第1話 別れの季節ではあったりする
初投稿です。お手柔らかにお願いします!
3年生の卒業式、そして終業式が終わり、いよいよ春休み。上から見える生徒たちは無邪気に校門の外へと駆け出していく。そんな待ちに待った春休みが始まるという中、俺、佐倉現斗は今この四季波高校で一番テンションが低い男だろう。
「はあ…」
何故ここまで落ち込んでいるのか。事の発端は俺が30分前、今いる屋上へとある女に呼び出されたことにあった。
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30分前
話がある。屋上で待ってる。
終業式が終わった直後、そんな可愛げの欠片もないLINEが俺の元に送られてきた。送ってきた人物は紛れもない俺の彼女、冬野柚子だ。だがまあこのLINEの雰囲気から察せるだろうが、あまり上手くいっていない。つまり話というのは、恐らく今の関係を終わらせたいというものだろう。色々と思うところはあったが、寒い中屋上で待たせるのは悪いと思い、俺は覚悟を決め、屋上へ向かった。
扉を開けると、春とは思えない冷たい風が肌を刺す。もちろん心地よいものではない。扉の先にはどこか遠くを眺めている少女、冬野柚子がいた。俺が近づこうとすると、こちらに気がついたようだが、挨拶を交わす訳でもない。ただ、近づこうとする俺を見つめる。俺は足を止めると、沈黙が流れる前に口を開いた
。
「柚子、話ってなんだ」
「そうね…なんだと思う?現斗君」
話を切り出した俺に柚子は質問で返してきた。答えはほぼ明白だったが、もしそうじゃなかったら…そんな淡い希望を信じて分からない振りをしてみた。
「見当もつかんな」
「はあ…あんたはいつまでも鈍感クズ野郎ね」
「冷徹ロボットのお前よりはマシだと思うけどな」
「チッ…この期に及んでよくそんな事がいえるわね」
誰が聞いても恋人とは思えない会話だろう。こんな会話も1ヶ月くらい続いており、もう慣れた。
「まあ、もういいわ。最後まで期待した私が馬鹿だったってことね。」
期待という言葉が少し引っ掛ったが、こちらが聞く暇もなく柚子が続ける。
「私たち、別れましょ」
「…ああ、わかった」
「話はそれだけ。じゃ」
そう言うと柚子は鞄を肩にかけ直して屋上を後にした。
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そうして今に至るわけだ。そう、失恋だ。いつかこの日が来るだろうとなんとなく分かってはいたけれど、いざ直面するとやはりつらい。
「ほんと馬鹿だな」
あの日のすれ違いさえなければ、あの1ヶ月前の大喧嘩さえなければ、こんな結末は迎えていなかったのだろうか。そんな変わるはずもない過去を考えるのは無駄だと自分の心を叩き直し、俺は家に帰ることにした。
このあと、俺の過去が変わることも知らずに。
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