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マンドリニストの群れ  作者: 湯煮損
第13章「合同コンサートを見据えて」
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第94話「自分で納得のいく結論」

 思いもよらなかった中川の言葉を聞いて、奏太は眉をひそめて返事をした。

「え、せ、先輩...何を言ってるんですか?コンマスって...和田先輩はどうなるんですか...」

「...それは、そうだが...お前は前からコンマスに憧れてただろ?このタイミングでコンマス経験できたら...」

「そうじゃなくて、和田先輩はどうなのか教えてください!」

中川の何か後ろめたそうな様子にイライラして奏太は思わず強い口調で言った。

「...」

「さっき和田先輩と何話してたんですか?教えてください!知った上で心配したいんです!」

「奏太...」


 奏太の真剣な表情に負け、中川はため息をしてから改めて奏太の顔を見て、衝撃的なことを口にした。

「和田は、もう部活には来ないつもりだ。」

「えっ...」

中川の発言に衝撃を受け、奏太は思わず言葉を失った。

「先輩、それってどういう...」

「わかる、俺も初めて聞いた時は驚いた。ちゃんと説明する。」

中川はそう言って和田から聞いた話を説明した。


「和田は、先日の県大会で全体に迷惑をかけてしまったと感じているらしい...自分に自信がなく、コンミスとして全体を仕切っていくことができなくなってしまったみたいだ。1stには自分よりもやる気のある後輩がいて、そんな中で自分がコンミスとして役割を全うできる自信がないんだ。」

「...」

「それで、部活をやめるつもりだと俺に話してきた。」

「そんな...」

中川の説明を聞いて、奏太は俯いた。

「せ、先輩は、それでいいと思ってるんですか!?」

「...分からない。でも、和田(あいつ)がそう言うんだからそうなるしかないんじゃないか?それがあいつの結論なんだとしたら」

「そうじゃなくて...!」

「?」

中川先輩(せんぱい)はいいと思っているんですか!?それで!」

「...!!」

奏太からの強い言葉を受けて、中川はそらしていた目を奏太の方に向けた。そして、しっかりと彼の目を見て答えた。

「...そりゃあ、俺だっていいとは...」

「じゃあ、どうして止めなかったんですか!?」

奏太は必死な顔で中川に訴えた。中川はそんな奏太の真剣な表情を見ると、俯いて静かに答えた。

「だってよ、俺に...」

中川は下を向きながら自分が部活に復帰した時、奏太や和田が言ってくれたことを思い返していた。


ー先輩!とにかく俺は先輩に指揮をやって欲しいんです!


ー音楽初心者だった私にとってはその時中川くんが色々音楽のこと教えてくれたのがすごく頼もしかった!


ー中川くんがいなくなって私は1stになってもうすぐコンミスになるけど、中川くんと一緒に練習したあの頃のことがなければコンミスなんて引き受けられなかったと思う!


ーあいつがいなかったら今頃俺は...

自分を部活に戻すきっかけになった和田の色々な言葉を思い出しながら、中川は苦し紛れに言った。

「俺に、“部活を辞めるな”なんて言う資格はない。」

「中川先輩...」

奏太は不安げな表情で中川の目を見返した。そして、真剣な表情をして自分の思いを話した。

「そんなことないと思います、中川先輩。和田先輩には、中川先輩の口から部活を辞めないように言うべきだと僕は思います。中川先輩自信が部活を一度辞めてみて、それでもう一度戻ってきて、思ったこと、感じた部活のよさを伝えるべきだと思います。」

「奏太...」

奏太が真剣に話した後、微笑んだのをみて、中川はハッとして奏太の顔を見た。

「俺が、感じたこと...」

「そうです。俺らの猛烈なプッシュがあったのもあったんだとは思いますが、中川先輩がこの部活に戻ることを決めたのには、きっとハッキリとした理由があったんでしょう。それは俺らには完全にはわかりません。和田先輩に納得して戻ってきてもらうには、和田先輩自信が納得するためには、先輩自身が思ったことを先輩自身の口から和田先輩に伝えるべきだって、俺は思います。」

「ソウタ...お前...」

奏太の強い訴えを聞きながら、中川は驚いた顔で呟く。

「本当にお前か?」

「って、なんでですか!!」

「いやいやすまんすまん、あまりにもいいことを言うもんだから、面食らっちまった。」

中川は後輩である奏太から真剣なことを言われて不器用にも恥ずかしくなり、冗談を言ってお茶を濁してから、改めて奏太の意見に応えた。

「すまんな、確かにお前の言う通りだ。ありがとう。一度部活を辞めた身として、俺が、和田(あいつ)を救ってみせる。和田の誤解と早とちりを解いて、その上で和田(じぶん)で納得できる結論に導いてみせるよ。」

中川はそう言って奏太と向き合い、はっきりとお礼を言った。

「全くふたりとも不器用すぎですよ。」

奏太はそう言って苦笑いした。和田の問題に活路が見えたような気がして嬉しかった。周囲との気持ちの差を感じ、それが誤解にも関わらず一度は退部という道を選んだ中川、その過ちに気づいた今だからこそ、同じように自分に部活内でコンマスという役割を果たせないと決めつけて誤解している和田を救うことができる、そんな予感がしていた。



 そして、次の日の昼休み。教室で中川は和田に声をかけ、場所を部室に移して早速その話題を切り出す。中川の話を和田はどう受け止めるのであろうか。

途中の回想は第36話のやりとりから一部抜粋しています。

本文中でも語られていたように、今回の和田の問題、彼女が感じている感覚は以前中川が部活を退部したときの彼の感覚に近いものがあります。その状況から抜け出し、部活に復帰を果たした中川は果たして和田にどのように語るのでしょうか。また、和田はどう受け取るのでしょうか。

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