第8話 魔剣を授かりました。
どうも、ぽむむんです。
最近は、スキル名の他にも、多くの物語の語句を出してしまい、すみません。
〔ケミーナの魔法講座〕
「この小説中に出てくる単語について解説しよう。」
持続魔法
無属性に多く存在する魔法。下にある〈身体能力強化〉や、〈加速〉など、その魔法の効果が解除しない限り、持続して発動し続ける魔法。発動中は常に魔力を消費するため、常人は短期間しか使用出来ない。大抵は、最初に術式を展開する時に、注ぎ込んだ魔力量が多ければ多いほど効果が上昇する。
〈身体能力強化〉
無属性の持続魔法。魔術師の基礎身体能力や五感を向上させる魔法。他の持続魔法に比べて効果が強いため、消費魔力量が多い。そのため常人では、戦闘でも短時間しか使えない。
〈ブースト〉
無属性の持続魔法。魔術師が力を思い切り込めた時に、その運動を一瞬だけ超飛躍的に倍増させる。
しかし、反動が大きく連発して使用出来ない。
三段階持続
持続魔法の中で、3段階にレベル分けされている魔法。下にある〈加速〉、〈万力〉、〈守護〉など。これらの魔法は、〈加速〉の場合だと〈加速〉から、〈超加速〉となり、さらに強化されて〈全加速〉と3段階に変化する。これらの他にも、〈索敵〉や、〈隠密〉などがある。
〈加速〉
無属性の持続魔法。魔術師の運動を加速させ、高速移動などが出来るようになる。
しかし、使用後に息切れする。
〈万力〉
無属性の持続魔法。魔術師の運動を大きくさせ、攻撃の威力が飛躍的に増加する。
しかし、使用後に疲労がたまる。
〈守護〉
無属性の持続魔法。魔術師の防御力を上げて、受けるダメージを軽減する。
しかし、〈バリア〉と違って攻撃そのものを防ぐ事は出来ない。
「以上で講座を終了する。」
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「よし、お前はこれを使え。ただ、素振りには木刀を使う事。」
数週間の重い木刀による素振りの修行の末、刀を授かる。
この刀は、ケミーナが造った日本刀の模造刀だった。
しかし、なぜ異世界に日本刀なんて代物があるんだろうか?
「珍しい形の剣ですね。」
そう、メルティ―ア王国だけでなく周辺の国でも刀を見ることは無く、大抵はソードやサーベルといった形状の剣だった。
しかし、ケミーナとの剣(いや刀か)の打ち合いにイロアスが本物の刀で行って良いのだろうか?
「これって危なくないですか?」
その点については、イロアスも思ったのか質問をする。
刃は潰されているが、金属製なので当たりどころが悪かった場合は大ケガにつながる恐れがあるからだ。
「大丈夫だ。そう簡単にお前の刃が私に届くか。」
随分と余裕綽々とした態度だった。
よほど、腕に自信があるのだろう。
「じゃあ、僕の刃が師匠に届いたら、勝ちなんですね。」
イロアスは、確認するようにケミーナに尋ねる。
「ああ、まぁ、私は木刀を使うけどな。」
ケミーナとしては、
「私もそれなりに、反撃するぞ。」
と言いたかったのだが、実際には、イロアスにとって
「お前のレベルでは、木刀で十分だ。」
という風に解釈された。
「じゃあ、師匠行きますよ。」
師匠に思い知らせてやると言わんばかりに斬りかかるイロアス。
しかし、ケミーナは、
「剣を力任せに振るな。」
軽々しく跳ね返す。
そのまま体勢の崩れたイロアスに連撃を食らわす。
両者の身体には、防御魔法の〈バリア〉が張られていたが、イロアスの〈バリア〉は、壊れかけていた。
「ならっ、これならどうだ。」
左から斬るフリをして、右側から刀を振り下ろす。
しかし、
「甘い!初動が大きすぎてバレバレだぞ。」
盛大なカウンターを食らい、倒されるイロアス。同時に〈バリア〉が無くなった。
「くっ。」
くやしそうにするイロアス。イロアスも体感してケミーナが強いことははっきり理解した。
「〈バリア〉。ほら、お前の実力はその程度か。」
〈バリア〉をイロアスにかけ直したケミーナがイロアスを挑発する。
「いえ、まだまだですよ。」
イロアスが立ち上がる瞬間に、少しだけ魔素がイロアスの周りで輝いたのをケミーナは見逃さなかった。
「はぁっ。」
勢いよく立ち上がり、ケミーナめがけて刺突するイロアス。
その動きは、明らかにさっきより俊敏だった。
「ほう、〈アクセル〉か。面白い、しかしそれだけでは足りないぞ。」
そう、イロアスは倒れている間に〈加速〉の詠唱符を発動させ、術式を展開したのである。
「いえ、それだけではありませんよっ。」
