八十日目、や〜な予感がしてきました。
んで、日曜日。
「お兄ちゃ〜ん! 早く早く!!」
「ちょ…エルちゃん? そんなに早く行ったら、転んじゃうよ?」
「いいの! 転びそうになったら、お兄ちゃんがささえてくれるもん☆」
うん。いい妹だ。
鼻血を出しながら俺が言うんだからいい感じだろ? 読者さん!!
そう! 今俺は薄桃色ランドへと来ているのだ!!
動物園もありながら遊園地だってある!
カバだろうが象だろうが立って歩くレッサーパンダであろうがレッ○ウザであろうが何だろうと動物はそろってる!!
さらに!!
ド○ンパだろうがええじ○ないかであろうがシルターンだかタイターンであろうが何であろうが乗り物だってそろえてる!! しかもFREE PUSS 持ってますから!! 乗り放題であるわけで!!
ふはははは!! すさまじいだろう!! すさまじすぎるだろう! 俺!!
「お兄ちゃん! ほら! あそこ!!」
「お? あれは象のユウキにナナミじゃないか? ちょうどいい。カメラも(盗撮用に)持ってきてるし、写真を撮ってあげるよ」
「ありがとう! お兄ちゃん!」
俺はそう言って飼育委員の人に尋ねた。
「すいません。妹と写真を撮りたいんですけど…いいでしょうか?」
読者? 今俺が丁寧な言葉遣いになったことがそんなに不自然か?
一応これでも生徒会長なんだ。目上の人には礼儀を持って行動をしている。
へ? ウメさんやコガセンはどうなるのかって? あの人たちは顔見知りだからな。お互いに気の知れた中だし。
そして、飼育委員さん。怖い声で(顔を隠して)、
「会長? あなたに妹はいないでしょう?」
「…ッ! お前は…! 萩!?」
なぜだ!? みんなにはここに来ることは黙っていたはずなのに!!
「私もいますよ? 会長?」
「って…柊まで…!? なぜここに!?」
「萩組を…」
「柊グループを…」
「「なめないでくださいね?」」
ぐおっ…! な、なんて黒いオーラなんだ…!
さすがは…さすがは萩組の若組長に柊グループの実質的トップ!! …でっけぇ…でっけぇよ…この二人…。
でもなぁ…ここでたじろぐわけにはいかねぇんだよ!!
「と…とにかくだ…写真を撮ってもいいか?」
黒いオーラを顔面からじゃんじゃん受けながらも俺は飼育員…実質萩なわけだが…に了承を得始めた。すると、
「ええ…いいですよ? じゃんじゃんとってくださいね?」
なんとあっさりOKしてくれた…が、
柊の方から殺気が…強まった!?
ぐおぉぉぉおおおおお!! なんて…なんて黒さなんだ!!
でもなぁ…。
負けられねぇんだよ!!
「エルちゃ〜ん。写真が撮れるってさ〜」
「ほんと〜? ありがと〜飼育委員さん♪」
「はい。それでは行きますね…いやな奴+いやな奴は?」
「皆殺しー!!」
怖ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ!!
何でそんなに憑きものがとれたようなすがすがしい顔でそんな残酷なことが言えるのさ!? お前ら!!
…ま、まぁ。何とか二人に見送られて俺たちは本格的に園内を見回ることにした。
最初に動物を見に行くことにした。エルちゃん曰く、
「レッサーパンダがみたーい!」
「うぉっし! じゃレッサーパンダ見に行くか!!」
んで、来てみたら…。
いた。
レッサーパンダが。
ただし…俺の知っているレッサーパンダではなく…。
「がおーん。」
熊の着ぐるみ(と、新巻鮭を持った)を着た清水先生がいた。ほかのレッサーパンダはなんだなんだとその清水先生を見ていた。
「エルちゃん、行こうか」
「そだね」
「…が、がおーん!」
…すみません、清水先生。俺はそんな物につっこむ勇気はありません…!
ただ…飼育員の人を呼んできて…不審者がいるとしか…俺は言えません…!
さよなら…さよなら、清水先生!
おれは、あなたのことを忘れない!!
「って無視ですか!?」
無視はしていませんよ。はい。ただ、地の文でつっこませてもらっているだけです。つっこみでもありませんが。
「あ、おにいちゃん、あそこにダチョウがいるみたいだよー」
「そうだねーいこうかーえるちゃーん」
「ちょ…棒読みですか!? これはいくら何でもあんまり…って、だ、誰ですか…? あなたたちは!? ちょ…やめてください…! やめて…つれてかないで…いやぁぁぁぁぁぁぁあぁあああああ……」
…あでゅー、清水先生。
んで。今。
俺たちはレストランにて昼食をとっていた。
中は小綺麗で意外に落ち着いていた。客もそれなりに入っているみたいだった。
「お兄ちゃん、私、ハンバーグが食べたーい!」
「よーし…じゃあ景気よく俺が払ってやるか…」
と…思って料金を見てみた…。
ハンバーグ定食 壱千七百八拾円也
焼き魚定食 参千九百八拾円也
水 時価
まてこら。
ハンバーグ定食がこんなに高いわけあるかっ!!
つーかっ! 水!! 時価ってどゆことだよ!?
「じゃーお兄ちゃん、水たのもう?」
「いくら何でもそれだめぇぇぇえぇぇえぇえええええ!! 俺の財布がスッカラカンになっちゃう!!」
今月ゼロ円はきつい!!
