二十六日目、あっぱれ! 祭りだ! 遊べない…。
わいわいがやがや。
そんな擬音がぴったりの夏祭りがスタートした。
ちなみに、持ち物チェックとかもしてるみたいで、私たちは祭りがやっているところ…つまり、学校敷地内を頼まれたんだ。
ちなみに私、桜田ハルはプール前。何でこんなところになったんだろ…ま、くじ引きで決まったし、しょうがないか…。
でもなぁ…じっとしてたらなぁ…。
あぁ…焼きそばのにおい…。
あぁ…たこ焼きのにおい…。
あぁ…回転焼きのにおい…。
あぁ…人形焼きにリンゴ飴、さらには綿菓子焼きトウモロコシのにおい…。
それを眼前に控えてのお預けなんてぇえぇぇぇえぇぇぇえぇえぇぇええぇぇえぇぇ!!
「さぼったらどっからともなくチョークが飛んでくると思え」
な〜んて、コガセンは言ってたけど、そーんなことないない♪
せっかくの祭りだもん! ちょっとは楽しまないと…!
そう思って屋台の方に歩き出した。
まずはたこ焼きから…♪
そしたらどこからともなく!
ちゅいん!!
髪をかすめて飛んでいったのは…チョーク(しかも短い)?
発射された方向を見るとそこには…!
「ゴル○!?」
そう、そこにはごつい黒サングラス、そして黒いエナメルコート、いつもとはちょっと違うけどバストを強調した服を着たコガセンがたばこをくわえてチョークを構えていた。
っていうか、今全国の学校内って全面禁煙だったと思うんだけど…違った?
不意に持たされていたトランシーバーからは謎の声が…!
『さぁ〜くぅ〜らぁ〜だぁ〜…』
「か、会長…? ち、ちがいますよ? これはですね、その…トイレに行こうと思って…」
『トイレは逆の方向だ…貴様…さぼって祭りを楽しもうとしていたなぁ…?』
な、なんか近くで見られているようななまめかしい視線を感じるんですけど…?
「や、やだなぁ…そそそそそそそそんなことないですよぉ…」
『声が震えているぞぉ…桜田ぁ…』
「あ、すみません! ちょっとトイレいってきます!!」
『ちょっ、こら! 待て桜田!!』
切った。
さってと…トイレトイレ…。
「やぁ、ハルっち」
不意にそんな声がした。
久しぶりに聞くその声。
その声の主は…。
「…え、春樹?」
そこには行方不明といわれていた春樹がいた。
あの時…生徒会室であった時の姿のままだった。
なにも変わっていない。でもそれが私には怖く思えた。
「ちょ…なんでこんなとこにいるのよ! 親とかには連絡しなくていいの?」
春樹は一瞬顔をくらませ、そして、何もなかったかのように、
「いいんだよ。もうしてあるから」
それより、と言って春樹は傍らから袋を出してきた。こ、このにおいは…!
「お腹、すいてるでしょ? ハルっち」
「たぁぁぁあこぉぉぉぉやぁぁぁあぁぁきぃぃぃぃ!!!!」
それを春樹の手からもぎ取ったら口の中にほおばった。
う〜ん! この適度な熱さ! そしてこのモチモチ感! たこの硬さもグゥゥゥ!!!
「…はぁ〜…おいしかったぁ〜…」
「ははっ。喜んでもらえてよかったよ」
「も〜大変だよ? 学校の方に変な脅迫文が届けられたおかげで私たちが提案したお祭りにはいけないし…」
あれ?
目の前がくらくらしてきた…っていうか…眠い…?
「んあ…? なんか…体が…お…も…」
「ハルっち、疲れてるんだよ。ちょっと寝たら?」
「そう…する…」
そして私は眠ることにした。
私の初めての唇を奪われた、ちょっと憎めない、でも。
春樹の、腕の中で…。
「…標的を捕縛した。来てくれ」
そう言った後に、足下のマンホールから真っ黒い学生服を着た大人たちにハルを渡した後、春樹は、
「おい…丁重に扱えよ」
一言言っておいた。
「やさしいんだねぇ? 春樹」
そんなことを言ってマンホールから出てきたのは…。
黒い学生服を着たハルだった。
「…そんなことより、ちゃんと計画は進んでいるんだろうな?」
「もっちろん♪ちゃ〜んと学校の重要な支柱にセットしておいたよ♪」
かわいくそのハルは言った。
「…いいか? しくじるなよ? 桔梗」
「え〜? ハルっちって言ってくんないんだ…ま、いいけどね。りょ〜かい」
そう言った後に桔梗と呼ばれたそのハルの顔をした女子はそのまま桜ヶ丘高校の夏制服に早代わりし、静かに、誰に言うでもなく言った。
「闇黒生徒会が、桜ヶ丘高校生徒会に鉄槌を下す…!」
静かに、しかし激しい怒気をこめながら。