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35 覚醒する大きなお友達

新たな世界へと降り立ったヴァルマルスは、いきなり大きな恐竜の様な生物に襲われていた。


「ガアアアアッ!!」


二足歩行に、龍を思わせる骨格。そして獲物を離さぬよう曲がった牙で、獰猛に敵を狙う強靭な生物。

この世界に来たばかりで何の武器も無いヴァルマルスは素手でそれに対抗するしかない。


しかし彼は素早く噛み付きを回避すると、その体格差を活かして足元に潜り込んだ。

そして内側から強烈な鉄拳を左足へぶち込む。


「グゴォっ・・・!?」


堪らず左足を上げ、苦痛に顔を歪める生物。

その間にヴァルマルスは右足側へ回り込み、鎌のような足払いを仕掛けた。


その巨躯がよろめき・・・倒れる。

体の大きな生物ほど、一度体勢を崩せば立ち上がるのは困難だ。


そしてヴァルマルスは地に落ちた隙だらけの脳天へと容赦無くかかと落とし・・・体に似合わぬ、敵の小さな脳を叩き潰した。


「・・・。」


・・・その時だ。

突然カラフルで派手な服装に身を包んだ四人の男がヴァルマルスの後ろに降り立った。

彼らの背には小型のブースターの様な物が付いている。どうやらこれで飛んできたらしい。

その中の一人が一歩前に出る。


「いやいや、いやいや!デスキングサウルスの出現を感知して出撃してみれば・・・素晴らしい!!見ましたよ、これをやったのは貴方ですね!?」

「・・・ああ。」


やや警戒したようにヴァルマルスが答えると、男はガッと彼の手を掴んだ。


「実に素晴らしい!!生身でアレを倒すとは何という才能だ。ぜひ我等『ディードバルナイツ』に加入して頂きたい。」

「ディードバル・・・何だそれは?」

「ええ、それはこの世界に栄えようという悪を殲滅し・・・人々に幸福をもたらす戦士の名です。紹介が遅れましたね、私はマスターレッド。全300人のディードバルナイツを率いるリーダーをしています。ささ、貴方も我等と共に人々に幸福をもたらしましょう。」

「・・・。」


見た目や何かの胡散臭さは否めないが、人々に幸福をもたらすという言葉と強い意志に嘘は無さそうだ。

ヴァルマルスは取り敢えず加入に了承した。


「よし、早速貴方には『ジャッジメントブラック』の名を授けましょう!!」

「それは、まあ・・・おいおいな。」




ドクターイエローと呼ばれる男からブースターとナイツの証である腕輪・・・それから暴徒鎮圧用の銃を渡され、ヴァルマルスは空に出た。ユニフォームはすぐには仕立てあげられないらしい。

それほど苦労せずにヴァルマルスがブースターを使いこなすと、レッドは拍手で彼を讃えた。


「ひとまず今日は一日我々の仕事を見学していてください・・・早速行きますよ・・・はあっ!」


ブースターからのジェット噴射で、彼らは空に出た。




ごうごうと燃え盛る一つの民家。・・・火事だ。

その中にはまだ逃げ遅れた老婆が残っていた。

娘である女性がどうする事も出来ずその前で震えている。


「ああ、お母さん・・・!!」

「大丈夫、今消防団が突入した。すぐに救出されるはずだ!」


周囲の者達は女性を励ますが、彼女に落ち着く様子は無い。

その瞬間・・・空から大声が響いた。


「・・・いいや、それより私の方が早ぁぁい!!」


叫び声と共に一つの流星が民家に飛び込む。

そしてものの数秒でそれは天井をぶち抜きそこから出て来た。


現れたのは・・・レッドだ。その手にしっかりと老婆を抱えている。

彼はゆっくりと地に降り女性に老婆を渡した。


「お、お母さん・・・!ありがとう、ありがとうございます・・・!」

「はっはっは、なあにこれが我々の使命ですから!」


感激の声を上げる女性に、レッドは誇らしげに胸を張っている。

・・・少しして、突入した消防団が困惑しながら出てくる。老婆が救出されたと知らなかったのだろう、必要以上に長く留まり咳をしている者もいた。


「・・・。」


ヴァルマルスは宙に留まりながらそれをじっと見ていた。





難しい顔をしながら懸命に地図とにらめっこする少年。その手にはガッシリと財布が握られている。


だが次の瞬間、一筋の突風が彼を拾い上げた。

ブースター全開のレッドだ。


「偉いぞ少年、買い物ならきっとこの先の商店街だろう。どれ、私が連れていってやるぞ!!」


目的地まで少年を抱えひとっ飛びすると、レッドは少年を降ろした。


「す、すげーっ!!ありがとうディードバルナイツ!!」


感動で目を輝かせる少年に手を振ると、レッドはヴァルマルスの方へと飛んできた。


「我々はどんな小さな問題すら見逃さないのです、困っている者がいれば、例え犬猫でさえ手を差し伸べる・・・それこそが正しく真の正義の姿でしょう!!」

「・・・。」


少年の遥か後方で、一人の女性が彼の様子を伺っていた。

子に初めてのお使いを任せたのだろう、思いもよらぬ形でそれが達成された事に彼女は複雑な表情をしている。


高らかに笑うレッドの横で、ヴァルマルスはそれをじっと見ていた。




ごおお、と音を立てながらヴァルマルスはレッドと空を飛ぶ。


「ヴァルマルスさん、如何でしたか?我々の名誉ある仕事内容・・・理解して頂けましたか?」

「ああ・・・そうだな、大体分かった。ところでお前達はどうやって事件を感知しているんだ?」

「ふふふ、それはこの腕輪ですよ。」


すっ・・・っとレッドはナイツの証たる腕輪を見せた。


「世界70億のカメラでこの世界を監視して事件を感知し、その際にはこの腕輪が光るっていう寸法です。・・・勿論プライバシーの侵害だとカメラの設置に反対する方もいますが、ゆくゆくは全家庭の風呂やトイレにも設置したいと思っています。事件は何処で起きるか分かりませんからね。」

「・・・。」


ピコーン!

腕輪が点滅する。


「おっ、そう言ってる間にまた事件だ。さあ参りましょう!!」


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