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桜ヶ丘高校生徒会役員  作者: 嫁葉羽華流
秋の章 ~がくせいのほんぶん。~
77/151

七十一日目、なんだかんだあって自分が一番好きだったりする

ここはどこなんだろう。

暗い。

重い。

眠い。

寝たらダメなような気がする。

でも眠い。

重い。

気が…遠くなる…。





「さあ皆さん。遊んでいる時間は終わりです。仕事をちゃっちゃか始めましょう」

「あ…うん…」

「そうね…」

「何で私立ってたんだろ…」

「……………?」

「どうかしたんですか? 抄華さん」

「あ、いや…なんでもないですよ? ハルさん」


そうはいっていたけれども、どうにもなんか違和感があった。

ハルさんはこんな人だったっけ?

どうにも私の中の「桜田ハル」という人物像からかけ離れているような感じがする。

でも…あれ? 

でも…。

でも…。

でも…これで・・・良かった・・・・んだっけ・・・・


「抄華さん、頼まれていた書類ができあがったのでここにおいておきます」

「あ、はい…ご苦労様です…」


そしてなんの変哲もなく書類を受け取った。

と、同時に、ハルさんの手に触れた。


(あれ…?)


私は気づいた。

ハルさんの手が、異様に冷たかったことに。






「……い……おい…おい! 起きろ、主人公!」

「……ん? 後五ふ〜ん…」

「……ここでそんなことを言ってたら死ぬぞ? お前」

「へっ?」


そして私は目が覚めた。いや、覚まさせられた。

そこはなんにも無かった。

ひょっとこのお面をかぶった金髪の黒い服を着て腰に刀を差した男が立っていた事以外には。

完璧なる、

何もない。滅びもなければ、目覚めもない。そんな世界だった。


「……あれ? っていうか、この物語ってこんな話だったっけ? もちっと、ほんわかテイスト満載の物語だったような気がするんだけど…」

「そうだなぁ。この物語は血がどっぱりでてきて生首とかが散乱するような物語じゃないからなぁ」

「…そう言うあなたは誰? なんか…」

「おおっと。それ以上言うのはダメだぜ? この場で俺は『植草さん』と名乗らせてもらおう!」

「何故に植草!?」

「……おいお前。どうして自分がここにきたのか分かってるのか?」


不意にそんなことを聞かれてきた。

そんなこと自分が知りたい。

どうして自分はここにいるんだ?

どうして自分はこんな所に居るんだ?

自分の居場所はここじゃない。

もっと明るくて、もっと暖かくて…。


「でも、今のお前は必要とされていないみたいだぞ?」


そう言って植草さんはどこからともなくテレビを引っ張り出してきた。


「…と、いうか…何もないところからテレビが出てくるのも怪しいもんだけど…」

「細かいことは気にするな。おっ? これから笑点がある。お前見るか?」

「いや見ないよ!! 作者さんはピンク色の人がが好きだって噂だけどさ! それよりか一体何を見せるというの?」

「これだ」


そこに映っていたのは偽物がきっちりと仕事をしている姿だった。

他のみんなもそんな違和感なんて気づかない様子で個々に頑張っていた。

そして…そこには私が持っていない所まで完璧に持っていた偽物がいた。


「これだ。どうだ? これを見ての感想は?」

「…………………最悪」

「見たくない、とでもおもったんか?」

「…うん」

「…こぉの、馬鹿ものめがぁ!!!」


そう叫ばれて私は頬をグーで殴られた。

つーかめっさいてぇ!!


