第1話 なんだよ、このスキルとギフト
どうも、ぽむむんです。
異世界ファンタジー系を書くのは、初めてです。
これから、よろしくお願いします。
「「いってらっしゃい。」」
両親に見送られながら、少年は出発した。
イロアス 12歳 今日は、初めてのステータス確認の日である。
近くの協会まで、駆け足で向かう。新緑の息吹に包まれた森がそよそよと揺られている。
「強いユニークスキルが来て欲しいな!」
イロアスの希望に満ちた声が、蒼穹の彼方にこだました。
◇
「はい、次の子。ちゃんと並んでね。」
だんだんと列が進み、協会のシスターさんが見えてくる。同年代の子供たちが多くいるが、イロアスに友達と呼べる存在はいなかった。
(ああ、もうすぐだ!ギフトかユニークスキル来ないかな?)
祈るように、目をギュッと閉じるイロアス。
ユニークスキルとは、普通の人は習得出来ない、その人専用のスキルの事で、特殊な能力をもった場合が多い。
ギフトの方は、神の恩恵とも呼ばれ、ステータスやスキルを強化するものや、特定の特殊属性(聖属性や闇属性、氷属性、炎属性など)の強化など補助系統の能力である。
ちなみに、ユニークスキルは1000人に1人、ギフトは700人に1人ぐらいの割合で授かれる、貴重なものだった。
「じゃあ、次は君だね。この魔晶石に手を置いて。」
教会のシスターさんがそう促す。魔晶石は透明な結晶で、中心に淡い蒼色が輝いている。
「はい、分かりました・・・こうですか?」
イロアスは、恐る恐る手を置いた。
魔晶石は、徐々に反応し始め小刻みに揺れつつ、光を放ち始める。
魔晶石は赤、蒼、茶色の3色に光輝いた。
「えーっと、君のステータスは・・・」
シスターさんは魔晶石の下に置かれたステータスプレートを見る。
「火・水・土属性が適正だね。3属性かぁ、中々多いね。えーっと、あとは・・・・!」
「え!ギフトとユニークスキル両方持ちっ!」
シスターさんは、驚きと隠せないまま甲高い声で言った。
(え、本当に!)
周りがざわざわと騒がしくなる。
そりゃそうだ。両方持ちなんて、勇者ぐらいしか見たことない。というか、両方持ちだから、勇者になれるのだけれど。
ちなみに、ユニークスキルとギフトの両方を授かった人は、〔両方持ち〕と呼ばれる。両方持ちになれる確率は700000人中に1人ぐらい、つまり約70万分の1の確率でしか現れないのだ。
そのため両方持ちは、国から大きな支援を受けて勇者と言う称号を賜る。勇者となった人は、国の安全のために魔物と戦ったり、魔王討伐に向かったりする。
「スキル内容は・・・・詠唱?」
バグでもあるんじゃないかと、訝しげにステータスプレートを見るシスターさん。
しかし、詠唱というユニークスキルが出た事も無ければ、ステータスプレートに間違いがあった事もない。
(なんだそりゃ。3世紀前の話か?)
そう、イロアスの言うとおり、詠唱を使う魔法はとっくに廃れていて、今は短縮詠唱型が主流となっている。
詠唱魔法は長ったらしい呪文を詠唱しなければならないのに対して、短縮詠唱は魔法名を唱えるだけで発動出来る。実践的なのがどちらかは、明白だった。
「じゃ、じゃあ。ギフトは・・・」
取り直してステータスプレートをのぞき込む。
イロアスは、変なギフトが来ないでくれと願っていた。
「詠唱魔法強化?何それ?」
シスターさんが間の抜けた声を出す。
(ほんとだよ、何それ?)
でも、一応新種のギフトだった。しかし、使えないユニークスキルに、それを強化するギフトって。いわば、要らないモノに変なオプションが付いたようなものだった。
当然、周囲の反応も。
「ユニークスキルが詠唱ってなんだよ。」
「これじゃ、勇者なんか無理だな。」
「あー可哀想。」
イロアスを蔑むような笑いが起こる。イロアスを見ていた好奇心をはらんだ瞳は、今では侮蔑や哀れみの感情しか示していなかった。
(くそ、見てろよ。お前ら。)
羞恥心に顔が歪むイロアス。
その場の雰囲気に居たたまれなくなって。イロアスは駆け出していた。
「ちょっと、ステータスプレート忘れているよー。」
シスターさんの声も耳に入らなかった。ただただ、悔しかった。
◇
「どうだったか、イロアス。」
我が子の帰りを出迎えるイロアスの父。
「最悪だったよ。父さん。」
イロアスは、浮かれない顔のまま、壁に寄りかかった。
「どうした、適正無しか?」
「いや、3属性あったよ。」
普通の人が1.2属性で30人に1人くらいの確率で3属性を持つ人が現れる。イロアスの両親共に2属性だった。
「多いじゃねぇか。何が最悪なんだよ。」
「両方持ちだったんだよ。」
その瞬間、父が固まった。我が子が勇者になるとは思わなかったのだろう。勇者とは、絶対的な強さを持った勇猛な戦士だからだ。
「ユニークスキル〈詠唱〉だってさ。」
そう言ったとたん。父が呆けたような顔をする。
「がはははっ。おもしれぇな。」
「全然、面白くないよ。しかも、ギフトが〈詠唱強化〉だって。」
「がはははっ。くっくっくっ。なんだそりゃ。」
さらに大きく笑い始める。
「笑うなよ、泣きたくなるだろ。」
「でも、まだわからないだろ。もしかしたら、強いかもな。」
親指を突き立ててイロアスの背中を叩く。
「そうだといいけれどね。」
何かする気力もなく、部屋へと戻った。
まだその時は、知らなかった。
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