第7話 スキルが最強だったのと、魔法についての修行が終わりました。
どうも、ぽむむんです。
何だか、詠唱魔術師が面白くなって来ました。
〔ケミーナの魔法講座〕
「この小説中に出てくる単語について解説しよう。」
魔方陣
魔法の構成などを視認出来るように、図式化したもの。
大抵は、円の中に緻密な図形が描かれているが、短縮詠唱の場合は発動前に、術式となって少しの間見えるだけである。
術式
魔方陣に魔力を注ぎ、発動可能にしたもの。
「魔方陣を発動する。」と言うのに対して、術式の場合は「術式を展開する。」と言う。
多重術式
同じ魔法を同時に発動すること。多くは、術式を展開したものをいくつも並べた後に魔法を発動させる。
〈ファイヤ〉
火属性の基本魔法。火の玉を発射する。
他の属性の基本魔法に比べて、魔力消費が大きい代わりに、威力が高い。
〈ウォーター〉
水属性の基本魔法。水蒸気または、無から水を生成する。
無から水を生成する方が魔力消費が高い。
戦闘性能は低いが、有用な魔法。
〈ウインド〉
風属性の基本魔法。強めの風を起こす。
魔術師の技術や、魔力量に大きく左右される魔法。
熟練した魔術師なら、竜巻みたいな突風も起こせる。
〈ブロック〉
土属性の基本魔法。地面の土を隆起させたり、土の塊を空間に出す。
魔力消費が大きい上に、戦闘性能が低い。
しかし、多用途に使える。
〈スパーク〉
雷属性の基本魔法。電撃を放って、相手をしびれさせる。
魔力消費が大きい代わりに、戦闘性能が高い。
しかし、魔術師の技術が低いと、静電気程度の威力しか出ない。
〈マジックアロー〉
無属性の基本魔法。魔力消費が少なく、命中率が高い手頃な魔法。しかし、常人ではダメージが小さい。
「以上で、講座は修了だ。」
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◇ 魔法の練習をし続けながら詠唱符を書き続けて1年後
「師匠!出来ました。30枚書き終わりましたよ。」
ケミーナがなにやら難解な魔法書を読んでいる中、必死に魔法陣を描いていたイロアスが嬉しそうに声を上げながら、魔法陣の描かれた紙を掲げる。
「よし、終わったか。よくやった。」
読んでいた本を閉じて、満足したようにケミーナが頷くと優しくイロアスを褒める。
「じゃあ、スキルについて確認がてら使ってみるか。」
ケミーナは椅子から立ち上がり、イロアスに言う。
「スキルですか!?使いたいです。」
イロアスもすぐさま反応し、食いつく。
「ちょっと、ステータスプレートを開いてステータスからスキルを見せてくれ。」
「分かりました。・・・ステータスオープン。」
イロアスのステータスが詳細に展開される。
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イロアス・エスティアス 13歳
適正属性 火・水・土 魔力量 16200
⊿
ユニークスキル〈詠唱〉
詠唱しないと、スキル使用不能。
威力×3 魔力消費×3 命中率-300
⊿
ギフト 〈詠唱魔法強化〉
威力+100s% 魔力消費-20s% 命中率×s
獲得スキル
【チャージ】 【連撃】 【照準】 【時間効果倍増】
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魔力量も増え、スキルも1個追加されていた。
「16200か、もう笑うしかない数値だな。私の大魔導師という自身と誇りが失われていくよ。若いやつっていいな、伸びしろがあって。」
ケミーナがおばあちゃんみたいな台詞を言う。
しかし、世界一は更に成長を続けていた。もう、イロアス1人で1国の軍隊を倒せる程に。
「スキル内容についても見せてくれ。まぁ、見せたくなかったらいいけどな。私は他人のプライバシーを尊重する。」
またもや、異世界なのに現実っぽい単語が出てくる。
「ぷらいばしぃ?師匠はたまに変なことを言いますね。」
