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アレクシア嬢、古の歌姫を魔改造する。⑤


 「まあ、こんにちは! クリスティアナさんとおっしゃるのね、お話ができてうれしいですわ」

 《そのように言っていただけて光栄です。……あの、先だってお会いいたしましたでしょうか。王城二階の回廊で『器』が転倒した際に》

 「そうですわ、アレクシアと申します。ちゃんと覚えていてくださったのね」

 《お世話になった方のことですから、当然です。――ありがとうございました。あのままでは遠からず、機能停止状態に陥っていたと思われますので》


 曇りなく透き通っているが、どこか柔らかさも併せ持った綺麗な声だ。記憶していただけでなく、きちんとお礼まで言ってくれる律儀さにちょっと和んだ。……が、淡々と続いた言葉に一瞬背筋が寒くなる。こういう子たちにとっての機能停止とは、人間で言うところの『死』とほぼ同じ意味合いだ。やはり相当に危ない状態だったか。


 「……そうでしたのね。間に合って良かったですわ、本当に」

 《はい。貴女と、こちらに居られる皆様のおかげです。重ねて感謝を》

 「ううん、気にしないでいいよー。困ったときはお互いさまっていうし」

 「じゃの。少なくとも相手が深手を負っておるとき、見捨てるようなやつはうちの隊におらんぞ!」

 「何でそれを隊長じゃなくてお前が言うかね……まあ、そういうこった」

 「ふふふ、はい。ご無事で何よりです」


 元気よく請け合う女子コンビの後ろで、実際にここまで運んできてくれた男性陣もうなずいている。これも本人たちの気概に加え、エミーリアの活動方針が行き届いているおかげだ。わたしも感謝しなくちゃなぁと思っていたところ、やり取りを見守っていたセリオンが軽く咳払いをした。遠慮がちに口を挟む。


 『その、思い出したくもないことだろうが、もし良ければ教えてほしい。……あなたに手傷を負わせたのは、どういった相手だろうか』

 (あっ)


 おずおず、といった様子でなされたわりに核心を突く質問に、ふわふわ和みかけていたアレクシアの意識が引き戻される。そうだった、一番大事なのはそこだ。返答如何ではまず間違いなく大事になる。いや、もうとっくの昔に大事なんだけど。

 急いで視線を戻す。問われた側は、こういう時に心配されるフラッシュバックなどは特になかったらしい。ほんの一呼吸程の沈黙を挟んで、すぐに質問に応えてくれた。


 《――襲撃は背後からでしたので、あまり詳細を記憶しているわけではありません。が、魔力強化を施した鉤爪、のようなものを使ったのだと思われます。

 切り裂いたのではなく、部品を力づくでもぎ取った、という印象でしたので》



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