六十四日目、桜山祭終了! おつかれさまでしたっ!
「―――おうぅっ!?」
腹の底からの声を出して俺は起き上がった。
ここは…保健室?
「くぅ〜っくっくっくっくっくっくっくっく…お目覚めになったんですねぇ? 夏樹君…」
「あぁっ! い、いつのまにやら俺の腹に謎の手術の後がっ!?」
「さぁ…今からあなたは私の生ける奴隷となりましたぁ…! …この世の全ての生き物全てを抹殺しなさいっ!!」
「嫌だっ! やめろ! やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
とここまで乗って冷静に突っ込まれた。
「…何してるんですか? 会長…」
「いや、あまりにも保健室暮らしが暇なのでな」
「保健室ではそんなに暮らしていないでしょう…」
傍らには俺の右腕、萩昌介がいた。その頭には何故か包帯が巻かれている。
本人曰く、「いきなり巨人が降ってきてこうなりました」と言っていた。そしてその横では柊がリンゴを剥いている。こっちも行っている途中で萩に出会ったらしく、そのまま狂った生徒と交戦していたら降ってきて、それをガードして萩が犠牲に…と言うことである。
「あぁ…にしても、こんだけですんだのはよかったな」
「ちぃっともよくなんか無かったですよぉ!!」
怒りながら俺の服を剥いでいる清水先生。なぜかって? それはな…。
「萩君は右腕の骨折に、頭に五針の怪我! 夏樹君に至っては、肩に十五針、顔に五針の切り傷!! ホントに君たちは何をしてたんですかっ!? ほらっ! 消毒しますよ!!」
「あれだよ。腕相撲大会っていたたたたたたたたた!! 何故に傷口に塩を!?」
「そんなことでこんな風になるモンですかっ!! 塩はちょっとは効くでしょうっ!!」
参ったな…ホントのことを話すか? にしても実際には信じてくれないだろうしなぁ…。
それに、と言って清水先生はカルテ(?)を見た。
「どーして春樹君は脳が二十%、秋原さんに関しては三十%も機能停止しているんですかっ!!」
…は?
「すまん、清水先生。どーしてそうなっているんだ?」
「はい? こっちが聞きたいですっ!! どこをどうしたら、こうも人間の脳がぶっ壊れるんですかっ!?」
…二人の脳が、ほとんど停止…?
そして俺はウメさんが言っていたあの言葉を思い出した。
『春樹はほとんど、誰が誰だか認知ができない…つまりは誰が誰だか分からない状態なんだよ』
その言葉と同時に、桜田が聞いたと言っていたあの言葉も思い出した。
『たしか…おばあちゃんは『正気かっ!?』って言ってました。何がなんだかは分からないんですけど…』
恐らくウメさんが使ったのは俺が使う悪霊払いの中でも上位に値する技を使ったんだろう。
そして俺は嫌な予感がしてベットから飛び降りた。
が、
「ぐぉあたたたたたたたたたたたたたたた!!!!!!」
「ちょ、無理はしないでください! まだ立てるレベルには至ってないんですからねっ!」
「なら清水先生、ちょっと今年入学の生徒のファイルを持ってきてくれねぇか?」
「それが教師に対する口ですかっ…。まあいいです。どのみち持ってきてますし」
「何故に!?」
「もしもの時のために写しをここに持ってるんですぅ」
…それって、個人情報流出って奴じゃないのか?
「あ、ありました、これですぅ」
「あ? ああ、どもッス」
俺は若干犯罪臭が臭う(イケメンの生徒には赤で丸がつけられていた)を見ていると。
「やっぱりな…」
そこは、紅則春樹のページ。
そして奴の健康状態の欄を見てみると、健康状態は普通。
雁岨の方は見なかった。自分が嫌って言うほどに知っているからな。
ここにきて確信がついた。
「あいつら…幽霊に脳みそを持ってかれたかな…」
だとしたら紅則が大変なことになってるだろうな…なんて思っていたら、
「会長いますか〜?」
「おじゃましま〜す」
「入るぞ」
そこにはハルと桔梗と紅則の姿が…っておいいいいいいい!!!
