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マンドリニストの群れ  作者: 湯煮損
第12章「初めての県大会」
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第85話「県大会の結果発表」

 顔合わせが終わると、アナウンスが流れ、結果発表と表彰式についての案内が行われた。

 奏太たちは、結果を聞くために再びホールに戻った。すると、舞台の上には各学校の代表者が一人ずつと、審査員の先生たちが椅子に座っていた。奏太はその雰囲気にのまれながら着席した。

「いよいよか...。」

「ああ。俺たちにとっては初めての大会。記念すべき最初の結果になるんだ。」

そう、奏太たち1年生にとって、今回の結果発表は2、3年生の先輩たちについて行った全国大会とは、全く意味が違った。それは2年生にとっても同じことで、1年生が大半を占める今年の体制の中で行った練習方法が果たして正解だったのか、そのいわば答え合わせとなるのだ。


 「それでは、今年度の県大会の閉会式を始めさせていただきます。」

アナウンスが流れ、全員の緊張感が一斉に高まる。舞台の上では、大会の実行委員長が今回の大会について総評を話したりしていたが、結果が気になって仕方ない生徒たちにとって、ほとんど頭に残らなかった。

 舞台に並ぶ各学校の代表生徒のなかの水島もステージの上では平静を装ってはいたものの頭の中は緊張で真っ白になっていたようだ。



 「それでは大変お待たせいたしました。いよいよ今回の結果発表に移りたいと思います。」

「来たっ!」

実行委員長の話が終わり、アナウンサーの進行によって結果発表に移ると会場は少しのどよめきに包まれた。

「いよいよだな...頼む。“優秀賞”とれててくれ...!」

2年生の中に強い緊張感が走る。普段は緊張を見せない益田もこの時ばかりは落ち着かない表情で会場を見つめた。益田が祈る通り、県大会は全12校のうち、優秀賞を獲得した学校のみが次の地方予選に進むことができる。優秀賞が与えられるのは上位6校であり、つまり通過率は半分である。それ以外の学校は3校ずつ上から“優良賞”、“努力賞”となり、次の大会には進むことができない。


「プログラム順に発表していきます。」

アナウンサーの合図とともに、賞の発表がどんどん進んでいく。ステージの上では各学校の代表生徒が出演順に並び、審査委員長から直接賞状を渡されていく。


“優良賞”、“努力賞”、“努力賞”... どんな賞であろうと、スピード重視で作業的に呼ばれていく。結果が芳しくなかった学校の生徒はしょんぼりしながら賞状を受け取り、元いた場所へ戻っていく。その列の後ろで水島は自分の番が近づいてくるのを感じ、ドクドクと激しく鳴り続ける心臓のあたりに手を置いて、一回大きく深呼吸した。


「...プログラム4番、江沢高校。...優秀賞。」

アナウンスが結果を告げると、客席から歓声が起こった。江沢高校の生徒たちである。奏太はその様子を静かに見つめた。江沢高校の部長は賞状を受け取ると、さも当たり前かのような澄ました表情で自分の場所へと戻っていった。

「...まあ、そうだよな。毎年突破してる江沢が優秀賞なのは納得だ。」

中川は江沢の優秀賞に特に驚かず、冷静な様子でうなずいた。



 「プログラム6番...」

ついに西田高校の結果がよばれるタイミングがやってきた。番号を呼ばれ、水島は覚悟を決めた顔で審査委員長の前に出た。客席では西田高校の生徒たちが手を合わせ、必死に祈る。


ーみんな...

ー大丈夫...!今の私たちの全てを出し切った演奏なんだ...!

ーきっと...


それぞれが思い思いに祈る中、アナウンスが結果を告げる...





「西田高校。...優秀賞。」



「...!!」

結果を告げるアナウンスが会場にこだまする中、奏太は確かに時間が止まったような感覚を味わった。初めて臨んだ大会、メンバーの大半が自分たち1年生というプレッシャーの中、必死で演奏して掴み取ったものは、全員が待ち望んだ“優秀賞”であったが、いざ結果が出ると、一瞬頭の中が真っ白になったのだ。


「...うおっしゃああああああああ!!!」

少しの間を破るようにして叫び声を上げたのは中川だった。それを聞いて、ボーッとしていた他の2年生たちも遅れて歓声を上げた。

「やったああ!!!」

「私たち、この人数でもできるんだ!!」


会場で賞状を受け取った水島は歓声を上げた仲間達の顔を振り返り、まだ震えている手で賞状を高くかざしてみせた。


「よかった!やったな俺たち!」

結果を聞いて両腕を振り上げた糸成は奏太の背中を叩いた。

「...ああ!ホッとした!今まで大口叩いてたけど、正直、すっげえ不安だったよ...!」

奏太も結果に安心したのか、深呼吸をして糸成とハイタッチをした。


「よかったなお前ら!おめでとう!」

奏太たちが喜んでいると、後ろから中川が声をかけてきた。

「あ、中川先輩!ありがとうございます!...って、先輩も同じ学校なのに“おめでとう”ってなんか変な感じじゃないですか!」

「そりゃあ俺は演奏参加してないからな。それにしても安心したよ。正直今回は無理なんじゃないかと思っていたから。」

「うええーん中川くん〜!私めっちゃ責任感じてずっと不安だったよ〜!」

中川の横で泣き出したのは和田だった。和田は本番でコンミスとしてのプレッシャーのあまり力が入り、練習とは異なる演奏をしてしまったことをずっと気にしていたので、今回優秀賞が取れたことでそれまでの緊張が一気に解れたのだった。

「ああ、よしよし。お前も頑張ったな和田ちゃん。大丈夫だったからこれからはもっと自信持って演奏していいんだぞ!お前は立派なコンミスなんだろ?」

「ぐす...うん...!ごめん、私これからはもっとしっかりするから、私とハイタッチしてよ中川くん〜!」

「ええ...!!?無理、お前のハイタッチってゴリラのビンタだから...」

中川は和田にハイタッチを求められ、彼女の怪力を恐れて思わず後退りした。

「何よ!いいじゃない今日くらい!!」

「ハハハ。」


こうして、西田高校は県大会で優秀賞を受賞し、見事地方予選への切符を手にすることが決まったのだった。

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