三十一日目、考えるな。行動しろっ!!
え? 今回は特別出演? あの人が出るの?
「…困りました」
誰もいない放送室の中、一人ごちたのは、
「…このような漫画的状況があるなんて」
何を隠そう。
柊家紫苑専用オールマイティドジッ娘メイド、井宮朱鷺であった。
「…水月様、本名も考えていたのですね」
あん? 当たり前でしょ。
ちなみにスリーサイズ、誕生日、使っている眼鏡のサイズもすべてまるっとお見通しだ!!
「…作者なのですから当然でしょう」
…まあね。
んで? 何がどうしたのよ?
「こちらです」
ん?
え〜っと…。
そこにはごたごたした配線がすでに切られていたり、妙な棒状の板が挟まれていたりした。
そして、この状況で特筆して言えることといえば…。
赤と青。
一方は、
(俺を切った方が見も焦がれるような熱い火照りを楽しむことができるぜ?)
というような赤。
そしてもう一方の方は、
(あ…あの…ぼ、僕なんか切ってもぜんぜんたいしたことなんてないよ? むしろがっかりさせられちゃうかもしれないんだよ?)
というような弱みのある青。
そう。
ここにはまさしく、爆弾処理のドラマみたいなあのシーンが広げられていた。
「…ここまで筋書き通りなんですね。水月様」
ん? まあね。
ほら。それ余暇早く切って! もう時間がないんだから。
「ん〜…」
井宮は悩んだような振りをして、そして、
「では、赤の方を…」
うおおおおおおおおおおおおおおおい!!!!
まままままままてえええぇえぇえぇぇえぇぇえ!!!!
ほ、ほんとにいいのか!? ほんとにそっちの方切っちゃうのか!?
「…では青の方を」
まあああああぁああぁあぁあぁあてええぇえええぇえぇえぇえぇええぇぇぇ!!!
それでいいのか!? お前の人生それでいいのか!?
すると井宮さん。ふぅとため息をついて…。
「どっちを切ればよいのですか…」
と、聞いてきた。
ちっ…しかたねぇ。
秘蔵回路図を見て…っと。
赤だ! 赤の方を切れ!
「分かりました」
そう言って切ったのは青の方…っておおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!!!!
なんで!? 何で青の方を切っちゃうの!? 俺確かに赤って言ったよね!?
「え? 青って言ったんじゃないんですか?」
言ってねぇええええええええ!!!!!
そうこうしているうちに!
『ピピピ、ノコリジカン、アト、5ビョウデス』
「…まあ大変ですね」
大変とか言ってる場合じゃねぇ!!! 逃げろや! 早く!
ちゅどご〜ん。
「井宮さん!!」
校舎がどんどん倒壊していく。
私たちの学び舎がどんどん壊れていく。
そしてしばらくしたあとに残ったものは、
瓦礫の山だった。
「ああ…」
私は地面にひざをついた。
「紫苑…大丈夫?」
「うん…」
そうやってぼうっとしていると、
「…ふぅ…やれやれだぜ」
「!!」
そこには黒い服、黒いズボン、黒いサンダルに黒い帽子をかぶった全身黒ずくめの私たちと同じくらいの少年が現れた。
背中には井宮さんを背負って。
「井宮さん!」
そして少年が井宮さんを下ろして、井宮さんは私に顔をあわせようとしなかった。
「申し訳ございません、お嬢様。校舎を守ることができませんでした…」
「ううん! いいの! いいんだよ…生きててありがとう…!」
そうして思わず私は井宮さんを抱きしめた。
「でもどうするんですか? これ…」
「元に戻すのも大変ですしねぇ…」
そうだった。
会長が来たときにはなんて説明したらいいんだろう…。
そんなことを思っていると、
「ま、学校がなくなっちゃ物語すすまねぇからな」
そう言ってその少年はポケットからノートと鉛筆を取り出して何か書いた。
すると、学校は、
見る見るうちに元に戻っていった。
「そんな…!」
「ばかな…!」
「ありえねぇ…」
「そんなファンタジックな…」
そこにいた人々が次々に声を上げていた。
「あなたはいったい…?」
昌介がそんなことを聞いている間、その少年は伸びをして、ポケットにノートと鉛筆をしまった後に言った。
「俺のことなんざどうでもいい。それよりか、俺はこの物語に干渉しすぎた」
そう言って私に背中を向けてどこかに言ってしまった。そしてその後に、
忘れるな…物語の主役は、お前たちなんだからな…。
そんなおもしろいものでも見たあとのような声が、頭の中に響いた。