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夜の夢こそ  作者: 夜久刹
2/11

女の笑顔

 女は笑うと左の頬にだけ笑窪ができる、崩れた笑い方をする女性だった。


 ――不器用なものだなと思う。

 

 一体、どれほどの過酷な生活を送れば、それほど歪に笑うようになるのだろうか。目じりがしっかりと下がり、口角が笑う定位置にすっと上がり、戻る。表情筋全体で笑うという動作を行っている。しっかりとした笑顔なのだ。


 ――しかし、不細工なものだなと思う。


 女の顔はそれはもう端麗なものであり、天女の生き別れた妹のような顔立ちで、多くの男が月のように美しいと言葉にするのがよくわかる、本当に美しい女性だった。それもただ美しいというだけではなく、常軌を逸した美しさというのか、白すぎる素肌がほどけた着物から覗くたび、これは死ぬな、これは死ぬなと思う危うい美しさも兼ね備えているのだ。


 男という生き物は少し危うい女が好きである。だから、不細工だなと思ったのは女の外見がとかではなくて、直感的に。まるで運命的に出会ってはいけなかったとでもいう様に。切れ長の目を、日本人離れした高い鼻を、ぷっくりとした血色の良い唇を、不気味なほどしっかりとした笑顔を、私はそのどれも綺麗だと認めることができなかった。


 私はもう一度、女の方に振り返ってみて、


「暗鬱なものだよ、まったくね……」と心做し小さな声で言った。女はやはり不器用な笑顔だった。


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