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マンドリニストの群れ  作者: 湯煮損
第5章「西田高校文化祭2022」
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第27話「いろいろな連絡」

 奏太たちは高橋に言われて割とすぐのタイミングで中川との話を切り上げると片付けの終わった音楽室に入って高橋の連絡を聞いた。高橋からの“連絡”とは大したものでは別になく、単に先ほどの自分のインタビュー談と演奏に対する自身の思いを熱心に語っただけで高橋自身が文化祭を楽しみたかったため割とすぐ済んだ。


 高橋の話が終わったタイミングで2年の水島から連絡があった。

「次期部長水島から連絡です!文化祭もまもなく終わりで4時半には体育館に全校生徒が集合だと思うんだけどそれが解散した後、2年生は全員国語科資料室に集まってくださーい!山崎先生から話があるそうです!」

「いやーさすが次期部長、俺より全然連絡らしい連絡してんじゃん!みんなとにかく今日はお疲れ様でした!これからは特に2、3年生、テストが明けたら全国に向けて最後の追い込みがはじまるから最後までよろしく!1年生も応援・サポートよろしくな!」

 水島の自分よりしっかりとした連絡に高橋はニヤニヤしながら話をまとめると、最後に一番大事な連絡をした。

「追伸!今日の演奏の簡単な反省会を火曜日16時からやるからよろしく!解散!」

「カズキまた一番大事なことをさらっと…」

 高橋の気まぐれな連絡に小野含め一同は少し呆れ気味だったが、高橋は相変わらず笑顔で全体に合図を出し、挨拶を済ませるとその場は解散となった。(翌日に当たる6月13日月曜日は6月12日日曜日の分の振替休日となっている。文化祭1日目6月11日土曜日の分は土曜授業開講扱いで振り替えられていない。)

 文化祭終わりまで30分以上時間があったが、演奏が終わって気が抜けたのもあって奏太たちは部室でのんびりしながら過ごした。そして16時30分、体育館でいよいよ文化祭の閉会式となった。



 文化祭の閉会式は20分程度で終わって全体が解散となり、奏太と糸成はいつも通り一緒に下校した。糸成は奏太にその日の感想を尋ねた。

「文化祭終わっちゃったなー楽しかったな!ソウタはどうだった?」

 奏太は苦笑いしながら答えた。

「ミスもいっぱいして悔しかったけど不思議と満足感があるな。やりきったとは言わないけど全力で最後までできることをやり遂げた感じがして。…クオリティは全然だったからこれからもっと頑張んないとだけどな。」

「お前全曲やってたもんなー頑張って練習してたし」

 奏太はそんな糸成の言葉に相槌を打つと、改めて決意を固めた。

「うん。それを言い訳にしちゃダメだけどな…!でも俺必ず先輩たちみたいに全曲完璧に演奏できるようになる!“全曲練習したからどれも中途半端になった”なんて絶対言ってたまるか!」

「そっかこれから頑張んないとだな!…まあ実は俺も今日の本番全曲弾いてたんだけどね」

 さらりと言った糸成に奏太は驚いた。

「えっ!?マジで?」

「うん、そりゃギターちょっとやってたからな、クラシックギターは初めてだったけど他の人に比べて割とすぐ慣れたから俺も弾くことにしてたんだ。」

 糸成はあっさりと答えた。それを聞いて奏太は悔しそうに言った。

「はえーお前やるなー!俺も負けてらんねー!」

「…剛田旋を超えるんだもんな」

 自分を奮い立たせる奏太を横目で見ながら糸成はニヤニヤ笑いながら言った。

「ああ、強力な助っ人もついてくれることになったしこれからメキメキ上手くなってやる!」

 糸成の言葉を受けて奏太は俄然やる気を出した。その“助っ人”という言葉に糸成は思わず聞き返した。

「…えっ?助っ人って?」



 「えっ退部した2年生に教わることになった!?」

 奏太から中川のことを聞いた糸成は呆気にとられて大声を上げた。

「うん。」

「…しかもその人は剛田旋にも認められてて音楽センスは旋以上かも!?」

「そうだよ、セン本人が言ってた!」

 自分の知らぬ間にあったことを聞いた糸成は呆れてしまった。

「…なんつうかお前すごいよな、ずうずうしいというか厚かましいというか、悪い意味で言いたいわけじゃないんだけど、初対面の人によくそこまで言えたな」

 驚き果てている糸成の様子を見て奏太は改めて宣言した。

「そりゃな!俺は本気であいつに勝つつもりだから!俺だって馬鹿じゃない、長年時間かけてやってるあいつに勝とうとしてるんだ、できることは全部やるくらいの気持ちじゃないと!」

 やる気満々の奏太を横目で見て糸成は改めて感心した。

「…まあお前らしいな、なんかお前の話聞いてるとほんとに勝っちゃうんじゃないかって思えて来ちゃうよ」

「…だから勝つんだって!」


 こうして二人は文化祭の余韻に浸るどころかすぐに普段の会話に戻り、家に帰った。




 その頃、国語科資料室にはマンドリン部の2年生全員と山崎先生が集まり、話をしていた。山崎先生は場にいた2年生全員の顔を見渡すと口を開いた。

「…君たちの学年は人数も少ないし4月いろいろあったから落ち着いてから決めればいいと、前私は確かに言いました。…しかし、もう6月中旬。テスト休みが明けたら7月頭です。さすがにそれ以上伸ばすと今後のスケジュールに差し支えます。」

「…」

 山崎先生の真面目な言葉に一同は黙りこんだ。

「…そうですね、テスト休み明けの7月4日から1週間後の7月10日。ここを期限とします。約1ヶ月あります。この間によく相談してください。ただ…皆さんも分かっていると思いますがもちろん勉強を疎かにしてはいけません。あくまで節度を持って、でもしっかりと相談してください。」

 山崎先生は相変わらず淡々と話を続けたが、最後に一息溜めて話を終えた。

「…そして次期“学生正指揮者”を選出してください。」

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