聞き取れない単語が出てきても、毎回 「いつか教えてやる。」とはぐらかされてきたイロアスは、もうそれについて質問しなくなってきた。
「それに、師匠なんだから見せたくない訳ないじゃないですか。むしろ見せて自慢したいですよ。大魔導師の自慢の弟子だって。」
胸を張って答えるイロアス。その姿にケミーナは、
「そうか、ありがとな。」
少しだけ恥ずかしがりながら言った。
「あれ、師匠。顔が赤くないですか?」
それに気付いたイロアスが、すかさず言う。
実際には、そんなに赤くなかったが。
「お?反抗期か?それとも思春期か?まぁ、師匠をなめている奴に修行は無しだな。」
いつも通りのケミーナに戻った後、準備していた魔法書を片すフリをしながら言う。
「あ、嘘です、冗談ですってばぁ。ほら、スキル内容見て下さい。」
ケミーナを引き留めながら、スキル欄をタップする。
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⊿ 【チャージ】
魔法陣が術式となった後、最後の魔法名を唱えるまでの間が、長ければ長いほど魔法の攻撃力が高くなり、効果が増す。
しかし、【チャージ】発動中は、攻撃や防御などは出来ない。
【チャージ】時間が長くなるにつれ、疲労が貯まる。
⊿ 【連撃】
連続して同じ魔法を使うとき、また、多重術式を展開するときに連続して使った回数分や多重術式を展開した数分、消費する魔力量が減少する。
ただし、連続して魔法を使う場合には、最大で前の魔法を発動してから1分以内とする。
⊿ 【照準】
マジックアローと同じ系統の魔法を使う場合において、その魔法が発動する時に自動で照準が狙っているものにセットされる。また発動された魔法は追尾式となり、必ず狙ったものに当たる。
ただし、追尾した距離が長いほど、消費魔力量が増加する。
⊿ 【時間効果倍増】
詠唱魔法を使用する時、自身が詠唱した時間の2倍の効果を魔法に付与する。この効果は、他のスキル・ユニークスキル・ギフトと重ねて使用出来る。
※ 全スキルは同時に発動可能。
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「う~ん、強すぎるな。お前単体で大陸が滅びそうだ。」
率直な感想をケミーナが言う。
確かに、超級レベルの魔法を多重術式で大量に展開しても、【連撃】の効果でさほど魔力を消費せずに発動出来るし、さらに【チャージ】の効果で威力倍増して広範囲に大きな被害が出せる。しかも、その魔法の詠唱が長ければ長いほど、【時間効果倍増】とギフト【詠唱魔法強化】の相乗効果で、威力が6倍以上にも膨れ上がる。
言わば、人類殺戮兵器みたいなものだった。いや、国家破壊兵器か?
「えーっと、使うのは控えましょうか。」
スキルの効果が恐ろしすぎるので、ステータスプレートの発動ボタンをOFFに切り替えるイロアス。
「どれか1つだけ試してみよう。」
好奇心に満ちた目をイロアスに向けるケミーナ。
ケミーナ自身もこれほどまでに強いスキルを見たことが無かったので、効果を確認したかったのだ。
「じゃあ、どれにしましょうか。」
どれもこれも危険なスキルだったが【照準】だけは、まだましだった。
しかし、このスキルは命中性能が悪いという大きな欠点を無くしてしまう恐ろしいものだった。
「【チャージ】を見てみたいのだが、良いか?」
ケミーナが、時間によっては一番危険なスキルをチョイスするケミーナ。
「良いですけど、何のスキルにします? あ、超級とか嫌ですよ。危険ですし。」
超級のレベルだと、【チャージ】なしでもイロアスの場合は危険だった。
「〈ファイヤ〉が妥当だろう。」
もう、イロアスが何十万発も放った基本魔法の名前を出す。
「そうですね、それで行きましょう。」
イロアスは家を出て、少し離れた大木に向かって詠唱を始める。
ちなみに、スキルは【チャージ】しかONにしていない。
