転生のテンプレ
いやもちろんフェイクですけどちからくよむというサイトがあって、力ドカワ、つまりちからどかわという会社が経営しているなろうに似た小説を発表できる場所として存在している。俺はそこに賄賂関係の小説、エッセイを書いていた。
ア才ヤマという紳士服の会社がいかにオリンピックで暴利を貪ったかを批判的に書いて週刊誌も真っ青な取材能力を異世界転移によって身につけていたんだがまさか力ドカワもだったとは思いもしなかった。
タグ検索をしてみると賄賂で一件、わいろで関係ない奴が三件、ワイロで二件表示されるだけで、俺の書いたものが一切表示されない。
そんなはずはないだろう。これだけ大々的にニュースになっているのに、俺だけじゃない、誰もそれについて書かないのか。
まさか忖度が行われているのか。ここで出版してもらおうと思ってるワナビーたちは出版社に不利なことをスルーしているとでもいうのか。
お前たちそれはどれだけカッコいい勇者ムーブを書いてても作者ヘタレじゃないか。
そう思った俺は超絶取材能力を駆使して有る事無い事を書きまくった。
投稿ボタンを押し、しかしいくら待ってもポイントは入らないし既読もされない。
どころか外部の検索サイトにすら表示されないのだ。
埋め込み式のアクセス解析だとかインターネッツの知識を駆使して原因を調べていた矢先、ログインが不可になった。
パスワード自動入力がはねられ、おかしいと思い何度も手動で絶対に間違いないはずのものを入力したにもかかわらず確認画面から進まない。
登録していたメールアドレスがそもそも使われていない事になっていた。
アカウントが消えたのだ。
金の流れから逮捕に至るまでの全てを網羅した情報は泡と消えた。こんな事ならローカルにバックアップをとっていればと思えど後の祭り。
二十万字以上の情報が泡と消えた。
もう一度別アカウントを取ってリライトしようと、5日後にやっと気を取り直してノートPCの蓋を開けたとき、玄関のチャイムが鳴った。
今からそれに出ようと思うのだが何かあったら不安なのでここにメモを書き残しておく。
原稿こそ消えたが情報源や世に出るとまずいあれこれはクラウドに保存してある。もし俺に何かあったら斧のパスワードは愛だということを覚えておいてほしい。
インターホンのモニターにはスーツを着た中年が映っている。
さあ、これからどうするか。
ドアを開けて対応するか窓から逃げるかを今からコメント欄に書かれた指示に従って行動しようと思う。
安価下。