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桜ヶ丘高校生徒会役員  作者: 嫁葉羽華流
秋の章 ~がくせいのほんぶん。~
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八十三日目、逃走、そして再び。

くっ…!


私は間一髪、竜介の太刀筋を見切って避けることができた。わずかに切られた髪が風に乗る。

竜介は体勢を立て直し、青眼に構えた。


なぜ…竜介が…?


私はそう思いつつも箒を構えた。これで勝てることはできないだろうが、それでも無いよりかはましだ。

バール・・・は絶対に使わない…私はそう決めたんだ。

そして私は箒を槍を持つようにして竜介と対峙する。

じりじりと竜介との距離を詰めていく。とにかく、相手を気絶させなければ…。

そうやって考えていたら竜介が刀を急に下段におとして突進してきた!


早いっ…!


私は急いで相手を迎え撃つ為、箒の柄を自分の前へと立てた。

が、それで竜介の勢いや、刃が止まるわけではない。刀は私がたてた箒をいとも簡単に切ってしまった。

刀が私の腕を軽くかすって、私の服を、腕を軽く斬った。

私は後退して林の中へと逃げ込んだ。

斬られた箇所は少し焼けるような痛みがある。が、走るためには支障はない。

そのまま林の中を突っ切る。

後ろからは同じく走ってくる音がする。

ならば…どこかで迎え撃たなくては…。

そう思って私は背中の方にあるバールへと手を伸ばそうと


…!? 何を考えているんだ!? 私は!? 私はもう、人は傷つけない! そう決めたんだ! なのに…どうしてそんなことを!?


私は頭を振って伸ばそうとした手を引っ込めた。

すると、


―――決まってるじゃないか。秋原。

「!?」


頭の中から声が聞こえてきた。


誰だ!?

―――なじみの声を忘れるくらいに、お前は平和ボケをしたのか? 秋原。


この声は…間違いない。少し忘れかけていたが、アイツ…冬山だ。

そう言えば以前私の体についていた、と言っていたっけか。


―――…くくくっ。思い出したようだね? 秋原。

しかし…お前は完璧に昇天したんじゃないのか? 


わたしはそう思って冬山に訊ねた。実際にしゃべれるわけではないのでそう思う事で相手に話しているのだと、私は確信した。

冬山はおかしそうにふっと笑い、


―――ああ。だいたいの私はいなくなった。しかし、お前が百鬼夜行それをもっているからな…。いつまでもそれに根付いてお前は私と共にいなくてはならないのだからな。

…死ぬまで一緒、ということか?

―――そう言うことだ。


私はその場に止まった。

後ろからは竜介の走ってくる音が聞こえてくる。


―――わかっているんだろうな? 秋原。

何がだ?

―――やらなければ、殺られるぞ。

…わかっているだろう? 私はもう、何も傷つけたくはない。

―――しかし、今の夏樹アイツはお前のことを殺す気満々だったがな?


そう言われて、私ははっと気づいた。

あのときの竜介の目。

確実に私を殺す気だったのだろうか。


―――わかったか? 秋原。もはやお前には殺すしか道がないんだ。

―――奴を、

―――夏樹を、殺せ。


そして私は無意識のうちにバールを手に取り、素早く解放させた。

バールは一瞬光ったと思ったらその姿を無骨なチェーンソーへと姿を変えた。

後ろから竜介が斬りかかってきた。

私は向き直りその刃をチェーンソーの刃で受け止めた。

少しつばぜり合いがあった後、私たちは離れて間合いをとった。

私はチェーンソーを下段に構えて、竜介は青眼に構えた。

回りからは虫の音しか聞こえない静けさだったが、竜介が私の間合いに飛び込んできて、そして斬りかえしを放ってきた。

私は素早くそれをことごとく受け止めて、どこかで反撃の隙はできないものかとうかがっていた。


―――くくくっ。そうだ。雁岨。

―――もっとだ。もっとやれ。そして夏樹を殺せ!


頭の中からそんな声が響いてくる。

私はそれに賛同するかのように切り返しの一瞬の隙を突き、竜介に横なぎの一閃を放った。

竜介はバックステップをしてそれを避けた。

私はこれ幸いとばかりにそこからチェーンソーのラッシュをたたき込んだ。

打つ。

打つ。

打つ。

打ちまくる。

ことごとく竜介にはじかれていたがそれでも私は打ちまくる。

しばらくしていたら竜介を一本の木へと追い詰めた。

私は竜介の服を袖に隠していたナイフで木に縫いつけた。

これでもう竜介は逃れることができない。

私はもがく竜介を尻目にチェーンソーのエンジンをかけ始めた。

エンジンは一発でかかった。

そしてチェーンソーはうなりを上げて勢いよく刃が回り始めた。


―――いいぞ!

―――やれ!

―――夏樹を殺せ!!

―――殺すんだ!


私は竜介の心臓にねらいを定めた。

後はつっこむだけだ。

私は少し自分の唇をなめた。

緊張しているのだろうか、足が震える。

そして私は竜介につっこんでいった。

あと一メートル。

あと五十センチ。

あと三十センチ。

あと十センチ――――!

あと少しで竜介の心臓を私のチェーンソーが貫く!

そのとき。


「が…ん…しょ…」


声が、聞こえた。

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