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マンドリニストの群れ  作者: 湯煮損
第13章「合同コンサートを見据えて」
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第98話「おみくじ」

 2023年1月1日、奏太と糸成は地域の神社に来ていた。

「うおー、すげえ人。」

「さすが新年だな。」

二人の言う通り、元旦ということで神社は多くの人で埋め尽くされ、それぞれがそれぞれの新年を祝っていた。

「結局ふたりだけになっちゃったな。」

「ああ、一応男子全員に声はかけたんだけどな。」

糸成はスマホの画面を覗き込みながら答えた。画面にはマンドリン部1年男子が全員所属しているグループトークが表示されており、糸成が呟いた初詣の誘いに対してそれぞれの返事が書き込まれていた。

「マナブは親戚が来てるから来れなくて、ダンは0時に初詣済ませちゃったらしい。ダイキは来ると言ってるけどいつもの通り遅刻。」

「ダンはどうせ女子と初詣行ったんだろうなあ...」

奏太は悔しそうにため息をついた。

「なんだよ俺じゃ不満かよ」

「だって毎年のことじゃん」

「毎年のことだからいいだろ」

「まあそうだけど...」

奏太はそう答えてからため息をつくと、呟いた。

「はあ〜、俺もミサさんとかと初詣してぇな〜」

そんな奏太の主体性のないため息を横で聞きながら糸成は呆れて言った。

「だったらもうちょい積極的にアプローチしろよ。もう出会ってから1年経とうとしてるぞ。」

「1年じゃなくて10ヶ月だろ!」

「1年みたいなもんだよ!1月から3月はあっという間だってよく言うだろ?新年3ヶ月は行く逃げる去るってよく言うだろうが!」

「そうは言ってもさあ〜...」

奏太は糸成に指摘されてもなおいじけた様子だった。

「大体こないだのクリスマス会、せっかくのチャンスだったのにお前全然紺野さんと絡んでなかったじゃん!この調子じゃ気づいたら引退になっちゃうぞ。」

「いやクリスマス会はほぼ全員いたからむしろ声かけづらかったって言うか...」

ーこいつ、部活のことにはポジティブなのに恋愛のこととなると一気に消極的になるんだよな...

糸成はウダウダと言い訳を繰り返す奏太に少しイライラしていた。


「とにかく今日から新年!気持ちを切り替えて積極的になるには絶好のタイミングだ。もう少し前向きになったらどうだ?」

「んー、まあそうだな。」

糸成の助言を聞いて奏太も少し前向きな気持ちになると、続けた。

「とりあえずおみくじを引きにいこうぜ!今年の運勢が分かれば糸口になるかもしれない!」

「わかったわかった。」

奏太が興味を示したのがおみくじであるのを見て、糸成はどちらかというと神頼みというか、奏太の姿勢が受け身に見えた気がしたが、とりあえず合わせることにした。





「あ、」

「え?」

おみくじのある場所について、奏太と糸成は驚いた。なぜかというと...


「そ、ソウタくんとイトナリくん!?」


そう、紺野美沙と高木奈緒にばったり会ってしまったからだ。

「あ、あけましておめでとう」

「...なんかよく会うな俺ら。」

「そ、そうね〜、花火大会の時もそうだったもんね。」

糸成は驚いた顔を隠せないままそう言って苦笑いをすると、奏太の方を見た。

「おい、ほら、神もお前の味方をしてるみたいだぜ...!?」

糸成が美沙たちに聞こえないような小さな声で奏太の方を見ると、奏太はボーッと美沙の方を眺めてしまっていた。

ーみ、美沙さんの私服、久しぶりに見た...

