五十一日目、残念ですがあなたの冒険の書は消去されてしまいました。
今回は言ってみれば序章? いや、上なんでしょうか…とにかくそんな感じです。
最初はほんの出来心でした。
どーもー。皆さん。
清水このかです。
…あれ? お前誰? 的な顔をしていますねぇ?
…いいんですよ…どうせ私はこの小説一地味キャラですから…。
作者さんが活躍させてくれないから!!
一応私、理科の教師なんですよ!? しかも生徒会の副顧問!!
それなのに…それなのに!!
この扱いはひどくないですか!?
しかも私、一回結婚してるんですよ!?
でも…夫と子供に逃げられて…今やバツイチの身…。
嗚呼…なんて不幸な私!!
仕方ない…こうなったら…!
この…禁断の薬を…!!
作ってやる!!
「ふっふっふ…できました…!!」
私は生徒会室棟にある自分の私室…まぁ、保健室なんですけど…ってか、なんで自分理科の先生なのに保健室が私室なんですか!? 生物だからか!? 自分の受け持っている教科が生物だからか!?
…まぁいいです…この…この禁断の薬をばらまけば…!
「ふひっ…ふぃぃぃぃぃぃぃぃぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!!!」
ああもう! 笑いが止まりません!! もうサイコー!! こんなん作ってしまう自分がすごい!!
あ〜もうすごいです!! あっはっはっはっはっはすぽんあっはっはっはっはっは…は?
あれ? なんか…いま…じぶんの手から飛んでいったような…?
私はじぶんの手のひらに入っていたはずの小瓶を見てみた…が、見れなかった。見ることができなかった。視認不可能。確認不明。生死不明。いや、生きてるわけじゃないけれど。
だって、無かったんだから。
自分の手のひらに収まっていたはずの小瓶…そう、禁断の薬が、無くなっていたのだから…!
その禁断の薬は誰の手に渡ったのかというと…。
「ん?」
そこにいたのはハルのおばぁちゃん、ウメさん。この人も清水先生と同じくらいの体型なのに実年齢が八十超えているというとんでもおばぁちゃんです。
「うれしいねぇ。作者。どれ、この新作のカツ丼麻婆スペシャルを食べてみないかい?」
遠慮しときます。なんか変な煙が出てるし…。
「ウメ様。今回の料理はこれで良いのですね?」
「ああ。助かるよ、井宮さん」
「お褒めにあずかり光栄です」
あれ? 井宮さん。こちらで手伝ってたんですか。
「ええ。お嬢様にできるだけご飯の時には手伝ってくれと言われているので」
なるほど。
そう思っていた刹那。
ぽちゃん。
何かが落ちた音がした。
「ん?」
「む…?」
えと、今何かが…。
「落ちていないね」
「そうですね」
この二人に食卓を任せちゃいけない。
さて。ご飯になったんだけど…。
「お残しはゆるしまへんでぇ〜〜〜!!」
「…皆様。ごゆるりとお食事ください」
「「いただきま〜す」」
そーいって食卓がはじまりました。
ちなみに今日のご飯はカレーライスとカツ丼。何でこんなメニューになったのか。
箸やスプーンが皿やお椀に当たっている音が定期的に響いていると同時に、いつもの生徒会メンバーの話し声。今日から萩も風邪から復帰して校務に精を出していました。
「ん?」
「どしたんですか会長?」
「いやな、なんか固まりが多量に入っていたんだ…が、いま飲み込んだ」
え? 飲んだ…?
「今すぐはき出せ! 夏樹!!」
「へ?」
おお、駆けつけてくれたか我が弟よ。
「どーでも良いから今すぐはき出せ!!」
「お? お? おぉお? な、なんだよいった…がふぅ!?」
いきなり会長喀血!! いや、吐きカレー!! あ、たまになんかカツも混じって出てるから吐きカツカレー! …なんか訳わかんなくなってきた…。
とにかく吐きカツカレーをなんか噴水のごとく出しています。いやすげーわ。
「会長!!」
「会長さん!!」
まぁそんな感じの声が辺りに響きました。
そして数秒後。
ぱっちり両方の目を開きました。会長、すごい回復力。
「会長!!」
「…?」
なんかすっごい純粋な目…。なんで?
「会長! 大丈夫ですか?」
「…おう? 会長?」
そして、衝撃の告白。
「…だれだ、そいつは?」
…はい?
ひょっとして…ひょっとすると…。
「…記憶喪失ってやつですか?」
いえす、おふこーす。
「「…うぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!??」」
そして傍らにはちっちゃい肩をふるわせる清水先生。
「…早く解毒剤を作らないと…!」
むしゃくしゃしてやった。反省は今はしている。(By、清水このか)