3話 自称娘
見つめ合って数秒、俺はポケットからスマホを取り出す。
「ちょ、なにしてんのよ」
「決まってるだろ。こういときは警察に通ほ…ってうぉ?!」
俺が警察にお世話になろうとした時、お世話になる原因が俺のスマホ目掛けて飛びかかってきた。俺は体勢を崩し勢いのまま押し倒される。
「なんでそうなるのよ!私の話を最後まで聞いて!」
「わ、分かったから、そこどいてくれ…」
翠は俺を押し倒してスマホに手を伸ばしているため、体と体が密着してしまっている。本来ならラッキースケベで内心ガッツポーズするところなのだろうが、俺の娘を名乗るやべーやつという情報しかない以上、セクハラで訴えられるビジョンが頭をよぎった。ここは一旦言うことを聞く振りをしてとりあえず部屋から出よう。
「嫌よ。あんた逃げるつもりでしょ。」
「…」
「やっぱり逃げるつもりじゃない!」
くそっ、勘のいいやつだ。言い訳しなかった俺も悪いが、嘘はつかない主義だから許してくれ。
「私の話を最後まで聞いてくれたらどいてあげるから、大人しくしなさい」
「 …わかった」
無理やり抵抗して離れることも出来たが、暴行罪とかで訴えるとか言われたらたまったもんじゃない。大人しくすることにした。
「さっきも言ったけど、私の名前は佐倉翠。正真正銘あんたの娘よ。」
「新手の詐欺か?」
「違うわよ!」
「どうやら理解できてないみたいね。」
そりゃそうだろ。見たことも聞いたこともないやつが自分の娘を名乗って理解出来るやつがどこにいる。
「どーせ信じてもらえないだろうけど、私は未来から来たの。あんたを救うためにね。」
「すまん、そういうのは遠慮しておく」
「やばい勧誘じゃないわよ!」
「じゃあなんなんだよ!俺はお前を知らないし、娘がいる覚えもない!」
「だから未来から来たっつてんでしょーが!未来ではあんたが私のパパなの!」
「だから意味わかんないって」
そう言うとパパのバカ、脳なし、あんぽんたんなどと罵倒し、俺に跨りながら胸をぽかぽか叩いてくる。まじでなんなんだコイツは。やっぱり警察に通報した方がいいんじゃないのか。
「お兄ちゃん。パパってことは、そういう関係なのね…桜としては、そういうこと家でするのはちょっと控えてほしいかな…」
「桜…!」
しまった。脳をフル回転させ、次する行動の最適解を考えていたので扉が開いた事に気がつかなかった。傍から見たらパパと呼ばれながら金髪少女に馬乗りにされてるんだ。勘違いしない方がおかしい。
「…よし」
決めた。
「よし?」
「佐倉家会議だ!!!」