有能かよ!?
ふぅ、危なかったぜ……。
あやうくダールの奴から掘られるところだったが、アークのおかげで何とか危機を乗り越えることに成功した。途中から、嫌すぎて精神年齢45歳にも関わらずギャン泣きしてしまうという醜態を晒してしまったが。
でもしょうがねぇじゃん。俺、ホモじゃねぇし。
考えてもみろよ? いきなり知り合いの男連中から抑え込まれて、「お前を犯す」みたいなことを宣言されたら誰だって泣き喚くって。
ホントガチで怖かったわ。
あやうく女の子にされちまうところだったじゃねぇか……今は女か、ガハハ!
「無事で……本当に、良かった」
憂い気な顔でそんな事言ってくるアークは、凄まじいまでのイケメンオーラを発していた。イケメンすぎる……どうなってんだ? 助けてもらったにも関わらずイライラしてきた。
いや、流石にダメだろ!!
見た目的にはクソザコ村娘かも知れないが、心は立派なベテラン社会人なんだ。
世話になったらキチンと礼を言うのは社会のマナーだ‼
だけど、なんか……その、な? 普段キツイ態度を取ってる相手に、素直にお礼を言うのは難易度が高いと言うか。言いにくい雰囲気あるよな。
おっかしいなぁ、俺はツンデレかっつーの。
ちょっと違うか、デレとかねーしな! ……自分で気持ちわりぃこと言ってんなよ。おら、男ならさっさと言う事は言わねぇといかんだろ。
「ア、ア、ア―ク……その」
コミュ二ケーション苦手か!?
なんか口が上手く動かんのよ。どもったのが恥ずかしくて、今の俺はきっと滅茶苦茶顔が赤い。恥ずかしさが恥ずかしさを呼んでやがる!
わけわかんねーなもう。
俺ってこんなに礼を言うのが苦手な人間だったっけ。
えっ、ひょっとして割と酷い人間だったのか? 朝に挨拶言えない系の奴か?
だあああ、めんどくせぇことはもう考えんな‼ とにかく礼だ、礼‼
「……助けてくれて、ありがとな」
「エリス……君は」
ぼそりと、めっちゃ小さな声で礼を言った。
貞操を救ってもらって、この素っ気ない言葉もどうよ?
しかし、これが俺の精一杯なんだ。許せアーク。
お前が俺の嫌いなイケメンだったのが悪い!
そういうことにしといてくれ!!
「あっ、でもな! あそこから俺にも逆転する手はあったと言うか、やられっぱなしに見えたかもしれないけど実は俺には海よりも深い作戦があってさ!?」
照れ隠しにありもしない作戦を熱く語る。
なんつーか、変な見栄もあったんだと思うわ。普段偉そうなことをアークに言ってる癖に、あんな情けない姿を見られた事が嫌だった。
「エリス」
ありもしない言い訳を重ねていると、真剣な表情でアークの奴から見つめられる。もしかして……嘘だとバレたか!?
「ひゃうっ! 嘘じゃねぇよ!? ホントに、切り抜ける手があってだな」
「君に、大事な話があるんだ」
「俺の身体は実はサイボーグで……って、ん? 話?」
慌てすぎてて良く聞いてなかったが、何やら重要そうな雰囲気を纏っているじゃねぇか。つか、さっきから雰囲気で判断してんな俺。空気を読む達人かよ。
「私のパートナーとして、共に生きてくれないか」
「えっ? アークの……相棒って……それって」
思わず頭の中に浮かんだのは前世のドラマでやっていた眼鏡をかけた皮肉屋の相棒。え、なんだよ。俺達はいつの間にツーカーの仲になったんだ?
だけど、丁度冒険者として旅立ちたいと思っていたところにこの提案は……非常に魅力的だった。何のコネもなく冒険者になるよりも、アークの相棒となってデビューした方が色々とやりやすい。
社会人としてのノウハウを今こそ活かす時が来たんじゃねーの!?
転生者特典である知識がついに解禁されたか。
あ、でも。
「俺、カイトの奴と約束してて」
「君が勇者を待っている事は知っている。……好き合う仲だという事も。だけど、そんなの関係ない。私にはどうしても君が必要なんだ」
「な、なんでそこまで? 言っちゃなんだが俺なんて足手まといで……」
「それは違う。君が傍に居るだけで、私は何倍も強くなれるんだ。君が傍に居るだけで、それだけで私は……どこまでも頑張れる」
「えっ……!?」
カイトの事を話す内に、衝撃の事実が明らかになる。
なんと俺――チートの持ち主だったみてぇだ。
傍に居るだけで何倍も強くなるって、それ最強のバッファーじゃねぇか!!
「お前役立たずだから、パーティ追放するわ」って追放した後価値に気付いて後悔するパティーンの主人公じゃねぇか!! やーいざまぁみろ! 俺のおかげでお前ら勝ててたんだぞ!!
やはりな……転生者である俺が、チートを持ってないはずがなかったわけだ。
いや、待てよ。ひょっとしてさっきダールに手も足も出なかったのも……村の仲間としてダールを意識していたから無意識に奴を強化してしまっていたのかも知れねぇ。
なんてことだ、自分の能力でピンチを招いていたなんて。
間抜けな主人公もいたもんだ!
しかし、これでアークの奴がこんなに俺に執着するのも納得したぜ。
冒険者からしてみれば俺の能力は喉から手が出るほど欲しいモノだろうしな。
クックック、成り上がれる気配がする。
無能だと思っていた俺――実は超有能だった!!!
なお