」
ナツはそう言うと、自らの腹部にナイフを突き刺した。
「え?な、なんで?冗談だろ?ナツ?おい、ナツ?」
ナツは俺に正面から寄りかかり、お互い血まみれになる。
「グフッ、会うわよ。3日前の朝に」
その瞬間、世界は暗転した。
暗闇から目を覚ました俺の目に映ったのは、普段と変わらない家の天井と機嫌よく笑う幼馴染の姿だった。
「今日は遊びに行くわよ。ハルト」