表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ギザ歯の〇〇さんは純粋ピュア乙女路線だと思われたい

ギザ歯。


みなさんはどのようなイメージをお持ちですか?

荒っぽい。敵。ダーク。狂暴。性格が悪い。狂気。病んでる。

その他にもいろいろとあると思いますが、だいたいというか100パーセント悪い方向の人たちですよね。


「そんなことないよ。ギザ歯好きだよ」


なんて言う人もいるんですよ。でも知ってるんです。

それって悪い人に憧れるやつですよね。不良のカレがかっこいい~みたいなやつですよね。

素直な魅力じゃないんです。いびつな形の魅力なんです。


私は声を大にして言いたい。

ギザ歯でも純粋ピュア乙女路線になって良いじゃないか!と。

言いたい言いたい言いたい。純粋ピュア乙女路線で良いでしょーーーーーーー!!!!!!!


はぁはぁ。ちょっと息切れしちゃいました。すみません。

勘の良い方はもう気が付いているでしょうが、私は生まれつきギザ歯なんです。


小学生のときのあだ名はバランでした。

お弁当とかに入ってる緑色のアレです。あのギザギザしてる部分と私のギザ歯を重ね合わせたのでしょう。

他のクラスの子も私がバランだって知っていました。おそらく全校生徒が知っていたんじゃないでしょうか。


そのころ私は同級生のアラシくんが大好きでした。

勇気を出して告白したら、アラシくんも私のことを好きだって言ってくれました。

飛び跳ねたくなるほど嬉しかったことを今でも覚えています。

でもアラシくんは私のことが好きな理由を「怪獣みたいでカッコイイから」って答えました。

もしかしたらアラシくんはバランというのが怪獣の名前と思っていたのかもしれません。

男女の仲で好きだったんじゃないんです。それから私はアラシくんがやるごっこ遊びで怪獣役をやることになりました。


私はそれでも良いと思いました。アラシくんと一緒に遊べることが嬉しかったんです。

でもそのうちアラシくんから怪獣ブームが去ると次第に私と遊んでくれることも減って、自然と遊ばないようになりました。


あ、悲しい話ではないんですよ。

ちゃんと私の中では良い思い出になってますから。

アラシくんは今でも元気なのでしょうか。


アラシくんと遊んでいたときは頑張って怪獣役に徹していました。

本当はお姫様役をやりたいのを我慢していました。いえ、役じゃなくて本当にアラシくんのお姫様になりたいと思っていました。


そしてアラシくんと疎遠になってから自分の中で芽生えたんです。

無理して役作りをするものじゃない。私のやりたいようにやっていこうって。


中学生になったら茶道部に入りました。

身も心も清くなりたかったんです。何も汚れていないきれいな雰囲気を身につけたかったんです。


しかし友達にはお茶よりもコーヒーが似合うと言われました。なぜ。

最終的にはエナジードリンクが似合うと言われました。なぜなぜ。

あんなに頑張って部活に励んだのに、人からの印象はまだまだ純粋ピュア乙女だと思われなかったんです。なぜなぜなぜ。


そんな私も高校生になりました。女子高生をやってます。JKってやつです。

それでも制服は崩さず学校の指定通りにきっちり着ていますよ。

凄く真面目に過ごしているんです。純粋ピュア乙女は真面目なイメージのはずです。


肌もなるべく焼かないようにしてるんです。

ギザ歯って褐色の肌をしてるイメージが強くないですか?

日焼け止めクリームは欠かせません。


かといって色白になりすぎても良くないんですよ。

ギザ歯って病んでるイメージが強くないですか?

不健康な色白だと良くないんですよ。


前に目が腫れてしまったので眼帯をつけて学校に行ったんです。

そしたら普段は話しかけてこない子まで似合ってるって言ってきて。

だからちゃんと健康体でいなければいけないんです。肌の保湿ケアはかかせません。


それともう少し痩せたいのですが病んでるように思われるのは嫌なので少し肉付きが良いくらいの体型にしています。

ダイエットに失敗したわけじゃありませんよ。失敗したわけじゃありませんよ。ありませんよ。


そんな私もずっと毎日きちんとしてはいません。

今も家に帰ってきてゴロゴロしながらテレビを観てますし。

メリハリです。何事もメリハリが大事ってことですよ。

なんてテレビをなんとなく観ていたら急に画面が切り替わりました。


『臨時ニュースです。さきほど宇宙から怪獣がやってきました。日本のピンチです』


は?急に何を言ってるんですか?

