26漸く本編に突入
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「……って、アレはどう見ても、UFОですよね? いわゆる、未確認飛行物体」
「み、みたい、ね。わー、ビックリー。宇宙人は、本当に居たんだー」
たわけた事を、シーアさんはほざく。
俺は頭を抱えながら、空を指さす。
「でも、周囲の皆さんは、その事に気付いていない感じです。普通に、スルーしていますし。つまり、この剣同様、アレは私達にしか見えないという事……?」
俺としては当然シーアさんに訊ねたのだが、彼女は三時の方角を向くだけ。
シーアさんは完全に現実逃避し、あの光景を受け入れない。
故に、俺はシーアさんの頭部を鷲掴みし、強引に空を見上げさせた。
「答えて下さい、シーアさん? アレは、この剣の関係者、なんですね?」
「わ、わかった、認める。認めるから、徐々に手に力を入れるのは止して……?」
……だとしたら、この剣は、宇宙的な物?
宇宙人の、落し物だとでも言うのか?
いや、後に、これも牧歌的な感想だと思い知らされる事になるのだが。
「とすれば、シーアさんならあの人達と交渉が可能という事ですか? ……いえ、それ以前に彼等は、この剣とシーアさんを回収にきた――?」
現状ではそう考えるのが、妥当だろう。
恐らくこの剣はあの宇宙船の主が落した物で、彼等はソレを取り戻しに来た。
そう考えれば、全ての辻褄は合う。
「……なら、取り敢えず白旗の用意でもしますか。私はあなた達と争う気はない、と」
「そうねー。帝と一緒にパンケーキを食べるのは、また今度という事になるかしらー」
やはり彼方の方角を向きながら、シーアは告げる。
だが、彼女は気付かない。それが何処までも、軽はずみな発言であったか。
実際、俺は自分でも驚く程、バカげた事を口にした。
「今のは約束って事で良いんですよね? シーアさんはこの件が終わったら、私とパンケーキを食べる。そう約束したと、解釈していい?」
「そ、それ、は」
「ええ。私は一度、約束を破ってしまった。星良の特訓に付き合う、という約束を。だからもう、二度とあんな思いはしたくないんです。なら――私はもう一度確認するしかありません。今のは約束したという事で、構わない?」
この、きっと叶わないであろう願いを前に、シーアは数秒ほど言葉を失う。
それから、彼女は口を開く。
「わかった、約束する。この厄介事が終わったら私は帝とパンケーキを食べる。食べて、食べて、食べまくるって約束するわ。これで、良い?」
彼女の約束を前に、俺は目を細める。
シーアはこの時、妙に大人びた表情で俺を見た。
「……本当、帝って偶に子供みたいなこと言い始めるわよね。そう言うところだけは、年下っぽく見えて素直に可愛いと思うわ」
が、無駄話は、そこで終わった。
というか、それどころではなくなった。
次の瞬間、俺とシーアは気が付くと別空間に取り込まれたから。
「な?」
「つ!」
それどころか、件の宇宙船が何の警告もせず、いきなり主砲を発射する。
それは事もなくこの星に届き――その時点で地球は綺麗に消滅したのだ。
この言語を絶する爆風に晒されながら、俺はシーアの手を掴む。
「帝ッ?」
「やってくれましたね」
その時、神代帝は――完全にアレを敵視すると決めたのだ。
「って、待ちなさい! まだ話し合う余地はあるはずよ!」
「ありませんよ、そんな物。仮に塵芥程もあれば、彼等もあんな事はしないでしょうし」
さて、これは、どちらにとって不運な事なのか?
俺は首を傾げながら、躰を被う『オーラ』を肥大させる。
「そうですね。あなた達は、本当に運がない。これが四日前なら、勝負は今の一撃でついていたでしょうから」
然り。
惑星が消滅するほどのエネルギーを受け、尚、俺達が存命している理由は一つ。
単純に、それ以上のエネルギーを纏い、焼却される事を防いだから。
つまり、こうなった以上、俺がやるべき事は決まっている。
「悪いのですが、交渉は決裂ですね。あなた達が誰にケンカを売ったのか――しっかり理解してもらいます」
神代帝はその数億にも及ぶ宇宙艦隊を前に――ただ肩を怒らせたのだ。
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