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マンドリニストの群れ  作者: 湯煮損
第2章「波乱のパート決め」
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第6話「思わぬOB」

奏太と糸成が初めて楽器体験に行った日は金曜日だったのでその後は土日であった。

土日が明けて次の日の昼休み、奏太と糸成は1年3組から職員室に向かう廊下を歩いていた。二人は手に一枚の紙を持っていた。「入部届」である。

「しかしすぐ入部届持ってくるなんてお前ずいぶん感化されたんだな」

糸成はあまりにもあっさりと奏太を引き込むことができたのでにやけて呟いた。それを聞いて奏太は微笑むと答えた。

「部活そのものに惹かれたのもあったんだけど、俺とんでもないこと知ったんだ」

「なに?」

奏太は立ち止まって答えた。

「俺の親父もこの学校のマンドリン部出身だったんだ」

「えっ!?」

衝撃のカミングアウトに糸成は言葉を失い、同じように立ち止まった。

「親父がこの学校出身だったのは知ってたけど何部に入ってたかは聞いたことなかったもんで俺もびっくりした。入部届にサインもらおうと思って見せたら教えてくれたんだ。お前の親戚といい世間って意外と狭いよな」

糸成の“親戚”も昔この学校のマンドリン部に入っていたということは入学式の日に聞いていたが、自分の身内、しかも実の父親もこの部活の卒業生であったということを知って驚きつつも奏太は少し嬉しかった。


二人が職員室の前に着くとちょうど扉が開いた。出てきたのは…

「紺野さん!」

「あら!二人も入部届出しにきたの?」

見ると美沙は手に入部届を持ったままだった。

「そうだけど、先生もしかしていない?」

糸成が不審に思って尋ねると美沙は苦笑いをしてうなずいた。

「そうなの。他の先生が教えてくれたんだけど国語科資料室にいるはずだって。一緒に出しいこ!」

そこで3人は話しながら国語科資料室に向かった。「紺野さんはどうしてマンドリン部に入ろうと思ったの?」

奏太が尋ねると美沙は微笑んで答えた。

「私中学まで吹奏楽をやってて高校でも何か楽器をやりたいって思ってどうせなら今までやったことない楽器をって思ったの。それでチラシ見たら可愛い楽器だったし見学で聴いたら尚更可愛い音だったから入部することにしたの!弦楽器への興味もちょっとあって。そんな感じ!」

「そうなんだ!俺は音楽初めてだから覚えなきゃいけないこといっぱいあるなー!」

美沙が音楽経験者と聞いて少し焦った(今の所聞いた他の新入部員は自分以外みんな音楽経験者)奏太だったが、やる気だけはあったので俄然燃えるのだった。

 

 国語科資料室につくと確かに電気がついていて誰かいる様子だったのでノックをすると中からどうぞという声がしたので入った。

「失礼します」

3人が入るとたくさんの本がある中で山崎先生が座っていた。

「先日来てくれた1年生ですね」

糸成は少し緊張して言った。

「はい。入部届を出しにきました」

「それは!ありがとうございます」

3人が入部届を差し出すと先生は1枚ずつ目を通した。そして奏太の入部届を見て顔色を変えた。

大橋浩(おおはしひろし)…?君はもしかしてヒロシの息子さん?」

「えっ」

奏太は自身の父親の名に反応した山崎先生に驚きを隠せなかった。

「君のお父さんはこの学校のOBでしたよね、実は私もマンドリン部のOBなんです。君のお父さんとは同期です」

「ええーっ!!?」

奏太の父親と部活の顧問が高校時代の同級生だということを知って一同は思考が追いつかなかった。

「もう40年近く前の話になるな。君のお父さんがチェロで私はギターだった。演奏の時は座席が隣だったからよく話をしたものです。まさかその息子さんが部活に来てくれる日が来るなんて」

山崎先生は懐かしそうに当時のことを少し語ってくれた。

話を聞き終えたところで奏太はまだ頭の整理ができていなかったが3人は改めて挨拶をした。

「3年間よろしくお願いします!」

「入ってくれてありがとう。こちらこそよろしくお願いします。期待してます」

先生は優しく微笑んで見送ってくれた。

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