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ヤンキーな魔女  作者: 伊川有子
スピンオフ・ランス編
52/66

1話・俺この子と結婚する!

総合評価一万祈願作品

時が経つのは早いものでもう結婚してから100年余り経った。数字にしてみれば仰天するが体感速度はそうでもない。

しばらく経ってから気づいたのだが、こちらの世界は向こうの世界よりも時間が流れるのが早いようだ。それは一日24時間だとか一年365日といった歴の話ではなく、時間の概念と感覚が違う。一万年の寿命ってどんだけ長生きすりゃいいんだよと思ってたが、こちらの時間の感覚的にはそこまで途方もない長い時間ってわけでもないらしい。まさに世界そのものが違うわけだから。


時間が経てば当然子供達も成長する。・・・・・が、一番頭を悩ませているのは長男のランスだ。親の贔屓目で見なくても、頭良し顔良しで性格だって悪いわけじゃない。


ただしランスはいつまでたっても女の影がなさすぎる。このまま一生結婚しないんじゃねえのと思ってた





―――――――のに!!






ランスから話があるから来てくれと言われて集まった城の一室。珍しいこともあるもんだと皆して来てみれば、呼び出した張本人のランスは遅れて登場した。・・・・女性を引き連れながら。


「父さん、母さん、俺この子と結婚する!」


そう言ってランスは掴んでいた女性の手首を勢いよく引き上げた。


皆、絶句。


何故ってその女に問題がありすぎたから。


「「「ローゼリアああああ!?!?」」」


ローゼリアといえば嫁いできた最初こそレオナードに気に入られようと必死になって頑張っていたものの、あたしたちの不仲説が無くなったとたんあっさりと身を引いて、それからは別邸で静かに暮らしていた。


彼女は顔を真っ青にしてすっごく申し訳なさそうな、それでいてどこか諦めきった表情をしてされるがままになっている。レオナードは固まってるし、レヴィナは状況が飲めなくてポカンとしてるし、ルードリーフたちは顔面崩壊を起こしてるし、・・・・あたしだって母親として複雑すぎるわ。


「ちょっと落ち着けランス。なんでローゼリアなんだよ。その人一応レオナードの奥さんなわけなんだけど?」


血は繋がってなくてもカテゴリー的には母親枠だろ!?

幼い頃に「ぼくお母さんと結婚するー」なんて言われたことはあるけど、まさか本当に(義理の)母親と結婚しようとするなんて吃驚だ。


「もちろん知ってるよ」


「それでもローゼリアがいいわけ?ってかどの辺が良くて結婚したいと思ったんだ?」


「サバイバル能力!!」


ランスはまるで子供のように目をキラキラさせて言い放った。


嫁にサバイバル能力を求めるんじゃねえよ。ってかローゼリアになんでサバイバル能力があると思ったわけ。その子こってこてのお嬢様なんだけども。

再びあたしらが絶句しているとルードリーフが混乱しながらも必死に切り込んでいった。


「いえ、いえ、ですが、仮に彼女にサバイバル能力があったとして、何故婚姻に至るんです?

殿下のご意志は尊重したいのですが、やはりいろいろと問題のほうが多すぎます」


「だって世界中連れ回せるじゃん!」


「放浪の旅に女性を同行させる気っすか・・・」


アルフレットがぽそりと呟く。

暗ーい雰囲気や話の流れをものともせず、ガッツのある握り拳を作って力説を始めるランス。


「大丈夫大丈夫!危ないところには連れて行かないし!

リアならきっとどこででも生きていけるって!それに色々と便利だし!」


「便利って何がだよ!」


女を道具扱いするんじゃねえよ!

まさか我が息子が下衆に成り下がったんじゃと不安になり始めた頃、レオナードがやっと重い口を開き始めた。


「まず自分たちの立場を考えろ。そして安易に結婚を決めるな。

しかも女性を便利呼ばわりするとは何事だ」


そうそう、もっと言ってやってくれレオナード。

結構な迫力だったんだけど、やっぱりランスに効いた様子はなし。ひらひらと手を横に振って笑顔のまま話を続けた。


「違う違う。リアが便利なんじゃなくって、リアが使う魔術が便利なだけで」


「「「魔術!?」」」


「ローゼリア、お前魔女だったのか・・・」


もう驚きが多すぎて乾いた笑いが出てくる。注目を集めたローゼリアは涙目で必死に首を横に振った。


「ち、違います。誤解ですわ。わたくし魔女ではございません!ちょっと火を起こせるだけで・・・」


「ふーん、じゃあやってみてよ」


百聞は一見にしかず、ってね。薪のくべてある暖炉を指しながら言うと、ローゼリアは観念した様子ですごすごと暖炉へ向かっていった。

手の平を合わせて少し擦り合わせるとしばらくの間念じ、パン!と手を叩けば薪の端に小さな火が点った。


ぷすぷすぷす・・・・


そして煙を上げてすぐに消えた。


「・・・・」


「・・・・っ」


「・・・・っぶ」


堪えきれなかったアルフレットが吹き出すと周りも一斉に笑いだした。笑ってごめんローゼリア。でも面白すぎて・・・。

ローゼリア本人は笑われたことにか上手くできなかったことにか撃沈してしまい、レオナードとレヴィナの性格が似てる父娘はなんとも言い難い微妙な顔をしていた。ランスはなぜか得意顔。


「なっ!すごいだろ!?」


「いや、うーん、これって魔女って言っていいのか悪いのか・・・よくわかんねえ」


どうせランス基準は野営で火を起こせるかどうかなんだろうけど。

未だに笑い続けるアルフレットとシルヴィオに、とうとうローゼリアは膝から崩れ落ちて床に手をついた。同時に彼女の金の巻き毛も床にこぼれ落ちる。


「・・・・だから言いたくなかったのに・・・」


ぶつぶつとすっごい恨みがましく言うローゼリア。ランスはそんな彼女の背中を優しくぽんぽんと叩く。


「根性あるし、木登りだってできる。外国語も完璧なんだよ。

薬草の見分け方とかは俺よりも詳しくってさ、それに食べられるものならなんでも食べられるし。蛇とかトカゲとか。すっげーの!ちゃんと皮剥いで内臓取ってさ!」


「うっさい、変な情報バラすなボケ」


絞り出すかのように出てきた低い声はローゼリアものだった。その口調はあまりにも顔に似合わなすぎる。


「お、落ち着けローゼリア、口調乱れてるぞ。キャラ崩れてっから」


「ヴィラ様!わたくし別に好き好んで食べたわけではありませんわ!ただ普通に食べ物だと思っていたから食べていただけで・・・っ!」


「口調は戻ったけど内容は悪化してるな・・・」


普通に食べ物だとは思わねえだろ。

涙目で訴えてくるその様は完璧な箱入りのお嬢様だったのだが、如何せんその内容が酷い。そういった話に耐性のないルードリーフとアルフレットはサーっと5mくらい後ろに下がって行った。


「・・・・本気なのか?」


「もちろん」


レオナードの低い声にもめげずに、ランスは気持ちいいくらいの晴れやかな笑顔で頷いた。







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