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マンドリニストの群れ  作者: 湯煮損
第13章「合同コンサートを見据えて」
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第90話「パートをまとめる難しさ」

 2022年11月19日、翌日20日が日曜ということもあり、この日はテスト前最後の部活となった。相変わらず2年生のいない状態で練習を続けている西田高校マンドリン部ではこの1週間で練習してきた曲の合奏が中心の練習となっていた。

 合奏に備えてのパート練習は1時間設けられ、1stではこの日の担当は奏太であった。

「よし、そいじゃ基礎練も終わったことだし!今日合奏する曲のパート練を始めるぞ!」

 奏太はそう言って少しワクワクした様子で前に立った。


 ーこうやってパート練を仕切るのなんて初めてだし、なんかコンマスになった気分だな!


 奏太はそんなことを考えながらメトロノームを操作した。


「これで全員パート練仕切ってきたことになるし、この練習体制にも慣れてきたね!」

「おう!みんなのパート練を見てたし、上手くみんなをまとめあげて見せるぜ!」

 奏太はそう言って自信満々でパート練を始めた。


 ーーー


「...はいストップ!」

 パート練を続けながら奏太はメトロノームに合わせて叩いていた棒を止めた。

「どう?」

 演奏していた奈緒はおそるおそる確認した。

「えっとね、もうちょい合わせて欲しいかな。」

「そればっかじゃん!!!」

 奏太が演奏の問題点を言うと、奈緒はそう言ってツッコミを入れた。

「ええ?そうか?」

「そうよ!アンタさっきから“ズレてる”と“もっと合わせて”しか言わないじゃない!どこがズレてるとか、誰が合ってないとか、他にももっと言えることあるでしょ!ただズレてるって言われても直しようがないのよ!!」

「...それに、ズレてること以外にも見ることあるでしょ。カナちゃんが担当の時とか、もっと役に立つこと言ってたわよ。」

「そ、そうね、音色とか音量とかはどう?うまく弾けてる?私たち。」

 奈緒に同調して実希と花奈も静かに言った。



「ええ、そんな事言われてもな...メトロノームを聴きながら棒を叩いて、それで演奏まで聴いて問題を見つけるなんて、そんな簡単にできないよ!」

「お前コンマス志望なんだろ!?頑張って聴けるようにならないとイカンだろ!」

 女性陣に怒られて拗ねてしまった奏太に対し、敦も容赦ないツッコミを入れる。

「…はっ!」


「…そ、そうか、確かにお前の言う通りだな。俺、頑張ってみるよ!」

「おお…」


「…来年までに!!」

「来年かよ!!」





「はー…大変だったな。」

「どうしたんだ奏太、今日はやけに疲れてるみたいだな。」

 その日の帰り道、歩きながら大きなため息をついた奏太に糸成は不思議に思って尋ねる。

「…いや、今日俺初めてパート練仕切ったんだけど、色々なことを聴きながら指摘していくのって本当に大変だなって改めて思った。Guitarパートは今日もお前が仕切ったの?」

「そうだよ。」

「そっか、すごいな…俺今までコンマスって楽器が上手くなればいいのかと思ってたけど、そんな甘くないってことが本気でわかった気がするよ。」

「…奏太。」

 珍しく落ち込んでいる奏太を見て、糸成は心配そうに見た。

「コンマスは他のパートリーダーと違って、合奏全体を取りまとめる役割だ。演奏をしっかりと聴いて、立ち振る舞うことが必要だし、演奏にのめり込みすぎてもいけない。指揮者に次いで演奏を冷静に聴くことができるようにならないといけないんだよ。」

 糸成の真剣な意見を聞いて奏太は落ち込んでいた自分の顔を叩いて、改めて気合を入れ直した。

「くっそ〜!!やることいっぱいあんなあ!!こうなったら明日からネットで演奏動画色々聴きまくって色んな音を聴く練習するぞ!!それで弾くことと聴くことを両立できるようになってやる!!!」


「...いや、明日からテスト期間だろ、全教科を両立できるようになれよ。」

「...」






 こうして、西田高校は1年生もテスト期間を挟み、テスト最終日の12月8日。この日は修学旅行から帰ってきた2年生も参加しての部活が再開した。

「よっしゃあ〜!部活だあ!」

「部活はいいけどソウタお前結局テスト大丈夫だったのかよ?」

「ああ!今回も勉強会やってくれたおかげで、赤点にはなってないと思うよ!」

 奏太の言う通り、テスト期間中には奏太の苦手な社会を補強するための恒例の勉強会が行われ、奏太は今回も勉強漬けになった。

「それに...今回は赤点取っても全国行けなくなったりしないからどっちでも別にいいぜ!」

「...よくはないだろ」


「今日は久しぶりに先輩が練習に来るな!」

「ああ、先輩がいないパート練は本当に大変だったから、今日からの練習はきっと今まで以上にいい練習になるぜ!」

 そう言いながら、2年生の練習に期待する奏太は音楽室に入り、楽器を準備した。

「まあ、そうだな。今はとにかく和田先輩のパート練をよく研究して仕切り方を学ぶといいだろう」

 糸成もそう言って奏太の方を見て笑った。


「おっ、イトナリ久しぶりだな!」

「あっ!益田先輩!修学旅行はどうでした?」

 二人が話しているところにやってきたのは益田智だった。

「ああ、めちゃくちゃ楽しかったよ!海も綺麗だったし、食べ物も美味しかったなあ」

「へえ!来年が楽しみです!」

 糸成が益田から色々と修学旅行の様子を聞いていると、横からまた別の声がした。

「あ!!“()()()()()”!!これをくらえ!!」

「え?」

 声に驚いて奏太が振り返ると飛んできた何かに頭をぶつけ、倒れてしまった。

「あ、ごめん、やりすぎた!わっさいびーん!!」

 見ると、やってきたのは水島咲子だった。

「...お前ひでえな、いきなり何をぶつけたんだ?」

「お土産だよ!シーサークヮーサー!!」

「そんな土産ねえだろ」

「ええ?ちゃんと買ったんだよ!おじさんがこれはシーサークヮーサーってお土産だって言ってたもん!一粒1500円!」

「どこで買ったんだそんなもん、騙されてるぞ多分。」

 咲子の話を聞いて益田は冷静なツッコミを入れた。



「とりあえず!私たちは修学旅行で沖縄の風を浴びてきてパワーアップしたから!これから一気に部活走り切るよっ!しょぶーズの二人よろしくねっ!!」

「はい!よろしくお願いします!水島先輩!!」

 ー“しょぶーズ”ってなんだ?






 こうして、修学旅行から帰ってきた2年生と共に、再び1、2年での練習が始まった。

 ...しかし、ひとつだけ気になることがあった。

「あれ?...和田先輩は?」

 和田の席が空席になっていたのだ。

西田高校の修学旅行は沖縄のようです。

そして、「しょぶーズ」という咲子の謎のネーミング、彼女は結構あだ名をつける癖があり、初めて体験入部にきた奏太と糸成の二人を「初入部員」とかけてそう呼んでいるようです。

こうして再び2年生との部活が再開します。

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