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アレクシア嬢、古の歌姫を魔改造する。③



 そんな素朴な質問に答えてくれたのは、やはりというか陛下であった。


 「少ないが、そういったケースも全くのゼロではない。先日もまさに遺跡の内部を護っていた『タロース』が、発掘しに来た調査隊と鉢合わせて戦闘になった、という報告書が上がっていた。条件次第では十分に可能だろう」

 「もっとも、ほんっとにレアだけどね。『タロース』の役目はいろいろあったらしいけど、中でも戦闘に特化した子たちが完全な状態で発見されたことはほとんどないの。

 単に消耗が激しくて、原型をとどめておけなかった、ってことかもしれないけど……」

 『であれば、かの御仁の役目とは? 戦いを目的としていないことは見て取れましたが』


 ずっと聞き手に回っていたセリオンが、真剣な表情で口を開いた。それを受けて、何かを思案する様子だったエミーリアがうん、と一つ頷いて話題を変える。


 「そうね、今はそっちの方が大事だわ。さっきみんなが運んできてくれたあの子だけど、まず間違いなく『タロース』だと思う。ついでに歌ってたのは、さっき言った『魔唄』でほぼ確定ね。何でかっていうと」

 「実は以前、ローディニア南部で発見されたものと非常によく似ているんだ。遭遇した関係者の証言とも一致している。――前例になった一体は、古代の神殿で長きにわたって動き続けていた。担っていたのは、神殿内部の浄化だ」


 いわく。人が集まるところには、多かれ少なかれ『気』が残る。それは気配とか雰囲気と言い換えることもできる、非常に希薄で儚いものだ。通常なら、放っておいても次の日には自然に消えているし、人体への影響はほとんどない。……はずなのだが、


 「南部遺跡は、国内でも五指に入るほどの規模だ。創造神を祀る祭殿を中心にして発展した、いわゆる神殿都市だったらしい。所属する聖職者も、日々集まってくる巡礼者も、驚くべき数だったと思われる」

 「そんな場所なら『気』だってあっという間に溜まるし、自然に消滅するのを待ってたんじゃ間に合わなかったのね。放置しとくと空気が澱んで、敏感な人は具合が悪くなることもあるし、大事な儀式が失敗するかもしれない。そんなわけで、日が落ちると自動的に歩き回って『魔唄』で浄化してくれるお人形があったんですって」

 「……なるほど。人が多く集まる重要な拠点、という部分は、王城と共通していますね。城郭を基礎とした結界が張られていますが、内部の澱みに関してはそれだけでは足りない。日ごとに自然と折り重なっていくものであれば、なおさらでしょう」

 「そーいうことね。とにかく、当面の浄化は城内警邏の騎士とか、宮廷魔導士さんたちとか、可能なら大神殿の皆さんにも協力を仰ぎましょう。日没後なら比較的手が空いてるだろうし」

 「了解です。そんじゃそれ系統の術が得意なやつ中心にして、巡回の割り当て考えねぇとな」

 「リリベットも使えるよねえ、光属性のやつ」

 「まあの、じゃがそこまで得手でもないぞ? 補助魔法が使える相方がおると助かる」


 冷静にまとめたルーカスと隊長殿に続き、騎士団の面々が今後について具体的な相談を始める。行動が早くて頼もしい限りだ、が、


 「……あのう、ちょっとよろしいでしょうか。あの『タロース』さん、わたくしが治して差し上げたいのですけれど、可能ですかしら」

 「「「「「えっ」」」」」

 『アレクシア嬢!?』


 タイミングを見計らってそうっ、と手を挙げて呼びかけたところ、居合わせた一同が目を丸くした。中でも一番驚いたであろうセリオンが、話し合いを中座してばたばた戻ってくる。相変わらず表情が豊かすぎないか、この人。


 『唐突にそんな、思い切ったことを……先程のは仮説に近いものだ、まだそうと確定したわけでは』

 「だって、ちょっとでも戦う力があるならあんなお怪我はしませんわ。自衛できない相手を攻撃した誰かさんはもちろん論外ですけれど」

 『た、確かに……いや、そうではなく! 貴女の腕前は身をもって知っているが、今までに古代遺物を扱った経験はあるのか?』

 「いいえ、だからこそやってみたいんです! こんなロマンの塊みたいな方に直に触れられるチャンス、滅多になくってよ!? これを逃したら淑女が廃るってもんですわ!!」

 『それは淑女というより青少年のセリフでは!?』


 輝く瞳で断言した相手に思わずツッコミを放つ。しかもこれは純粋に冒険に憧れて、むしろ自分から危険に飛び込んでいくタイプのやつだ。いや待て、そもそも青少年とは男女ともに使っていい言葉だったか。ならばおかしくない……違う、だからそうじゃなくて!!


 誰か一緒に説得してくれないかと、一縷の望みにかけて同僚たちに視線を送ってみる。しかしなぜか全員が微笑ましそうな、もしくは冷やかすような眼差しを向けるばかりで全く参加してくれなかった。エミーリアに至っては膝をついて爆笑しており、背中を陛下がさすって下さっているし。それでいいのか隊長殿。


 「ふ、ふふふ、まさか予想と一言一句おんなじリアクションしてくるとか……ていうかこの子たち可愛すぎる……ッ!!」

 「よしよし、相変わらず君の笑いのツボは幅広いな。――実はね、アレクシアがそう言ってくれれば、喜んで任せようと思っていたんだ」

 『……えっ』

 「まあ!! 本当ですの陛下!?」

 「ああ、もちろん。君に言伝を頼んだ彼はね、目利きで有名なんだ。直に接触してきたということは、ぜひともアレクシアに治療をお願いしたい、という意思表示だな。

 資材その他については全面的に援助させてもらうから、遠慮なく申し出てくれたまえ」

 (やっっっった――――――ッ!!!!!)


 大変快く全権委任して下さった国王陛下と、爆笑の余韻で涙目になりながら頷いてみせるエミーリアに、アレクシアは心の中でこっそり……したつもりで、うっかり全力でガッツポーズを取ってしまった。

 セリオンが頭を抱え、隊長殿が再び笑い転げたのは、もちろん言うまでもない。




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