「ちょっちまてコルァァァァァァ!!! なんで!? なんであんたら平気に立ってんの!? っつーか紅則、お前へーきなのか!?」
「会長、そんなに言ったら春樹がまた頭痛になっちゃいますからちょっと静かに…」
「どうもこうも…ってえ? 頭痛?」
「そうですよ…あー頭痛っ」
な…何が一体どうなってやがんだ…?
「竜介、竜介」
「おう? ウメさんか。どうしたんだ?」
「あの子と雁岨のことだよ」
「おう。どー言うことだかきっちり説明をしてもらおうじゃねーか」
それからなんと俺は信じられないことを聞くことになった。
なんとハルが幽霊が出て行った後、紅則の頭に手を載せ、それで治療したらしい。
「…雁岨も、同じようにか?」
「ああ。ひょっとしたら…」
「…? まさか…な」
一抹の不安が頭の中によぎった。が、きっと間違いだろう。
そこに、
「竜介」
「おうっ!? が、雁岨!?」
そこにはいつのまにやら雁岨が…って、
「そのスケッチブックはなんだ?」
「……………」
雁岨はスケッチブックに手に持っていた油性ペンで何かを書き始めた。
『いや、そ、その…恥ずかしすぎて先ほど以上の声が出ない…』
「なんつーふがいない理由っ!?」
『そう言うな。結構コレもなれるとおもしろいぞ?(^皿^)』
「顔文字を使うなっ!! お前は女子高生か!!」
『女子高生だ。お前とためだ』
「…そういやそうだった…」
ま、何はともあれ。
無事に桜山祭は終了した、っつー事実をこの後桜田達に聞くことができたからな。よかったよかった。
「…失敗か」
「仕方無いだろう。幽霊に任せた私たちが間違っていた…とでも?」
「しかし、そこまでしないと、この桜ヶ丘高校の不穏分子はつぶせん。別の所には別の不穏分子…あぁいらいらする」
「しかし、向こうの方はまだ気づいてはいないのだろう?」
「ああ…それだけが幸いだ」
「しかし…この中には私怨で動くものがいる、と聞いたんだが? 間違いだったか?」
「間違いではないでしょう。彼は柊と萩には相当な恨みを持っているからな」
「まぁ怖い…しかし、そこまでしたら次は彼が行くのですか?」
「ああ…我らが直接手を加えるのは些か気に喰わんが…まぁ、仕方あるまい。彼の成功、そして、我らの永遠の繁栄を願おう」
「繁栄を」
「繁栄を」
「繁栄を」
「繁栄を」
「繁栄を」
「繁栄を」
「繁栄を」
「繁栄を」
桜ヶ丘高校 給水塔上にて。
「……以上、某、どこかの会社、秘密会議室にて、不穏な影有り。十分注意しろよ、水月」
『ああ。言っておく。にしてもこいつら…どっから湧いて出た? こんなモンは俺は書いた覚えもなければ出す覚えもないぞ?』
「…作品の意志か? それとも」
『それ以上深入りをするなよ。下手すれば戻ってこれなくなる』
「了解」
『にしてもすまんな。キザ仮面。いや、今は…薄影会都、と言った方がいいか?』
「…勘弁してくれ。あんたからこの世界の仕組みを知った上で俺は協力してるんだ」
『けっ。バカを抜かすな。言ったはずだ。俺はこの物語で誰一人死なせることをしない。聞いてなかったのか?』
「あんたは望みすぎだ」
『なんとでも言え。俺は世界で一番、強欲な人間だ』
「…しかし、その強欲さが時として人を救う、か…」
『んあ?』
「なんでもない。では、な」
『おお。…あ、そうだ。スクール・ラプソディーの連中は?』
「記憶を消去して元の世界に返した」
『ご苦労さん』
「いやいや」
キザ仮面「そう言えば…後夜祭はどうなったんだ?」
水月「ああ、あれか。あれは結局後片付けなどの理由があってやれなかったそうだ」
キザ仮面「…そうか」
水月「なんだ?」
キザ仮面「いや、なんでもない」