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マンドリニストの群れ  作者: 湯煮損
第12章「初めての県大会」
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第84話「個性豊かな4校の生徒」

 「えっと、皆さん、演奏はお疲れ様でした!どこの学校もすっごくカッコよくて私たちももっと頑張らなくちゃなあって思いました!」

「...自己紹介自己紹介」

「あ、そっか!しくった!えっと、西田高校の部長をしてます!水島咲子と申しまーす!よろしくお願いします!」

県大会の結果待ちの時間を利用して行われている市内マンドリン部の顔合わせ、前に出ている4人の部長の自己紹介が行われていた。

「なるほど、マンドリン部は市内だと、4つの学校にあるんだなあ。」

前に出ている部長の数を見て、糸成はそう呟いた。

「“()()”がいるのは分かったから、あと2校か。」

「“雄ヶ座(ゆうがざ)”な。」

横で奏太も考え込んだ。彼らはパンフレットなどで当然参加している高校の名前を確認していたはずだが、本番の緊張感もあって、どこが市内とか考えている暇はなかったのだ。


 「ひとつはウチだよ。」

「うわっセン!」

考え込んでいる奏太たちの後ろから現れたのは郷園(ごうえん)中学高校の剛田旋だった。

「って、なんとなく予想はついてたけどな。最初に市内合同って言われてからなんとなくそうなんじゃないかって思ってたんだ。」

奏太はそう言って旋の方を見た。

「まあ、奏太の場合他の学校の名前は覚えてないからな。」

「うっさいわ!」

糸成は予想が当たって得意げな奏太に水をさすと、旋の顔を見て言った。

「...さっきの演奏は見事だったよ。」

「どうも」

旋は褒められ慣れているような様子でニッコリと笑って答えた。奏太も尊敬しているような表情で褒めた。

「ああ、悔しいけど凄かった。優勝は奪られちまったかもしんねぇな。」

「いや、多分優勝は獲れないよ。」

「えっ?お前さっき“コンクールの演奏を見せてやる”っていったじゃんか。」

旋の思いもよらぬ答えに奏太は驚いた。

「ああ、“コンクールの演奏”は精一杯やったつもりだが、学生の合奏コンクールで最適な演奏にはなってなかったからね。上位には入るだろうが、優勝は無理だろう。」

「ふーん、コンクールは奥が深いんだな...」

旋の分析に納得の行かない様子で奏太は鼻を鳴らした。

「ああ、()()()()()()()()はまだ僕も完全には分からないよ。」


「まあ、でもいずれにせよ!次は勝ってやる!地方予選も全国大会もお前らに勝つ!そのために合同コンサートもその練習も有意義に使わせてもらうぜ!」

奏太はそう言って旋の方を見た。

「ああ。僕の演奏を見て精一杯いろいろ盗んでくれよ!」

「...って二人ともまだ大会の結果出てないんですけど...」

もうすでに先の大会の話をしている二人を見て、糸成は呆れた。




 4つの高校の部長の自己紹介が終わり、顔合わせ会はパートごと分かれての顔合わせに移った。今回顔合わせに参加した学校は、奏太たち“西田高校”、そして、旋たち“郷園中学高校”、快人たち“雄ヶ座高校”に加え、江沢(えざわ)高校という学校を加えた4つだ。江沢高校についても郷園高校、雄ヶ座高校同様 都川先生の門下校である。

「うげっアンタ1stだったの!?」

「別にいいだろ!ミサちゃんが同じパートじゃないのが少し残念だけど女子と一緒に演奏できるの俺は嬉しいけどね。」

顔合わせの中で、奈緒は、先程会った相田快人が1stパートだと知り、露骨に不満げな表情を披露した。

「お前今度ミサさんを“ちゃん付け”で呼んだらしばくぞ!」

「なんだ()()さんたちもう仲良くなってるんだね!こりゃ演奏会はうまくいきそうだね。」

「仲良くないわよ!!!あとソウタくんから教えられた私の名前間違ってるからねそれ!!」

 顔合わせには個性豊かなメンバーが集結し、すでにかなりカオスな状況になっていた。


「み、皆さんすでにすっかり仲がよろしいようで羨ましいですわ。」

すでに遠慮なくやりとりをしている3校の様子を見て、それをあまりよく思わない江沢高校の女子生徒はこう言って少し不機嫌な様子で挨拶をした。

「...でも、ここはコンクール、私たちは敵同士。必要以上の馴れ合いは禁物です。ね、ヒカリ。」

「ええリコ。郷園と西田は2校とも全国で悔しい思いをさせられた学校だというのに、合同とか言って先輩たちはかなり仲良くしてるみたいですが、私たちはドライな立場を貫かせてもらいましょう。」


ーなんかまためんどそうな奴いんな...


「馴れ合いは禁物って...俺たちは年明けに一緒にコンサート開くためにこうして顔合わせしてるんだろ!お互いにある程度仲良くならないといい演奏はできないだろ!」

敦がこう言って反論すると、江沢の女子生徒は鼻で笑った。

「フン!私たちは誇り高き女子校、江沢高校ですわ。男子などというおぞましい連中のいる学校と一緒に演奏するなど本来は考えられない。でもこのコンサートが伝統だというのなら仕方ない。せいぜい私たちの美しい音の邪魔だけはしないことね。」

「“仕方ない”って...!合同演奏はそれぞれのいいところを知って互いに高め合っていくための演奏会だ!ちゃんと意味があるさ!...えっと()()()さんだっけ...?」

全く態度を改めない高飛車な江沢の女子生徒の様子を見て奏太もそう言って反論した。が、二人の名前が分からず、最後に少しどもってしまった。

「ヒカリよ!!いい?不便だと思うから名前だけは教えてあげるけど、本来私たちの名前を男子が知るなんて言語道断。感謝することね。私の名前は河本光里(こうもとひかり)、こっち来海璃子(くるみりこ)。一度しか教えないからしっかり覚えておくことね。」

「そっか!()()()さん()()さんよろしく!!」

「何よこいつ...!!!」


ーこんなんで合同コンサートなんてできるんだろうか...



こうして、散々な状況の中、4校の顔合わせは終了した。

お読みいただきありがとうございます。

今回結構悩んだなあ(笑)結果めちゃくちゃツンツンした女子キャラが2人もできてしまって、今後どうしようかと思ってるところです(笑)まあ今までいなかったタイプのキャラなので新しい風を起こしてくれるんじゃないでしょうか(適当)

かなりキャラが増え、ごちゃごちゃしてきましたが章が終わったらキャラ紹介の方でちゃんと整理するつもりなので(笑)


ちなみに1stのメンバーは各学校に今回全く発言していない人たちがまだいますし、江沢高校の生徒が全員光里や璃子のような性格ということはありません(笑)

江沢高校は以前も名前だけ出てきた学校ですが、今回女子校であることが判明しました。また、光里のセリフにもあった通り、全国大会ではあまりいい結果が出せなかったようで、そのため特別賞を受賞した郷園や西田のことを敵視しています。


これにより、合同コンサートでともに演奏する4校が出揃いました。合同コンサートに向けた練習は県大会編が終わり次第書いていくことになると思います。


ちなみに、旋はいまだに第16話で奏太に教えられた「菜穂」という間違った名前で奈緒のことを覚えています。


次回あたりからいよいよ県大会編もまとめに入ります。

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