すると、
「…お客様、何か不都合な点でも?」
「おおありじゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああああああああ!!! つーか井宮さんまで何でいるんだよ!?」
「…失礼ながら、私は井宮朱鷺という柊家専属メイドではございません」
「言ってるし!? 自分から正体ばらしてるし!?」
そこにはいつも通りのメイド服を着た井宮さん。変装も何もしていないのだから当然ばれるはず。しかしネームプレートには…。
門川・クリスチーヌ・ロッツアレラ・古川・モッツァレラ・バンデラス・零崎・エリザベス・黒犬・カンテーラ・鴫朱鷺三世
「長ッ!! よく書き切れたなネームプレート!!」
「…とりあえずご注文の品はお決まりでしょうか?」
「んーとねー、水ー!!」
「だめだから!! 水は!!」
「じゃーH2O!!」
「元素名!?」
「かしこまりました。ご注文の品を繰り返します。
水 一つ、
死 一回。
これでよろしかったでしょうか?」
「よくねぇ! よくねぇぞ!! 死亡一回なんて誰が望むかぁぁぁぁああああ!!!」
はぁ…はぁ…なんだって…こんなに疲れるんだ…今日は…?
俺は気づけばレストランを出て行ってそして近くの広場の白いベンチで休んでいた。
落ち着いて周りを見てみると、緑色の芝生の上でたくさんの家族連れが弁当を食べていたり遊んでいたりしていた。
そういや…俺にもこんな頃があったけかなぁ…。
なんてしみじみと思い出していたら、
「お兄ちゃん、大丈夫? なんか疲れてるみたいだけど…」
そうだった! 今はエルちゃんと大事なデート(?)中だ!!
別のことにうつつを抜かしている暇なんて無いんだ!!
「大丈夫! こんな事で俺はへこたれるわけにはいかんからな!!」
しかし! 俺はせめてこの場ではいいかっこをしていたい!!
そのためには…。
どうすればいいんだろうなぁ…。
「なぁ、エルちゃん…」
そして横を見てみると。
『私はそんな名前ではないがな』
雁岨がいた。
「何でお前がここに…いや、いい。皆まで言うな」
『ほう? 話がわかっているようではないか。竜介。ちなみにあのガキんちょは今アイスを買いに行っている。二人分だ』
「そうか。…ああわかった。分かり切っていたともさ。どうせ今回の事もお前の仕業だろ?」
『…ああ。放っておけないからな』
素直じゃない奴。でも今は迷惑だ。
「…そうか。なら、放っておいてくれ」
『な…正気か!? 貴様!?』
雁岨はそう書いたスケッチブックを見せながら俺の胸ぐらをつかんできた。
そりゃあそうだろうな。俺はこいつにとっては今も大事な奴だからな。
でも…こいつとのつきあいは…もう終わってる。とっくの昔に、だ。
だから、俺は今、こいつに言われたことをもう一度言う。
たとえそれが、冬山が言ったことだとしても、俺は言わなくちゃならない。
「雁岨、お前、俺に向かっていったよな? もう別れようと」
『そ、それは…』
そして、俺のとどめの一撃が炸裂する。
「これ以上、俺の目の前に現れないでくれ」
「お兄ちゃーん。どうしたの? そんな精も根も尽き果てたような顔をして」
「…ああ。何でもない。何でもないんだ。エルちゃん」
俺はそのあと、エルちゃんといろんな乗り物に乗ってみたが、俺の気が晴れることはなかった。
「あれ? 雁岨さん、どうしたんですか? その意気消沈したような顔は?」
『何でもない…』
雁岨は肩を落としてとぼとぼと歩いていた。今いるところは井宮たちがいるレストランだ。相も変わらず、そこはにぎわっていた。
そして雁岨は先に来ていたハルの前の席に座って、水を飲みながらスケッチブックに文字を書いていた。
ちなみに、先ほど竜介たちが見たメニュー表は井宮が作った偽物のメニュー表で、本当の水はただで飲める。
「いや、そんな力の無い字で書かれても…」
『私は疲れた…帰る…ほかの奴らにも伝えておいてくれ…』
「え? あ、はい…ところで雁岨さん」
『なんだ?』
「この遊園地、ちょっと変な感じしませんか?」
『…さあな。じゃあ、私は帰る』
「あ…行っちゃった。でも…なんか変なんだよなぁ…」
ハルは周りの人々を見ながら首をかしげていた。
「なんかここの人たち…うわべだけ、楽しそうなんだよなぁ…」
「ほらほらみてー! お兄ちゃん、教会だよー!?」
「ああ。でっかいなぁ」
俺はいろんなところに連れ回されていくうちにいつもの調子を取り戻していた。
だが、完璧に心は晴れてなどいなかったが。
「中に入ってみようよ! お兄ちゃん」
「やめときなよ、エルちゃん。スタッフの人に怒られちゃうぞ?」
「へーきだもーん☆」
そしてエルちゃんは教会の中へと入っていってしまった。
「やれやれ…」
俺も続くようにその教会の中へと入っていった。
中は一般的な教会で、正面にはステンドグラスがあってその下にはオルガンがあって、
俺の目の回りには木のいすがあった。いや、あれベンチ、って言った方がいいのか? よくわからんが。
そして…足下にはレッドカーペットが敷かれていた。
あれ? そう言えばエルちゃんの姿がみえんな…。
「おーい。エルちゃーん?」
俺はその場で手をメガホンにして呼んでみた。すると、
「お兄ちゃん」
と、背後から声がした。振り向いてみると、
ベールを頭に乗っけたエルちゃんがいた。
なんだ。こうやってみるとエルちゃんも普通の女の子なんだな。
俺はそう思ってエルちゃんに近づいた。
すると、エルちゃんはクスリと笑った。いや、顔を喜ばせていた。目は笑っていなかったが。
「つっかまーえた」
そしてそう言ったと同時に、
俺の意識がなくなった。
「続いちゃう…かも? かも? かも?」(By、黒芽エル)