「何すんのよ!!」

「すぐに負けを認めおって!! 勝負は最後の最後まで何が起こるかわからんのだぞ!?」

「でももうこれ勝負決まってるじゃん! 完璧私の負けじゃん!!」

「甘いわぁ! 砂糖水にハニーシロップとガムシロップとホットチョコレートを加えたくらいに甘いわぁ!!」

「私の考えどんだけ甘いの!?」

「どうせ行くならば玉砕覚悟で当たって砕けてこい!!」

「命令形!? でも…」

「ええええい!! うじうじするな!! おまえは腐ったミカンじゃないだろう!!」

「あんたは金八先生か!!」

「僕は死にましぇぇん!!」

「それもうちがうから!! というかわかる人いるのか!?」

「…元気が出たみたいだな」

「へ?」

「それでこそ!! 桜ヶ丘高校生徒会役員庶務雑務担当、桜田ハルだ!!」

「……でも…それは私じゃ…」

「とにかく行ってこい!! まだ勝負は終わってないぞ!!」

「でも…」

「試合はおまえが決めてこい!!」






「うっはぁ!?」

「へ!?」

「さ、桜田さん!?」

「軍曹さんが…二人!?」


そして私はいつもの生徒会室に出てきた。懐かしい香りだ。帰ってきたという実感がする。

そして…私は目の前にいる私と対峙した。


「な…んで…?」

「私は…まだ終わらない!! まだ終わった訳じゃないんだ!!」


そしてかっこよくあいてにズビシッ!! と人差し指を突きつけた。

そして偽物はうろたえて…しかし、うろたえながらも、


「…あ…あなたは…いったい…何者なの!?」

「知らないのならば教えてあげるわ!!」


そして私は胸を張り、自分自身の胸を張る!


「私の名前は桜田ハル!! 桜ヶ丘高校生徒会役員庶務雑務担当、桜田ハルだぁぁぁぁあっ!!」

「んなっ…!? 馬鹿な…自分の名前がいえてるなんて!! で、でも…ここにいる人たちは私が本物の桜田ハルと認識しているのよ!? その事実は変えられないはず!!」


確かに。

それを変えない限り、私は偽物のままだろう。

そこまで偽物が言ったとき、万事休す、すべてが終わった…と思っていた。


「私は、この人が本物のハルさんだと思います」

「抄華ちゃん…」

「抄華さん!?」

「本物のハルさんは『抄華さん』なんて丁寧に呼ぶはずないですもん」

「なっ…?」

「確かに…僕のことは副会長、なんて呼ぶはずないもんなぁ…」

「えっ…?」

「よく考えてみたら、結構おかしな点があるわね…」

「あっ…?」

「軍曹さんはこんなに仕事熱心じゃありませんしねぇ…」

「ううぅ…」


最後のだけは私だったが、偽物の方は徐々に消えかかっていた。


「認めない…! 認めないぞ…! 桜田ハル…!! 私は…おまえなんかを認めない!」

「私になったのに、どうして私を認めないの?」

「私はおまえが嫌いだからだ!」

「自分を好きになれなくてどうすんのよ!! そんなあなたを…私は認めない!!」


そこまで言ったとき、どこからかぼんっ!! と何かが破裂する音がして廊下に響いた。

偽物は完璧に消えて何もなくなった。

そして…廊下からは…。

会長が出てきた。


「よぉ、おまえら。何してるんだ?」

「……会長…あなたこそいったい何を?」

「…いや…回転焼き作ってた」


そんな会長の腕の中には回転焼きがたくさん入っているように見える紙袋があった。


「いやぁ。日頃お世話になっている高校に配ろうと思ってな。やっぱ、自分を好きになるってことは、得だよなぁ」


あっはっはっはっは…。

そんな会長の笑い声を聞いていたら、確かにそう思った。

―――――私はおまえを認めない!

―――――私はおまえが嫌いだ。

そんな偽物の声がいつまでも私の声が響いていた。

しかし、

私は、こんな私が一番大好きだった。














桐裂コーポレーション、会議室

「…複写機は壊れたか」

「はい。今後改良が必要と思われます」

「いいだろう。これからも開発に力を注げ」

「はっ」

「そして…向こうのデータはとれたのか?」

「そちらも滞りなく…」

「ふむ…まぁ、何とかうまくいっている…というところか。いいだろう。このまま生徒会の監視を進めろ」


桜ヶ丘高校を標的に、何かが蠢いていた。

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