「我、精霊に願う。我、神に祈る。我、力を望む。故に魔力を糧に炎の力を顕現させる。その炎は灼熱の力なり、、、、
ここで、【チャージ】が発動する。
常人には見えていないが、イロアスとケミーナは、イロアスの手の先に魔素が集まるのが見えていた。
その魔素が、渦を巻きながら大量に集まって来る。
十分に集まったと思ったイロアスは、魔法を発動した。
「・・・・〈ファイヤ〉」
【チャージ】の効果は絶大だった。
大木は根こそぎ無くなり、後ろの木々も見るも無惨な姿に焼け焦げていた。
「・・・よしOFFにしよう。」
イロアスはすぐに、ステータスプレートを開き、スキルの発動を【照準】以外すべてのスキルをOFFにした。
「確かにそうだな。それが賢明な判断だ。」
この威力を目の当たりしてもなお、使おうとする輩は、常識人ではないだろう。
イロアスがスキルの驚きから、抜けきれていないときケミーナがさらに驚きの発言をする。
「じゃあ、魔法についての修行は終わりな。」
・・・・・数拍置いたあと、
「へ?!」
「……冗談ですよね?」
その言い方には、冗談であって欲しいという願望が見えた。
「いや、至って真面目だが。」
訳が分からないといった風に、呆けた顔になるイロアス。
イロアスはそのまま硬直してしまった。
「お~い。起きろ、固まってんじゃない。」
ペチペチとイロアスの頬をたたくケミーナ。
それでもイロアスは起きません。
「だから、起きろつってんだろ。」
ボコッと持っていた魔法書でイロアスの頭を殴るケミーナ。
この光景を見るのも、数回目だった。
「痛っ。じゃあ、これから何をするんですか?」
我に返ったイロアスが、勢いよく尋ねる。
「剣術だな。私もそれなりに強いぞ。」
確かに、ケミーナの場合は身体能力強化魔法を自分にかけてから、【創造】で剣を創って戦っていたため、それなりの剣術は身に付いていた。
まぁ、今では広範囲殲滅魔法で敵や魔物を全滅させるえげつない戦い方か、魔力消費の少ない魔法を無限と思われるほど連発して、相手の戦力を大幅に削る戦い方をしているが。
「剣術ですか?魔術師なのに。」
対するイロアスは、不満げな声を漏らした。
まぁ、実際にイロアスの気持ち的にも、全身を使ってする剣術は、魔法を発動する事よりも疲れるので嫌だったのだろう。
「別に、魔術師でも剣は使うぞ。魔法剣士ってのも最近は人気だ。」
確かに、王都近くでは短縮詠唱を使いながら、剣術で魔物を倒す魔法剣士というスタイルが人気を集めていた。
「僕は、もっと魔法を学びたいんですが。」
好奇心旺盛なイロアスにしては、当然の反応だった。
「しかし、もう私が知る限りの知恵は教えたはずだ。しかも、魔力量なんて私を大幅に上回っているし。」
最後の方は、残念そうに、しかし誇らしげに言ったケミーナ。
自身の初めての愛弟子が、世界最強なのだから。
「ですが、魔法学は生涯を尽くして学ぶものです。」
なかなか勉強熱心なイロアスは、いつも以上に熱く語っていた。
「そうだな、だから、王立魔法騎士養成学園に入学届を出しておいた。」
これまた突然に言われたイロアスは、驚きを隠せなかった。
「お前は、幼い頃から友人と呼べる関係の人がいなかっただろう。だから、そこで魔法について学びつつ青春を謳歌してこい。」
「青春を謳歌ですか、師匠が珍しく難しい言葉を使いますね。」
バカにした様子は無く、本当に珍しく思っているイロアス。
「ああ、本来の子供ならば、友人と一緒に魔法の練習をしたり、両親に甘えたりとかしながら人間性を育むはずだったからな。」
確かに、その通りだ。毎日魔法を放って、魔力枯渇を起こしたら魔力回復薬で無理やり回復して、また魔法を放っての繰り返しの日々は、本来の生活をかけ離れていた。
「いえいえ、師匠との生活も楽しかったですよ。」
大魔導師による魔法の修行なんて、普通は望んでも叶うものではないのだ。
「そうか、そう言ってもらえると救われるな。まぁ、それはそうと学園の開始まであと1年ぐらいだから、それまでに剣術も習得しとけよ。」