宇宙から怪獣がやってくるなんてリアリティが無さすぎですよ。

と思っていたらまたニュースが。


『臨時ニュースです。さきほど宇宙からヒーローがやってきました。日本を守ってくれるそうです』


なになにこの急展開。何が起きてるんですか?

でも何だかドラマを観てるような気分で、本当の出来事だとは思えませんね。


『臨時ニュースです。臨時ニュースです。ヒーローが怪獣を倒せませんでした』


え?ヒーローが。どうなっちゃうんでしょう。とても心配です。


『その倒せなかったヒーローがスタジオに来ています』


え?ヒーローってそんな感じでテレビに出演するんですね。

あっヒーローが出てきましたよ。あれ?人間サイズです。普通に日本語をしゃべってますよ。


『・・・・・・・・本当にみなさま申し訳ありませんでした。今回の怪獣は強すぎて普通の攻撃では倒せません。唯一の弱点を突かなければなりません』


ヒーローが倒せないような唯一の弱点って何でしょう。


『ギザ歯の女性です』


・・・・・・は?


『正確にはギザ歯のギャルが罵声を浴びせると怪獣は消滅します』


何それ?意味がわからない。

宇宙から怪獣がやってきてヒーローが倒せなくてギザ歯のギャルが罵声を浴びせると倒せる?

はぁ?


あ、ダメダメ。純粋ピュア乙女はそんな口をきかないはずです。

全く意味が分からない話ですよね。こんな小説があったら誰も見ないと思いますよ。


でも事実は小説より奇なりとは良く言ったものです。

なんだか来ちゃいました。凄く偉い感じの人が。ギザ歯の女性を探し求めていますって。


無理無理無理無理無理。

無理な無理が無理で無理を無理。


怪獣と対面するなんて怖くて無理です。

いいえ。それ以上にギャルになって汚い言葉を使うだなんて絶対に無理です。


それなのになぜ私はギャルの恰好をしているのでしょう。


凄く偉い人の話を断るほうが無理でした。

世界の未来がかかっているとか私しか世界を救える人はいないとか言ってるうちは良かったんですけどね。

これが圧ってやつでしょうか。絶対に断ることができない雰囲気になりまして。

最初は話を聞いてもらうだけってことだったはずなんですけどね。いつの間にか自分が怪獣に罵声を浴びせることに決まってしまいました。


そうと決まってからは早かったです。

もうすでにスタイリストさんや衣装さんが準備されていて。

なにやら世界でトップレベルの人たちのようですよ。この人たちに自分のセットを任せるなんて世間ではとんでもない話みたいです。おいくら万円だかわからないようです。

でも、そんな凄い人たちに自分を任せるのなら純粋ピュア乙女の姿になるのが良かったなあ・・・・・・


そんな感じで今ヒーローと一緒に怪獣の前に居ます。凄く怖いです。

怪獣が私を認識しました。凄く凄く怖いです。


『ほら。怪獣が苦しんでますよ。唯一の弱点なんです。張り切っていきましょう』


ってヒーローが言ってくるんですけどね。

どう見ても怪獣は喜んでいるようにしか見えないです。

これってアレなやつではないでしょうか。


『さあ。怪獣を罵倒してください』


こんな恥ずかしい恰好をしているのに、さらに罵倒するなんてますます恥ずかしいですよ。

でももう何か言わないと収まりが付かないですよね。覚悟しないと。覚悟。覚悟。ふぅ。


「怪獣さん。良くないですよ!!!!!!」


うわっ。自分の声がとてつもない大きさで響いてます。

マイクのようなものを渡されて使いましたが、まさかこんなに大きくなるとは驚きです。


『ダメです。全く罵倒になってないですよ。もっと口汚くしてください』


なかなか難しいですよ。急に罵倒しろと言われましても。

うーん。なんとか頑張ってみます。


「怪獣!何やってんの!!!」


なんとか罵倒できました。

と思ったらヒーローがまた言ってきましたよ。


『全然ダメ。もっと真面目に罵倒してください』


真面目にやってるんですけどね。難しいんですよ。

というか真面目に罵倒するって何なんでしょうね。


「おい。どっかいけ!」

『ダメ』

「オマエ何やってんだ!」

『ダメダメ』

「ふらふらになってくたばってしまえ!」

『なめてんじゃねーぞ、この野郎!!!』


うわっ。めちゃめちゃびっくりしました。

ヒーローが急に自分にきつく言ってきましたよ。


『地球の一大事にそんな生易しい気持ちでどうするんだ!』


うわうわ。

そんなこと言われても私は一般市民として過ごしてきたんですよ。

しかも純粋ピュア乙女を目指してきたんです。急にそんなこと言われても難しすぎるんですよね。


『そもそも罵倒をなめている!心がこもってない罵倒なんてただの汚言だ!罵倒というのは相手のことをしっかりと理解したうえで、きちんと心の奥底にずしんと響く的確な言葉を選択しなければいけないんだぞ』


