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ベーダーマン  作者: マカロニサラダ
28/37

28最悪の脅威

     ◇


 シーア曰く――ソレはベーダーマンという名の機体。

 この意味をなしていない名称を前に、俺は眉をひそめた。


「リード・グエルム、接続完了! 行けるわ、帝――!」


 今は、理解が全く追いつかない。

 敵の正体どころか、自分が今乗っているロボが何なのかも謎だ。

 それでも俺は、ただ一つの疑問を口にする。


「……というか、こういうロボには普通、宇宙服がつきものなのでは?」


 うん。生存率を、少しでも高める為に。


「いえ、宇宙空間でも普段着で乗りこなすのが粋なのよ、この業界では!」


 ……コイツ、さては何かのロボットアニメでも見たな。

 これは、その影響に違いない。

 

 そう分析する俺を余所に、件の白い機体は俺の――いや、ベーダーマンの前に突如現れる。


「いえ、違うっ? 私達の方が強制的に、あのロボの前へ瞬間移動させられたッ?」


 この事実に喜悦しながら、俺はやつのガンから発射されたエネルギー右手でを弾き飛ばす。


「で、こうなった事で、私は何か変わったのでしょうかッ? それともただ、大きさが向こうと同等になっただけっ?」


 後退しながら、訊いてみる。

 シーアの答えは、明白だった。


「ええ。今、リード・グエルムを限定起動させた。これでアナタと彼女の差は無くなったわ。というより帝のステータスはこの瞬間――一グーゴルプレックス倍に膨れ上がった」

「冗談でしょ……?」


 つまり、更に、外気功の対象宇宙、一グーゴルプレックス倍追加?

 いや、それはもうこの宇宙だけではとどまらない。

 だから、彼女は告げた。


《化け、物!》


 初めて白いロボから、そんな声が届く。

 けれどその女性は決して戦意は捨てず、その術を起動する。


「〈精神昇華〉ッ?」


 それは――『挿入』と呼ばれる能力。

 己が敵の、過去、現在、未来に自分の攻撃を送り込み逃げ場という物を無くさせる力。

 現に、白いロボからは、光の弾が雨の様に照射される。

 数兆個にも及ぶソレは、一撃で宇宙を一つ消滅させるだろう。

 この全ての時間軸も含めた全方位攻撃を前に、俺は目を開いてただ呼吸を止める。


「な、にっ?」


 けれど、ファミリア・フェレンスは、見た。

 過去や未来に送り込んだ自分の業さえ、俺の躰に収束されていく様を。


 それも、当たり前の話だ。


「そう。万物はソノ能力を発生する時、必ず何らかのエネルギーを発する。ならば、そのエネルギー自体を自由にコントロールできればどうなるか? 答えは、実に明白でした」


 ソレはある『覇皇』が、無敵の力を求めた末に身につけた力。

 不世出の天才が発想し、身に付けるに至った――一種の極限領域。


「故に――これでお終い」


 俺はそのロボが内包するエネルギーをコントロールし、無理やり発火させる。

 かのロボの動力源を強引に起爆させ、粉々に砕いていく。

 よって件の白いロボは、内側から爆破を開始した――。


「ぐッ、つ!」

 

 だが撃墜の直前、白い脱出ポッドが明後日の方角へ飛び出し、空間転移する。

 俺はソレを見送り、シーアは疑問をなげかけた。


「……これも、帝の予定通りって事?」

「ええ。彼女を逃がす為に、足から徐々にあの機体を破壊していった訳ですから」


 以上の様に、僅か三分間に及ぶ俺達の戦いは――一応の決着をみたのだ。


     ◇


 で、それからどうしたかと言えば、全くひねりという物はなかった。


「……というかチートも良いところだわ。何よ、あのふざけた能力? 本当にリード・グエルム、必要あった?」


 例の白いロボを倒した途端、俺達は通常空間に引き戻される。

 同時にベーダーマンを消失させ、地球に帰還する。

 我が家に戻り玄関前で暫く索敵し、周囲を警戒するがまだ敵影は無い。


 ならばとばかりに、俺は踵を返して自宅内に戻った。


「そのリード・グエルムというのは……やはりこの剣の正式名称ですよね? 要するに、アナタはコレが何だか、やはり知っている?」


 けれど、シーアは露骨に話題を変える。


「そういえばー、前に〝ワード〟は三つ使えるって言っていたわよね? でも帝が使っているのは『収束』と『蓄積』だけ。もう一つの枠がある筈なのだけどそれはどうしたのー?」 

「……そんな枠、とっくに『収束』の概念を強化するため放棄しました。つまり、私が使える能力は『収束』と『蓄積』だけです」

「……フーン。〝ワード〟のストックを捨てると、自分が持つ特定の〝ワード〟を強化できるんだ? じゃあ〝ワード〟自体を捨てた時は、やっぱりそれ相応の力が得られる?」


 だが、そこまでだった。

 俺達が自宅に帰ってリビングに続く扉を開いた瞬間、俺とシーアは思わず絶句する。


「ああ、やっと戻ってきた?」

「な――っ?」


 見れば、和服を重ね着した、十七、八歳位の少女がソファーに座っている。

 紅茶用のカップを上品に使い、お茶を口に含み、俺達に視線を向ける。

 ソレは紛れもなく――先のプールで俺に話かけてきた少女だった。

 ……いや、意味がわからない。理解不能。


 一つ言える事があるとすれば、それは次元が違う、という事。

 さっきの白いロボの乗り手も桁違いの力を持っていたが――アレは全くの別物だ。

 あの女性とは違う生き物だと一目でわかる位――ソレは常軌を逸していた。


 故に、俺はシーアの腕を掴んで壁際まで後退する。

 シーアが絶叫したのは、その時だ。


「――アパトルテ・グランクラス! まさか、貴女自ら出てくるなんてッ!」

「アパ、トルテ? それってさっきシーアさんが言っていた、危険人物……?」


 後一回呼吸しようとしただけで、自分が粉砕されるところを幻視しながら訊ねる。

 シーアの息遣いは見るからに荒くなり、それでも彼女は健気に俺の問いに答えた。


「帝……前に言っていたわよね? 宇宙の中心で、銀河をグルグル回転させている存在が居るって。恐らくソレは、『第三種知性体』と呼ばれる者よ」

「……『第三種、知性体』?」

「そう。人間は『第五種知性体』に位置するから、それより二つ上位の知性体って事ね。彼等の特徴はその身に『死界』の宇宙を数百億個程内包し、自身の力に転化している事。例えば、帝が二億八千万個もの宇宙を、味方に出来る様に」

「つ、つまり、アレは、その『第三種知性体』……?」


 だとしたら、絶望的だ。

 恐らく能力処理速度の時点で、俺は彼女に完敗するだろう。

 そう理解した時、俺は初めて自分が今、恐怖のあまり呼吸していない事に気付く。


 だが、違った。

 俺の考えは、全くの的外れだった。


 何故ならシーアは――真顔で言い切ったから。


「ええ。そうだと良かったのだけどね。でも残念ながら、それは違うわ。

 ……アレはそう――『第■種知性体』の〝極限種〟よ」

「……は?」


 お蔭で、俺の中からは今度こそ理解と言う物が消え失せる。

 神代帝は――ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 マカロニサラダは皆様の、評価をお待ちしています。

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