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ヤンキーな魔女  作者: 伊川有子
本編
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第三十六話 仕事再開



翌朝。レオナードと一緒にヒューバートが居座っている百の部屋へ向かえば、既にいつも見る顔が揃っていた。ヒューバートは金髪の騎士アレフとおかまザックを引きつれて頭を下げる。


「こちら第一騎士のアレフ・ダグラスと宰相のザック・ローノイドです」


え・・・・、ザックって宰相だったんだ。偉そうだとは思ってたけど意外だ。


「はじめまして陛下。我がオーティスを頼りにしていただき光栄でございます」


ザックは挨拶したけれどアレフは無言で頭を下げるだけ。レオナードも軽く会釈を返し、ヒューバートの後ろにいた百に向き直る。


「・・・そちらの女性は?」


「「げっ」」


声が重なったのはあたしとヒューバート。そうだ、すっかり忘れてたけどレオナードは百を殺すって言ってたんだった。ヒューバートもドローシャが大々的に百を探しまわってた事を知ってるから、あたしたちは焦って百の前に立つ。


「えっと・・・この子はヒューバートの親戚の子でヒューバートの婚約者なんだ!なっ!」


「そうです!そうなんですっ!」


レオナードはあたしをじとーっと見た後軽く嫌味な笑いをした。・・・・・絶対バレたぞ。

百を本気で向こうの世界に連れていくか悩んでいた時、ザックがあたしの胸蔵を掴んで引き寄せる。


「ちょっと待ちなさいよあんた、なーんでレオナード陛下と一緒に来たわけ?ん?まさか今度はレオナード陛下に色目使う気じゃないでしょうね!」


しまった・・・・。そりゃ朝っぱらから2人で部屋に来ちゃ疑われても仕方ないよな。

レオナードとの関係をどう説明しようかと目線を彷徨わせると、彼の青い瞳と目が合った。


「(何も説明してないのか)」


「(言ってない・・・)」


「(隠すようなことか?)」


「(だって最初は潜入捜査のつもりだったから。王妃らしい振る舞いは何ひとつしてないし・・・・今更説明するの面倒だろ!)」


レオナードは横を向いて盛大に呆れたようなため息を吐いた。ってか視線だけで会話できるあたしたちすげえ。

ザックがものすごい形相で迫って来たから、あたしは両手で壁を作って背を逸らせた。


「言っとくけど、レオナード陛下のご機嫌を損ねるようなマネは絶対しちゃダメよ。国際問題になるかもしれないんだから!」


「わかった、わかりましたぁ」


気持はわかるけど顔が怖いぞザック。


それからは座って話そうとあたしは率先してソファに座ると、ザックとアレフとヒューバートから鬼の睨みを食らった。


「毒女!レオナード陛下が先でしょ!」


「あーはいはい。どうぞ陛下お座りになってくださいな」


冗談半分に恭しく言えば何がおかしいのかレオナードは軽く噴き出して隣に座る。そんなレオナードがよほど珍しかったんだろう、口をぽかんと開けながら鑑賞する一同。


「お話がありますので、皆さんも座ってください」


「は、はぁ」


こっからは本当に真面目な話だった。

あたしとレオナードは昨夜話し合ってこのオーティスに一時滞在することにした。理由は3つ。まず1つ目はレオナードの体力が回復しきってないこと。2つ目はベルガラと繋がって今回の事件に関わっている人物を探るため。3つ目はあたしのテレポート術が完成しておらずレオナードをドローシャまで連れて行くことができない上、迎えを寄こすにもかなりの時間がかかるだろうということ。鳥になると片道一日半で行けるけど、実際には馬に乗っても10日以上かかるのだ。


「―――そこで、こちらの滞在をお許しいただきたいのですが」


「もちろん我々は大歓迎します」


「ありがとうございます。ドローシャはベルガラの撲滅に全力を尽くしますので、ノルディ戦争のほうもすぐに片がつくでしょう」


「は、はいっ」


ヒューバートはほっとした表情を見せて頷いた。オーティスが今抱えている一番重たい問題、それがノルディ戦争。事実上ドローシャを味方につけたオーティスが負けることはないだろう。












それからあたしたちは今回の罪人のリストアップを始めた。方法は簡単、あたしの作った偽ルファシス(泥人形)を通してだ。まだ一部しかルファシスが捕まったことを知らないので、そこを利用させてもらうことにした。ちなみに溜まっている内政の仕事はあたしがドローシャとオーティスを行き来して運ぶことに。