イロアスはそう言うのと同時に、高く跳躍してケミーナの後ろに立った後、素早く逆袈裟斬りをする。まぁ、実際にはただの横打だったが、刀なので逆袈裟で良いだろう。
「何っ。」
イロアスの大振りを受け止めたケミーナの木刀は、遠くへ飛ばされていた。
「よし!」
喜んでいるイロアスに、
「〈創造〉。」
〈創造〉で新しく造った木刀でイロアスの刀を凪ぎ払う。
「相手の武器を落としただけで喜ぶな。ただ、さっきのは面白かった。」
イロアスを叱りつつも、誉めるイロアス。
「はい、すみません。」
イロアスも自分の非を認めて謝る。
「ところで、さっきのは〈アックス〉だな。」
確かに、イロアスの最後の一撃は、とても大きな音がした。
「あと、〈身体能力強化〉もです。」
短時間だが、3つの持続魔法を同時に発動することは、常人には不可能に近かった。
「そうか、膨大な魔力量だからこそ出来る芸当だな。」
そう言った後にイロアスの方に向き直って、
「ほら立て、まだやるぞ。今度は本気で来い。」
本気と言うのは、詠唱による持続魔法でかかって来いと言うことなのだろう。
「分かりました。全力で行きますよ。」
そう言うと、詠唱を始めるイロアス。
しかし、そこにケミーナが言う。
「しかし、私も魔法で強化するけどな。」
イロアスは、詠唱を中断しなかったものの、愕然とした表情になっていた。
◇ 数分後
「準備出来ました。」
持続魔法の詠唱を終えたイロアスが、刀を構える。
「ああ、こっちも万全だ。」
ケミーナも、木刀を持ちイロアスに対峙する。
ちなみに、イロアスは【チャージ】を長く使用して、更に【時間効果倍増】を使用した〈身体能力強化〉と〈ブースト〉、更に三段階持続の〈超加速〉と〈超万力〉、〈守護〉を発動していた。
「じゃあ、行きますよっ!」
そう言うのと同時にイロアスは動き出した。
俊敏な動きで、ケミーナとの距離を一気に詰める。
ケミーナとの距離が3mぐらいになった時、イロアスが突然止まり、右足を地面につけたまま、左足を上げる。
何をするのかとケミーナは、訝しそうにイロアスを見る。
イロアスの右足に魔素が集まったのを確認したか、していないか。
ともかく、その刹那にイロアスは瞬間移動した。実際には、〈ユニークスキル〉と〈ギフト〉更にはチートなスキル達によって超強化された〈超加速〉と〈身体能力強化〉の補助を糧にして発動された〈ブースト〉が、能力の限界値を超えて発動したからである。
「何っ!?」
気付いた時には、ケミーナの手には木刀が無く、視界からもイロアスの姿が消えていた。
その瞬間、不意に後ろから気配がしたが、気付いたころには時すでに遅し、イロアスの斬撃が振り下ろされた。
「がはっ。」
〈超万力〉の効果によって、ケミーナの周りに張ってあった〈バリア〉は全て砕け、イロアスの刀はケミーナの身体に届いていた。
「ヤバい、『全魔法解除』。」
イロアスの身体中に付与されていた持続魔法が解除されたのと同時に、イロアスは急激な疲労によって倒れた。
「まったく、私が負けたのになんで、勝者が倒れているんだか。」
イロアスの模造刀の直撃を食らったにも関わらず、〈守護〉のおかげで、さほどダメージは入っていなかった。
「しかし、私が完璧に負けるとは。師匠の面目が丸潰れだぞ。」
ケミーナの嘆きは、イロアスには聞かれなかった。
◇
「う、ここは。」
目覚めて視界に入るのは見慣れた景色。しかし、この景色を見るのは久しぶりだった。
「やっと起きたか。」
ベットの近くにある椅子の上で、魔法書を読んでいたケミーナから声がかかる。
「何か久しぶりですね。このベット。」
そう、今イロアスが寝ているベットは、毎度イロアスが魔力枯渇で倒れた時に、ケミーナが運んできて寝かせていたベットだった。
しかし、最近はイロアスの魔力量が増えてきたので魔力枯渇を起こさなくなってきたのだ。
「そうだな、そう思うと随分と成長したな。」
急に褒められて、照れるイロアス。
「あ、ありがとうございます。」
イロアスが礼を言うと、ケミーナはにこりと笑って言った。
「そんな、お前にプレゼントがある。」
「プレゼント?それって、超高価で貴重なものですか?」
そう言えば、イロアスの誕生日は過ぎていたが、本人は魔法の修行で忘れていた。
「ああ、これの使い手はお前が相応しいと思ってな。」
そう言ってケミーナが渡してきたのは、立派な日本刀だった。
「これって、魔剣ですか?」
柄に刻まれた刻印を見つけて尋ねる。
魔剣とは、製造方法・製造場所が共に謎に包まれたもので、柄に魔力を流す事で刻まれた刻印が起動する仕組みになっている。しかし、詠唱符の技術と違って使い捨てではなく、魔力を流せばいくらでも魔法が発動出来る。発動する魔法は、刻まれた刻印によってさまざまな効果がある。
