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ベーダーマン  作者: マカロニサラダ
26/37

26漸く本編に突入

     5


「……って、アレはどう見ても、UFОですよね? いわゆる、未確認飛行物体」

「み、みたい、ね。わー、ビックリー。宇宙人は、本当に居たんだー」


 たわけた事を、シーアさんはほざく。

 俺は頭を抱えながら、空を指さす。


「でも、周囲の皆さんは、その事に気付いていない感じです。普通に、スルーしていますし。つまり、この剣同様、アレは私達にしか見えないという事……?」


 俺としては当然シーアさんに訊ねたのだが、彼女は三時の方角を向くだけ。

 シーアさんは完全に現実逃避し、あの光景を受け入れない。


 故に、俺はシーアさんの頭部を鷲掴みし、強引に空を見上げさせた。


「答えて下さい、シーアさん? アレは、この剣の関係者、なんですね?」

「わ、わかった、認める。認めるから、徐々に手に力を入れるのは止して……?」

 

 ……だとしたら、この剣は、宇宙的な物?

 宇宙人の、落し物だとでも言うのか?

 いや、後に、これも牧歌的な感想だと思い知らされる事になるのだが。


「とすれば、シーアさんならあの人達と交渉が可能という事ですか? ……いえ、それ以前に彼等は、この剣とシーアさんを回収にきた――?」


 現状ではそう考えるのが、妥当だろう。

 恐らくこの剣はあの宇宙船の主が落した物で、彼等はソレを取り戻しに来た。

 そう考えれば、全ての辻褄は合う。


「……なら、取り敢えず白旗の用意でもしますか。私はあなた達と争う気はない、と」

「そうねー。帝と一緒にパンケーキを食べるのは、また今度という事になるかしらー」


 やはり彼方の方角を向きながら、シーアは告げる。

 だが、彼女は気付かない。それが何処までも、軽はずみな発言であったか。

 

 実際、俺は自分でも驚く程、バカげた事を口にした。


「今のは約束って事で良いんですよね? シーアさんはこの件が終わったら、私とパンケーキを食べる。そう約束したと、解釈していい?」

「そ、それ、は」

「ええ。私は一度、約束を破ってしまった。星良の特訓に付き合う、という約束を。だからもう、二度とあんな思いはしたくないんです。なら――私はもう一度確認するしかありません。今のは約束したという事で、構わない?」


 この、きっと叶わないであろう願いを前に、シーアは数秒ほど言葉を失う。

 それから、彼女は口を開く。


「わかった、約束する。この厄介事が終わったら私は帝とパンケーキを食べる。食べて、食べて、食べまくるって約束するわ。これで、良い?」


 彼女の約束を前に、俺は目を細める。

 シーアはこの時、妙に大人びた表情で俺を見た。


「……本当、帝って偶に子供みたいなこと言い始めるわよね。そう言うところだけは、年下っぽく見えて素直に可愛いと思うわ」


 が、無駄話は、そこで終わった。

 というか、それどころではなくなった。

 次の瞬間、俺とシーアは気が付くと別空間に取り込まれたから。


「な?」

「つ!」


 それどころか、件の宇宙船が何の警告もせず、いきなり主砲を発射する。

 それは事もなくこの星に届き――その時点で地球は綺麗に消滅したのだ。

 この言語を絶する爆風に晒されながら、俺はシーアの手を掴む。


「帝ッ?」

「やってくれましたね」


 その時、神代帝は――完全にアレを敵視すると決めたのだ。


「って、待ちなさい! まだ話し合う余地はあるはずよ!」

「ありませんよ、そんな物。仮に塵芥程もあれば、彼等もあんな事はしないでしょうし」


 さて、これは、どちらにとって不運な事なのか?

 俺は首を傾げながら、躰を被う『オーラ』を肥大させる。


「そうですね。あなた達は、本当に運がない。これが四日前なら、勝負は今の一撃でついていたでしょうから」


 然り。

 惑星が消滅するほどのエネルギーを受け、尚、俺達が存命している理由は一つ。

 単純に、それ以上のエネルギーを纏い、焼却される事を防いだから。


 つまり、こうなった以上、俺がやるべき事は決まっている。


「悪いのですが、交渉は決裂ですね。あなた達が誰にケンカを売ったのか――しっかり理解してもらいます」

 

 神代帝はその数億にも及ぶ宇宙艦隊を前に――ただ肩を怒らせたのだ。


 ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます。

 マカロニサラダは皆様の、評価をお待ちしています。

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