レオナードのために用意された部屋で、それらしい手紙や資料を没収して調べ上げる。


「あの小さい女、ヴィラの探していた友人だろう?」


・・・・そしてやっぱりバレてた。あたしはレオナードに詰め寄って胸蔵を掴む。


「おおおおおおお願いだからあの子には手を出さないでっ!」


っていうか百はヒューバートという恋人いるし、百に何かあったら国際問題になりそうだし!一生懸命力説していたけれど、胸蔵を掴んでいた手はやんわりと放されて口は口で塞がれた。


「んっ」


無理やり突き離せないのは惚れた弱みってやつ。誰かに見られるかもしれないというのに、レオナードの我儘に応えてしまうあたしはとことんレオナードに甘い。

ゆっくりと唇が離れると、彼の青い瞳があたしを覗き込んでいた。


「・・・ヴィラ」


「ん?」


「あの女に手をかけることはしない」


「ほんと!?」


「ああ、約束しよう。その変わり」


あっという間に身体がひっくり返ってレオナードの後ろに天井が見えた。耳元でそっと囁かれた言葉にくすくす笑いが漏れる。


「残念なことに、百はもうヒューバートに盗られちゃったからそれはないない」


「あの女に構い過ぎて俺を放り出したりしないな?」


「しないから」


再びレオナードの顔がゆっくりと近づいてきたので目を閉じようとしたけど、廊下から近づいてくる足音が聞こえたのであたしは全力でレオナードを突き飛ばした。













「夜会?」


夕食時、レオナードはヒューバートに拉致されたので百と食べていると、急にザックが現れて夜会が行われると告げられた。


「明日はオーティスの建国記念日なのよね。あんまり規模の大きな夜会じゃないけど、一応レオナード陛下には内密に参加していただくことにしたから。だから毒女は大人しく部屋に引きこもってなさい」


「えええええええ」


なんであたしだけ!ってか夜会ならパートナーがいなければいけないはず・・・。レオナードにどこの女を紹介するか知らないけどヤダヤダヤダヤダ。


「あたしも行く!レオナードと!アイタッ!」


ゴツンとゲンコツを食らってあたしは頭を抱えた。


「恵理ちゃん大丈夫?」


「痛い・・・・」


「あんたね!誰かれ構わず呼び捨てにするんじゃないわよ!失礼でしょうが!」


「でもぉ」


レオナードと他の女が並んでるところなんて見たくない。それにレオナードだけ参加するなんてずるい。


「大人しくしてるからいいだろー?」


「ダメよ!毒女は存在自体が有害なのよ!」


そこまで言うか。むーっと不機嫌に口をとがらせていると、見るに見かねた百が口を挟む。


「恵理ちゃんも参加したいならあたしからヒューに言っておこうか?」


「ホント?」


やったーと喜びかけたけれど、すぐにザックに遮られた。


「だめだめ、陛下も許可しないわよ。レオナード陛下がいらっしゃる以上粗相は許されないし、百を公式に発表する大切な夜会なんだから」


「だから大人しくするって」


「さっきも言ったでしょ?毒女は存在自体が有害なの!あんたの顔は目立ち過ぎるのよ!自分の美醜をもう少し理解しなさい!」


「チッ」


お留守番なんてつまらない。


「でも、恵理ちゃんがせっかくオーティスに来てくれたのに夜会に出られないなんて」


「百・・・」


「あたし恵理ちゃんが居てくれたらすごく心強いな」


「百ー!」


がばっと抱きつけばザックにペリッと引き剥がされた。百はこんなに可愛いのに、ザックはなんて可愛げのないやつなんだ。


「でも夜会よ?パーティーなのよ?毒女の相手はどうなさるおつもり?」


「大丈夫だよ、恵理ちゃんならすぐにパートナー見つかるよ」


「大人しくするから。顔がダメなら仮面被るから」


ザックは腕を組んで考え込んだ後、やっと口から出たのは大きなため息だった。


「・・・・・・その変わりレオナード陛下から半径10メートル以上近づかないこと」


「わかった」


レオナードとパートナーにはなれないけど、少なくとも他の女と浮気してないかチェックできる。・・・されたところで文句言える立場じゃないけれど。


「ところでドレスはどうするのよ?」


「明日の昼に買ってくるよ」


っていうかドローシャから持ってくればいくらでもあるし。ドレスよりパートナーの心配しなきゃかな。







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