超高価で、市場には出回らない。たまに、貴族が所有している時があるが、大抵は国宝になっているか、王立騎士団や近衛兵が所持している。
「そうだ、よく分かったな。」
ケミーナが驚いたように言うのは、この魔剣が特異な形状だからだろう。
確かに、この魔剣は魔剣と言うよりも、魔刀の方が合っている気がする。
「まぁ、刻印がありますからね。」
柄の刻印を指差して言う。
「ん、私は刻印について教えてないぞ。」
疑問を抱いたケミーナが言う。確かに、ケミーナに心当たりはなかった。
「あ、前に書斎に入ったじゃないですか。その時に読んだ本に書いてあったんですよ。」
『あ、忘れてました。』とばかりに平然とそう言う。
「あー。あの時に、てか良く読めたな。」
それは、イロアスが勉強熱心すぎて、教えるのが面倒くさくなったケミーナが、『もう、詳しい事教えるの疲れたから好きな本読んで来ていいぞ。』と書斎を開放した時の話だった。娯楽性が皆無の難しい魔法書や魔法理論について書かれた本など、何やら難解な文字で長々と書かれた分厚い本しか無かったが、イロアスは楽しげに色々な本を手に取って閲覧していた。
「まぁ、難しい言い回しや専門単語が出てきましたが、それとなく理解出来ました。」
嬉しそうに言うイロアスに、『すげぇな、勉強が好きなやつなんてそういないぞ。』と言いたげに尊敬するように、しかし、異質な者を見るかのように視線を落とす。
「で、話が逸れたな。ともかく、その魔剣をお前にやるから上手く使いこなせよ。」
ケミーナはイロアスの手に魔剣を握らせる。
「その代わり、明日からは、マフォースに稽古をつけてもらうからな。」
ケミーナは、不敵な笑みと共に聞きなれない人名を出す。
「どなたでしょうか?マフォースさんとは?」
いつものように質問するイロアス。
「ああ、クスィフォ・アレスマキア・マフォースと言った方が良いか。」
マフォースと言うのはどうやら名字のようだった。
「クスィフォ!?[剣聖]の?あの、クスィフォ・アレスマキアですか!?」
驚きと興奮を隠せないイロアスが、大きな声で言う。
[剣聖]、その称号はメルティ―ア王国で最も剣の才能に優れ、かつ戦術家である者に贈られる称号だった。[剣聖]は、[大魔導師]と並んで王国最高の名誉であり栄誉だった。ちなみに、[剣聖]も、[大魔導師]と同じく1人しかなれない称号で、2人が参加する争いは絶対に負けないと言われている。そのため、一部では『戦の神=戦神』として崇められていた。
ところで、ケミーナの本名はケミーナ・アレスマキア・カリンである。アレスマキアとは『戦神』に与えられるミドルネームだった。
「ああ、そうだが。何だか私が正体を明かした時よりも驚いていないか?」
何だか不満そうに言うケミーナ。
まぁ、確かにケミーナの時よりも驚いていたが。
「あ、いえ、違いますよ。あの時は幻影魔法だと思って、困惑していたんですよ。」
必死に弁明するイロアス。まぁ、嘘はついていなかったが。
「まぁ、良いけどな。てか、あいつの本名はクスィフォ・マフォースだぞ。」
何故ミドルネームを?と疑問を抱くケミーナ。
「知ってますよ。けど、武の頂の方への敬意ですよ。」
イロアスの言う通り、アレスは戦の神の名前で、マキアは闘いという意味だった。
「じゃあ、私はどうなんだ?私もアレスマキアだぞ。」
もう1人の『戦神』も何故そう呼ばないのか?と率直な疑問をぶつける。
「師匠は師匠ですよ。そっちの方が呼びやすいし、弟子として当然でしょう。しかも、師匠って呼ぶ方が親密な感じで良いじゃないですか。」
ケミーナは、何だか言いくるめられた気がしたが、悪い気はしなかった。
実際に、毎回『ケミーナ・アレスマキア師匠!』とか、『ケミーナ・カリンさん』って呼ばれるよりは『師匠!』で片付くので良かったのだが。
「で、ともかく明日からはクスィフォと稽古で、私とは改造型詠唱符についての修行な。」
最近は、どんどんとイロアスが常人離れしている気がする。そもそも、[剣聖]と稽古しなくたってイロアスのレベルは、入学試験の剣術で点数が限界突破するくらいに高かった。
「はい。分かりました。」
しかも最近は、イロアスがすんなりと厳しい修行をうけてしまうのだ。
アレスは、ギリシャ神話の中のオリュンポス十二神の1神で、戦の神です。
クスィフォ・マフォースの名前の由来は、ギリシャ語の剣士「Ξιφομάχος(クスィフォマフォス)」からです。しかし、ケミーナの名前は適当なので、由来とかないです。イロアスは・・・・・