奏太は美沙の私服を見てその美しさに見惚れてしまっていた。

美沙は奏太からの視線を少し感じてはいたものの、それには特に触れずに話し始めた。

「ふ、ふたりもおみくじ引きに来たの?」

「あ、ああ。そうだよ。せっかくだからみんなで見る?」

「いいね〜!そうしよそうしよ!!」

奈緒は糸成の提案に賛同して大きく頷いた。

「ほら、ソウタ!!」

糸成は未だぼーっとしている奏太の肩を揺さぶって賛同を促した。

「え、あ、う、うん!そうだな!!」

こうして4人でおみくじを引くことになった。




「じゃあまず俺から引かせてもらうよ。」

糸成はそう言うと小銭を入れた。

「どれにしようかな...、これっ!」

糸成はそう言っておみくじの中から一つを選んだ。同じようにそれぞれのメンバーも自分の分を選んだ。

「さて、そいじゃ引いた順に開けてこうか。」

糸成はそう言って自分のおみくじを見た。

「おっ!“吉”だ!」

「へえ悪くないじゃん!なんて書いてある?」

糸成は満足そうな顔で自分のおみくじを見た。

「ああ、総合運には、“これまでもいいことが続いていたでしょうが、この流れは今後もしばらく続きます。今後も真摯な気持ちで過ごすことでいっそう運気を高められるでしょう”だって。」

「へー、別に面白くもないな!」

奏太は糸成の運勢の良さを見て、少し嫌味を言った。

「まあ別にいいこと続いてたわけでもないけどな。」

糸成は奏太の羨ましそうな言葉に対し、そう言って軽くあしらった。

「恋愛運は!?恋愛運は!?」

「ちょっとナオ!」

「え?恋愛運?えーと、」

糸成は恋愛トーク好きなんだろうと、奈緒から恋愛運を強く聞かれたことには深い意味を感じずに自分のおみくじを眺めた。

「あー、“自我をおさえよ”だって。俺別に好きな奴とかいないけどどういうことなんだろうな。」

「相手から来てくれるのを待ちなさいってことだよきっと!!!」

奈緒は糸成の結果を知ることができて安心したのかそう言ってウキウキで今度は自分のおみくじを見た。

ーこれで私のおみくじの恋愛運が“積極性を持て”とかだったら()()()()()()だよね!!()()()()()()だよねえ〜!!?


“恋愛運:休息が吉”


「.........」

おみくじに書かれていたことが期待していた答えではなく、奈緒は言葉を失ってしまった。

「あ、ナオ!見て!大吉じゃん!よかったね!!」

美沙がそう言って微笑んでいる通り奈緒は総合運は“大吉”が出たのだが、恋愛運の項目が期待外れだった奈緒には全くどうでもいいことだった。

「...へっ、別に面白くもないわね。」

「ちょっとナオ!!?」


「うわっ、末吉かー、どんまい。」

がっかりしている奈緒をよそに、奏太が開いたおみくじには末吉と書かれていた。それを見て、横から糸成が励ました。

「なんで?末吉って悪くないんじゃないの?」

奈緒が不思議そうに尋ねると、糸成は首を振って説明した。

「確かに“吉”とはついてるけど、“凶”の次だからね、全体でいうと下の方なんだよ。」

「へーそうなんだ。」

二人の会話を横耳に聞きながら、奏太は余計にがっくりした。

「はあ、いいなお前らは結構いい方で。」

「で、でも、ほら。恋愛運、“次第に好転”って書いてあるじゃん。よ、よかったね!」

奈緒がそう言ってフォローすると、奏太は美沙に自分の気持ちを悟られまいと慌てて否定した。

「い、いや別に!俺!恋愛とか、別にまだいーしぃ!!?総合運よかった奴らに言われても全然励まされないんですけどぉ〜!!?」


「あ、見て!」

奏太たちのやりとりをよそに美沙が自分のおみくじの結果を見せてきた。

「“区”だって!私初めて見たよー!どんな意味なのかな。」



ーミサ、...それ“凶”だよ。

美沙は少し天然であった。

作中では年が明け、2023年の世界になりました。おみくじで盛り上がる奏太たち、次回も引き続き日常感あふれる様子を描いていきます。

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