どうしてでも、イロアスに剣術を習得させたいケミーナ。
何故そこまでこだわるのだろうか。
「何で剣術を?」
流石に疑問を感じたのか、尋ねるイロアス。
「入学試験の内容に剣術があるからな。ちなみに他には、魔法実演・魔法学についてのテスト・教師との試験戦闘があるな。」
ちなみに、ケミーナは王立魔法騎士養成学園に入学していない。
全て独学で魔法の知識を身に付けて、独自の魔法理論が正しい事を証明してしまった天才児、いや神童だった。
「え!テストに向けての勉強はしなきゃいけないじゃないですか!」
慌てて飛び上がるイロアス。
「いや、あんな幼稚なレベルの問題なんて、左手で書いても満点が取れるぜ。」
テストをバカにしたように言うケミーナ。
「そんなの、やってみないと分からないじゃないですか。」
イロアスの気持ち的には、
「師匠は天才だから、簡単だと思えるんですよ。」
と言いたいらしい。
しかし、
「じゃあ、第一問 6大属性の基本魔法を答えよ。」
いきなり、問題を出してくるケミーナ。
「え、〈ファイヤ〉〈ウォーター〉〈ウインド〉〈ブロック〉〈スパーク〉、そして〈マジックアロー〉。それぞれ火・水・風・土・雷・無属性です。」
イロアスにとって基礎中の基礎の基礎知識を答える。
「はい、大正解。じゃあ、第二問 無詠唱魔法の実用化が難しい理由について、述べなさい。」
ケミーナは、イロアスが逆に答えられなかったら、驚いているところだった。
「えーっと、それは、魔法の概念をイメージだけで補うのが難しいからです。短縮詠唱や、詠唱魔法は、魔法名や詠唱に魔法発動の補助効果がついていますが、無詠唱魔法には、それが無いからです。」
教えられた事を忘れずに、述べるイロアス。
「はい、200点満点の大正解。」
点数が、100点限界突破しているが、イロアスは突っ込まなかった。
「じゃあ、他は飛ばして最後の超難関問題これが解けたら主席合格間違いなし。ここに適切な魔方陣を描きなさい。もし、この魔法名が分かれば答えなさい。」
そう言って、一部分だけ空白になっているマジックアローの魔方陣が描かれた紙を渡すケミーナ。
「これって、マジックアローですよね?」
こんな簡単なのが、難関問題なの?と不安げにケミーナを見るイロアス。
「ああ、それが答えられたら70点だ。」
魔方陣を見て、魔法名を答えるだけで何故70点も取れるのか理解出来ないイロアス。
しかし、魔方陣を描く手は止まらない。
「はい、出来ました。」
完成した魔方陣をケミーナに出す。
「はい、600満点。だから、合計で100点満点中970点で主席合格確定だな。」
何故か、800点以上も点数が限界突破していた。
「なんか、間違ってませんか?計算方法が。」
そもそも、満点をオーバーする時点でおかしい。
「いや、至って真面目に合っている。つまり、こんぐらいのレベルだよ。入学試験 魔法学についてのテストは。」
ちなみに、最後の問題は解けないのを前提で作られている。
まぁ、短縮詠唱が広まる前には、当たり前に解けたが。
今の魔法学のレベルは、短縮詠唱と言う便利なものによって、少し衰退していた。
「へー、そうなんですか。」
何だか信じられない話だけど、ケミーナが嘘をつく人じゃないと分かっているイロアスは、曖昧な返事だった。
「ということで、剣術な。ちなみに、私を倒せたら褒美として超高価で貴重なものをやろう。これは、嘘ではないぞ。」
嬉しそうに言うケミーナ。超高価で貴重なものとは、何なのだろうか。
「それって、何ですか?」
不思議がって聞くイロアス。
「勝ってからのお楽しみだよ。ただ、絶対に貰って嬉しいものだ。お前が持つべきものだと私は思っている。」
そう言われると、イロアスの好奇心がくすぐられ、
「よし、剣術を教えて下さい!」
俄然気合いが入っていた。
色々とスキルを出してすみません。
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