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マンドリニストの群れ  作者: 湯煮損
第6章「次の学生指揮者」
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第33話「変則的なスケジュール」

 こうしてこの日は1年生はそれぞれ自主練という形でまとまってひと部屋で練習をした。1年生にとって今までより演奏する曲が増えたので、多くの生徒は1年生合奏の曲を練習した。パートごと固まってそれぞれ教え合いながら練習するパートが多く、今まで以上にパートの1年生間の仲が深まった。17時になると音楽室で2、3年の「メリア」の合奏が始まったので、校舎を抜けだしてこっそり音楽室の扉の前で音漏れに耳を傾ける生徒も中にはいた。

 18時になるといつも通り練習が終わり、また朝と同じように高橋の話があった。

「みんな!今日はテスト最終日でお疲れの中だったと思うけど練習お疲れ様!知ってると思うけど、これから全国って時に悲しき3年生は明日から補講が始まります。そこで、明日から練習の時間が変わります!1年生の皆さんは聞いてるかな?明日からは1、2年生だけで活動する時間があります。俺が来れない間は次期部長のサッキーちゃんが主体になって部活をまとめてくれます。二学年でパート練習をすることになると思うけど、それぞれやるべきことをやるようにね!2年生は1年生をしっかり支えてあげてね!」

 高橋はこう言ってフッと笑うと、話を終えた。




 その日の帰り、奏太と糸成はいつも通り一緒に帰っていた。

「高橋先輩俺らが三送会の曲練習すること気付いてるんだろうな」

 奏太がそう呟くと、糸成もうなずいた。

「そうだな流石に毎年同じスケジュールでやってるだろうしなんとなくわかるんだろうな。3年生にはとりあえず選曲がバレないようにしとけばいいんじゃない?それより、3曲みたいだけど曲数重なるのは流石に文化祭で結構やってるし余裕か?」

「そうだなー、曲数は減るけど2年生少ないし、結局1、2年合奏って言っても俺らが頑張らなきゃいけないってなるとクオリティ上げてかなきゃいけないと思うな。こないだの演奏は結構間違いも多かったから今後はもっと確実な演奏をしたい。そうじゃないと先輩たちの力になれないからな」

 糸成の質問に対し、奏太は勉強会の時に見た2年生たちの指揮者決めの様子を思い出しながら答えた。彼の指摘の通り、2年生の少ない西田高マンドリン部では1年生がどのくらい演奏できるようになるかが次の代の成功の鍵となる。糸成はそれを聞いて少し考えこんだ。

「…確かにそうだな。よく考えたらポップスとかで学生正指揮者が出ちゃったら2パート分1年生だけになっちゃうんじゃないか?」

「えっ!?そ、そうだな…!」

 指揮者決めの様子を見てないはずなのにそれを指摘したことに驚いた奏太は思わず声を出してしまったが慌ててごまかした。

「ん?俺今なんか変なこと言ったか?そうだろ?」

 奏太の様子を不審に思った糸成はこう尋ねた。


「先輩たちも結構揉めてたよ、あ、いや揉めてそうだよね?」

 奏太は焦って返し、思わずボロを出してしまった。

「えっ?お前もしかして何か知ってるな?教えろよ!」

「しまった!」

 こうして奏太は結局勉強会の時に見たことを全部糸成に話すことになってしまった。



 ・

 ・




「…なるほど、先輩たち相当悩んでるんだな」

 糸成は奏太から勉強会の日に見た先輩たちの様子を聞き出すとしみじみと考え込んだ。

「ああ、もう1ヶ月もしないうちに2年生の代になるし結構急ぎの問題っぽかったぜ。言わなくて悪かったな、噂を広げるみたいで嫌だったのもあるけどトイレにいなかったことがバレるから言わなかったんだよ。」

 奏太は決まり悪そうに謝った。

「別にいいよ。結局テストの手応えは大丈夫そうだって言ってたし。あのとき学は不安そうに待ってたけどな。」

 糸成はそう言ってなだめた。


「それで、お前はどう思う?指揮者。誰がやるのがいいと思う?」

 奏太は改めて話を仕切り直し、糸成に意見を聞いた。

「そうだなあ、俺は先輩たちなら誰がやってもいいと思ってるし、今一番有力候補に上がっている益田先輩がもしやることになったら俺たち1年生がギターパートを引っ張っていくつもりではあるけど…」

 糸成はそう言って少し話を溜めるというか少し迷ったような仕草を見せ、気を取り直すと話を続けた。

「前にお前が言ってた、退部した先輩にやってもらうのはどうだ?」

「えっ?」



 糸成の提案に対し、奏太は一瞬意味がわからなかった。

「どういうことだ?その先輩はもうマンドリン部員じゃないんだぞ?」

 奏太のイマイチな反応に糸成は苦笑いをして答えた。

「あーやっぱピンと来ないよな。まあ冗談だと思って聞いてくれよ。確かにマンドリン部員じゃないが、その先輩音楽センス抜群なんだろ?それにお前の話じゃ部活をやめたことに心のどこかで完全には納得してない様子だったって言ってたし、お前自身部活に戻したいと思ってるんだよな?手を痛めて楽器の演奏ができなくても指揮者ならやってもらえるんじゃないか?他の2年生の先輩たちもその先輩と険悪な感じじゃ無いって話だったし、戻ってくることを嫌がることは無いだろうから。」


 糸成の説明を聞いている間、奏太は黙ったままだったが話が終わると奏太は改めて目を輝かせた。

「それいいと思う!さすが糸成!俺もまだ中川先輩の受けてないけどあの旋が認めているんだから先輩の音楽センスは間違い無いと思う!中川先輩が指揮者やったら絶対すげーことになると思う!水曜に中川先輩にマンドリン教わることになっているから話してみるよ!ありがとう!」

 奏太はそう言って喜ぶと糸成にお礼を言った。

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