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47 無限転生VS不老不死

新たな世界へと降り立つヴァルマルス。

彼はここへ来てすぐ、妙な話を耳にした。

この世界には・・・『不老不死』の者がいると。




大きな街の中心に、高くそびえる城。

不老不死と呼ばれる男『フェンデル』はこの国で王を補佐する大臣を務めているという。


「フェンデル様は千の時を変わらぬ姿で生きたと言われ、代々のこの国の王を導き続けているそうです。」


案内役の男は説明しながら歩いた。

ヴァルマルスは表情を変えず問い掛ける。


「言われ・・・か。お前自体はそれを確認した訳では無いのか?」

「え?ええ。何しろ我々はあの方と違い永久の時を生きられる訳ではありませんので・・・。少なくとも私が赴任した十年程前からは変わりの無いお若いお姿であられますが・・・。」

「それもそうだな・・・まあ、何にせよ自らの目で確かめてみるのが良さそうだ。」


そうこうしてる間に二人は目的地に辿り着いた。

身の丈を遥かに超える扉・・・大臣の部屋にしては相当に大きそうだ。


案内役の男はそこまでヴァルマルスを連れてくると、一礼して去っていった。


(素性の知れぬ訪問者を護衛も無しに要人の前へと引き出すか・・・フェンデルという男は相当実力に定評のあるのか、あるいは本当に・・・。)


そんな事を考えながらヴァルマルスは部屋の扉を開ける。

そこには大きな部屋にぽつりと一人の男。

なるほど、見た目は二十そこらに見える。


「おや、これは珍しく見慣れぬ方だ。お初にお目にかかります・・・私はフェンデル・ネーケミットです。」

「・・・俺はヴァルマルス、不死とやらに興味があって来た。」


物腰穏やかに微笑みを浮かべるフェンデル。

すると・・・いきなりヴァルマルスは抜刀し、彼に襲い掛かった。


ぶおん!

剣が空を切る。

フェンデルはそれ程驚いた様子も無く飛び退き回避した。・・・ただ避けるだけで無く、壁に立て掛けられた自身の剣の方へと。


「おやおや、挨拶もそこそこに攻撃とは随分と物騒なお客様のようだ。」


微笑みを絶やさず剣を手にするフェンデル。

ヴァルマルスは無言で再び攻撃を仕掛ける。


右から左から・・・驚く様な速度で繰り出される嵐のような剣撃。

しかしフェンデルはそれを全て受け止め防いだ。


「・・・!」


いくつもの世界を渡ってきたヴァルマルスは百戦錬磨、戦いの腕はかなりのものだ。そして此度の彼の肉体年齢は15歳程、肉体的にもかなり成熟しているだろう。

それでもフェンデルはそれと五角以上の力を見せた。

確かに千の時を生きたと言われるだけの力がある様に思える。


こうなると、戦いの行方は本人の力量以外に左右されてくる。

フェンデルの王家に伝わる由緒正しき剣に対し、ヴァルマルスのものは来る前に街で買ってきたナマクラであった。


がきぃい!

鈍い音を立てて、ヴァルマルスの剣はへし折れた。


「ここまでですね・・・貴方ほどの手練、出来ることならもっときちんとした形でお手合わせしたかった。」


勝ちを確信するフェンデル。

・・・しかし、ヴァルマルスはむしろこの一瞬の油断が生まれる瞬間を狙っていた。


折れた剣の柄でフェンデルの腕を殴りつけ、敵の剣を落とさせる。

だがフェンデルも負けてはいない。瞬時にヴァルマルスを蹴り飛ばし大きく距離を開けた。

剣を拾う時間さえあれば、また戦況は大きく自分に傾くのだ。


けれども・・・そうはならなかった。

ヴァルマルスが吹っ飛ばされながらも懐から取り出したあるものによって戦いは決着した。


拳銃だ。

剣と一緒にこれも買っておいたのだろう。


剣を拾い上げ防御する間も無い。

フェンデルは一瞬動揺した顔を見せたが・・・すぐに元の微笑みを取り戻した。

これから訪れるであろう事態を楽しむかのような笑みを。


(ああ・・・この感覚。懐かしい・・・。)


どぐん・・・!

ヴァルマルスの放った銃弾は、フェンデルの脳天を貫いた。

どさりと音を立てその体は後ろに倒れる。




・・・だが、ものの五秒程でフェンデルは立ち上がった。

脳天の傷は既に塞がっていた。

つまり、生き返ったのだ。


「フフフ・・・慣れたつもりでも、久しぶりだとすこしヒヤリとするものですね。」


相変わらず、彼は作りものの様な笑みを浮かべていた。

その様子を確認すると、ヴァルマルスはまた銃を懐にしまった。


「・・・済まなかったな。どうしても自らの目で確かめたかったんだ・・・お前が本当に不死なのか。そして確信した。普通の人間ならば、死が目前に迫った時にあんな表情はしない。」

「フフフ・・・分かったならば本当に発砲しなくてもよかったでしょう。これでも痛みはなくはないんですよ?・・・いえ、冗談です。それで?不死だったら・・・何かあるんでしょう?」


フェンデルが問い掛けると、ヴァルマルスはゆっくりうなづいた。


「ああ。少し話を聞いて欲しかったんだ。ある意味では似た境遇である、お前にな。」

「ほう、似た境遇ですか。」

「・・・俺は、何度死のうとも蘇ってしまうんだ。別の世界でな。」


「・・・ふむ。」


楽しそうに、フェンデルは口を緩めた。


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