ん?ヒーローの様子が何だかおかしい気がしますよ。

目が。目が真剣なんですけどなんだか怖いというか、いっちゃてるというか。


『そんな感じでやられたら怪獣を倒せるわけないだろ。あんたはふざけたお店と一緒だ!』


はぁ?


『こっちはお金を払って罵倒してもらおうとしてるのに、そうやってなめた態度の人が多いんだよ。ふざけるな。やるならちゃんとプロ意識をもっとちゃんとやれ!』


ああ。ダメだこのヒーロー。


というか何で私がこんな目に合ってるの?地球の危機を救うなら魔法少女とかそういうものになるはずでしょ。それが何でギャルになって罵倒なの?しかもそれを言い出したヒーローがそういう趣味でしょ。クソでしょ。こっちは人生をかけて純粋ピュア乙女になろうとしてるのよ。それなのにどいつもこいつもギザ歯だからってギャルだとか病みだとか裏がありそうとか最初から人をおかしな角度から見やがって。挙句の果てには公衆の面前で全世界に放送されてるような状況でギャルの恰好をして罵倒だぁ?ふざけやがって。わかったわよ。やってやろうじゃないの。ぶち壊してやんよ。





「オラあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!テメーこの野郎ぉぉぉぉぉっぉおおおおおおおおお!!!ギザ歯なめてんじゃねーぞぉおおおおおお!!!ケツの穴ぶち広げて内臓ぶちまけてやろうかい!!!!!!!!こちとら純粋ピュア乙女で突っ走ってんだぞ!!!テメーらみたいなポッと出に邪魔されるわけにはいかねーんじゃ!!!!!顕微鏡でも観察できないくらい細かくちぎり捨ててやっからかかってこんかあああああああああああああああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!」





☆★☆★☆


あれからしばらく経ちました。世界?平和ですよ。

怪獣は私の言葉で満足そうな表情をして消滅しました。

ヒーローはいろいろなメディアのインタビューにこたえてましたけど、とてつもなくスッキリした表情をしていましたよ。


私?

私は落ち着いた日常を過ごしてます。

もちろんあの後には凄く人から話しかけられました。

普段は話しかけてこない人も含めて人がとっても集まることばかりでした。

学校の休み時間になると、教室や廊下に凄い数の生徒がいましたからね。


それでも時間が経つと少しずつ人は減っていって、今では以前と同じように過ごせています。

私も純粋ピュア乙女を目指して精進の日々です。


でも以前と変わってしまったことがあります。

それはギザ歯の印象に怪獣バスターと罵倒マスターが加わってしまったことです。

いまネットではギザ歯の女子が罵詈雑言を浴びせて敵を倒すゲームなどの作品が急激に増えているって聞きました。


純粋ピュア乙女になる道はますます困難になってしまったようです。

でもあんな出来事はイレギュラーですからね。もう二度とあるはずないでしょう。

自分はこれまでと同じように努力し続けていくだけです。目指せ純粋ピュア乙女!!!


『臨時ニュースです。さきほど宇宙から怪獣が現れました。ヒーローによるとギザ歯の包帯を巻いたヤンデレ女子だけが弱点とのことで・・・・・・』


いい加減にしてよね!!!



評価、ブックマーク、感想、レビューなんでもすべて嬉しいです。

めちゃめちゃめちゃめちゃ嬉しいです。


読んでいただけるだけでうれしょんするほど喜びますが、反応していただけるのは最大のご褒美です。


現在『異世界人と宅飲みすることになったので美味いもんを食べさせたい』を連載しています。

こちらも読んでいただけたらありがたいです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そんなあなたに『極悪怪人デスグリーン』をお薦め致します。 私もブクマしています。 ( *・ω・)ノ
2021/04/14 21:00 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