第九話 これが最初のプロローグ
「ここは……」
目が覚めると、そこは病室だった。体を動かそうとすると少し痛む。何故だろうかと体を見てみると、そこにあったのは複数の痣だった。
「うわぁ」
少し引いた。だが、おかげで何があったのかを思い出せた。
庵にも感謝しないとな。
「良かった、起きたのか」
ドアがスライドすると共に飛び込んできた声に意識が向く。
「まあ、まだ痛いけど」
「そうか……」
「そういえば紅華は?」
「ああ、元気だよ。綾斗と違って怪我はしていなかったからね。それにしてもどんな理由があっても無謀なことだけはしないでくれ。庵君が助けてくれていなかったら今頃死んでいたんだぞ。一応事情は把握しているが……それでもやめてくれ」
戦いたくて戦ったわけではないが、死にかけていたのは確かだった。父さんも心配してくれているのだろう。僕は「分かった」とだけ言って、その後は父さんと少し話をした。
「じゃあまた明日迎えに来るから」
「うん、また明日」
父さんが去っていくと、部屋には僕ただ一人が残された。明日の治り具合によってはもう家に帰れると言っていた。人間の回復力はそんなに高くはないと思うのだが、神力をがどうとか言っていた。
それからは、別に何をすることもなく時間が過ぎ、夜に家に帰ることが出来た。
紅華は既に寝ているようで、話をすることはできなかった。
そんなことがあったのも昨日のこと。今僕は走っていた。
初めは教室の方へ行ったのだが、そこでもう帰ったと知らされたからだ。
「紅華‼」
前方に映る小さな背中に向かって声を投げかける。その間にも距離を詰めていたので息を整える余裕はなかったが、自然と声は乱れなかった。
紅華がその体をこちらへと向ける。
「何?」
その顔は本当になんといわれるのか見当がついていない様子だった。それも仕方のないことだが。
「将棋部に入らないか?ほら、部活もまだだろ。だから――」
「ごめん」
「え?」
拒否をされるとは思ってなくて、思わず聞き返してしまう。そこまで悪い話じゃないはずだ。それは紅華も分かっているはずなのに。
「だから、ごめん。私にその手を取る資格は……」
「資格がない?そんなわけない。みんなだってきっと受け入れてくれる」
資格がどうとか、正直訳が分からなかった。だから、この言葉は薄っぺらいものなのかもしれないと、言ってしまってから気が付いた。
紅華ははっとすると、
「何でもない。忘れて」
と言って去っていった。
追いかけようともしたが、体が動かなかった。言葉も、かける言葉が見つからなくて、僕はただ茫然とその後姿を見ていることしかできなかった。
一人残された僕はかみしめるように言った。
「忘れられるわけがないじゃないか」
あんなにも悲しい顔をしていたことなんて。
ここで一旦休載しようと思います。
2週間程度でまた再開する予定なので待っていてください。
また、休載に伴い少しずつ改稿もして行っているので良かったら見てください。