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35 覚醒する大きなお友達 II

地上10数階はあろうかという・・・大きなビル。

その屋上で、一人の男が黄昏ていた。

転落防止の柵に身をもたれかからせ、ぼんやりと空の彼方を見つめている。


・・・しかしその時、突然柵はメキメキとへし折れた。錆び付き老朽化したのだろう。


「・・・!」


男は声も上げずに真っ逆さまに落下していく。

だが、夕焼け空から現れた赤い閃光がその身を受け止めた。

・・・男性のピンチにレッドが参上したのだ。


「大丈夫ですか!?危ない所でしたね。・・・でもご心配無く、我々はいつでも見守っています!!」

「あ、ああ・・・これは・・・。ありがとうございます。」


レッドはそのまま重力に逆らって急上昇、男をビルの上に戻した。


礼を言う男性にうなづくと、レッドはそれを見ていたヴァルマルスの方へ微笑んだ。


「フフフ、今日はこの辺にしておきましょうかヴァルマルスさん。最も我々の仕事に休息は無い、何かあれば深夜にでも飛び出して行かねばなりませんがね。明日から早速使命に励んで頂けますか?」

「・・・ああ。お前達の言う、正義とやらは十分に理解出来た。」

「おお!!これはなんと心強い!!・・・ではよろしくお願いしますよヴァルマルスさん。正義の名の元にこの世界を平和にしていこうではありませんか!!」


ご機嫌にそう言い、レッドは空へと飛び立っていった。

その姿が星と消えるのを見送ると・・・先ほど助けられた男はゆっくりと口を開いた。


「風のように現れ風のように去っていく・・・立派な方々ですね。貴方もこれからナイツに加入される予定なのでしょう?」

「・・・。」


しかし何も答えずヴァルマルスは暫く黙っていた。

そして表情も変えず男に問いを返す。


「・・・お前、本当は死のうとしていたんだろう。」

「・・・!え、ええ・・・よく分かりましたね。そうです、先程のは偶然ですが仮にあのアクシデントが無くとも私は宙へと身を投げていたでしょう。・・・そして彼等に助け出されていた。」


男は息を吐くと、暗くなり出す空を見つめた。


「先日、妻が事故にあったんです。医者もナイツの方々も手を尽くしてくれたのですが・・・妻は助からなかった。」

「・・・。」

「生きている以上どちらかが先に死ぬのは避けられぬ定め、勿論そんな事は分かっています。・・・でも私には耐えられなかった!私にとって彼女は全てだった。彼女のいない人生など死ぬ事よりずっと辛い・・・!」

「それで自ら命を絶とうと?」

「はい。・・・しかしナイツはそれを認めない。まだ生きられる命が消えるのを放って置くのは正義に反する。もし私が自ら命を絶とうとしてるのを知れば、彼らは私を捕らえ牢にでも入れて更生させるでしょう。」


男はグッと拳を握った。

その目に涙を貯めながら。


「ええ、それはきっと正しい事です・・・分かっています。多少やり過ぎな事もありますが、彼等は根本的には良い方々だ。ナイツの行動は間違ってはいないでしょう。・・・でも、でも・・・!生きる方が幸せではない事もある・・・!必ずしも正義が正しいとは限らない・・・!」

「・・・。」


するとヴァルマルスは、懐から何かを取り出して男に向けた。


・・・じゃっきっ!!

それはナイツに支給される銃だった。


「・・・っ!?」

「死にたいんだろう?なら俺が殺してやる。・・・生憎俺はナイツとやらには明日から本加入なんだ。今日は奴等の言う正義の理念に反しても文句を言われる筋合いは無い。」

「え・・・し、しかしそんな事をしたら貴方が・・・!!人殺しなんて場合によっては・・・。」

「ああ、きっと奴等は俺の事を殺してくれるだろうな。」

「・・・!」


ヴァルマルスのその言葉、そしてその寂しげな瞳を見て・・・動揺していた様子だった男は深く目を瞑った。


「そうか・・・何故貴方が私の真意を見抜いたのか分かった。同じなのですね、貴方も。」

「・・・。」

「私がこんな事を言うのもおかしいかもしれませんが・・・でも本当に貴方はそれでいいんですか?」

「ああ、これでいい・・・気に病む必要は無い。奴等と同じように、俺の場合はきっとこれが正義なんだ。・・・ついでに奴等に少しばかり痛い目を見せてやるさ、むやみに正義を振るうのが嫌になる程度にな。」


あくまで笑ってみせるヴァルマルス。

男はその瞳の奥底にあるものを覗いた様な気がした。


(ああ、そうか・・・この人は本当は私よりももっとずっと・・・。)


少ししてつられて顔を緩めると、男は言った。


「分かりました、恩に切ります。・・・結局正義なんてその人次第、本当は正解も間違いも無いのかもしれませんね。」

「・・・。そうかもな。」

「ありがとう・・・寂しげな目をしたお方。でも是非はともかく、貴方の正義で私は救われました。それだけは知って欲しいのです。・・・さようなら。」



ビービーとうるさい腕輪をもぎ取り破壊すると、ヴァルマルスは銃の引き金を弾いた。

どんっ・・・!



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