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アレクシア嬢、勇者とともに登城する。②



 『……どうにか無事に入れたな』

 「ほらね、言ったとおりでしょ? 堂々としてらっしゃれば誰も何も言いませんわ、というかわたくしが言わせませんことよ!」

 『はは、確かに。この姿になれたのは貴女のおかげだ』


 大扉を入って、床が大理石の組み細工になっている広大なホールを通り抜け、ゆるくカーブを描く大階段を上がって直進したところが謁見の間だ。どうぞこちらでお待ちください、といったん案内された控え室(といっても邸の居間くらいある)で、こっそりそんな会話を交わす二人がいた。言うまでもなく本日、国王陛下に挨拶と報告をする予定のセリオンと、付き添いのアレクシアである。


 我がことのように嬉しそうな奥方に、こちらもホッとした風情でうなずいた勇者は、出会ったときとは随分姿が変わっていた。以前のボディは灰一色で、とりあえずの処置としてローブ状の服を着ていたのだが、


 「予備のお衣装が残っていて良かったですわ。うふふ、そうしておられるとやっぱり騎士様ですわね!」

 『うん、ありがとう。……またこの隊服が纏えるようになるとは』


 だいぶ表情豊かになった白皙の面を緩めたセリオンは、騎士団の制服姿だった。いや、正確には『制服を模した表装』を纏っていた。

 ベースは濃い紺青で、立て襟に長袖。同色のケープからは、一般部隊の色である濃緑のマントが下がっている。手元と足下は黒いグローブとブーツを模して、甲の側にある銀色の鎧もちゃんと再現してあった。

 そして頭部も、制服と揃いで支給されている紺青の帽子をパーツ化した。しっかり嵌まるようにとサイズ調節にもこだわっているので、自分で脱がない限り落っこちる心配はない。さらに、


 『髪まで付けてもらってしまって……大変だったろうに』

 「いいえ、全然! 合金を繊維状に形成したものの残りですもの、何にも苦労なんてしていなくってよ」


 以前は全く毛髪がなく、いかにも機械といった様子だったのだが、それでは帽子を取ったとき――つまり日常生活も含めた多くのシーンで、本人がちょっと寂しい思いをするかもしれない。

 そこでパーツの着脱も考えて、額から頭頂部、そして耳の辺りにかけてはヘアバンド状のパーツで覆い、その下から髪に見立てた糸状の合金を垂らすことにした。今日は左の肩口でまとめており、マントと共布の帯で結わえてある。ややくすんだ、柔らかい風合いの銀色によく映えている。


 (最近の肖像画があって良かったなー。だいぶ元の姿に近づけられたし、本人も嬉しそうだし。うん、満足!) 


 正直、成人の記念に描いたという絵を見せてもらったときはびっくりした。こんなに綺麗な顔立ちだったなら、姿形が一変したときはみんな驚いたし悲しんだだろう、とありありと想像できた。だからこそ、本人の意思を確認しながら、全力で再現に挑んだのである。結果が出せて良かった!

 心の中でガッツポーズを決めつつ、実に嬉しそうににこにこしているアレクシアを、勇者が琥珀色の瞳で穏やかに見つめ返してきた。ん? と首を傾げたところ、照れた様子で頬をかいて、


 『ああ、その、……出がけに言いそびれてしまったな。貴女もよく似合っている』

 「まあ、本当ですか? ありがとうございます、こういう落ち着いた色は初めてで」


 思いがけず褒めてもらって、こちらも照れが混じった笑みでドレスの裾を撫でてみる。セリオンの表装によく似た紺青で、全体的に装飾が控えめで落ち着いた雰囲気だ。しかしながら要所に銀糸で刺繍がしてあったり、ひだを寄せたスカートが後ろ側だけ長い、いわゆるフィッシュテールになっていたりと大人っぽい意匠だった。奥様は御髪が栗色なので、どんな色もお似合いになって選びがいがありますわ!! とは、直前まで協議を重ねていた侍女さんたちの言である。


 「わたくしの歳ではちょっと早いかな、と思っていたのですけど、そう言っていただけてほっといたしました。帰ったらすぐ、マリエッタさんとメグさんに山ほどお礼を言わなくては」

 『早すぎる事もないと思うが。と、いうより――』 


 相手が何か言おうとしたとき、ちょうど響いたノックの音に遮られる。飾り彫りが見事な扉の向こうから、先ほどと同じ侍従の声が静かに呼びかけてきた。


 「お待たせいたしました。国王陛下がお呼びにございます、どうぞ謁見の間へ」


 さあ、いよいよ本日のメインイベントである。アレクシアはふわふわしていた気持ちを引き締めて、セリオンが差し出してくれた手を取って立ち上がった。



いろんなファンタジー衣装を参考に、こんなのがいいかなぁと表装デザインを考えるのが楽しかったです。伝わってほしい作者の萌え、いやこだわり← イラストが描ければなぁ……

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