二十三日目、脇役達の鎮魂歌。
今回はこの小説の中であんまりいい立ち回りをしていない人たちのお話です…。
書いてて分かった。
これ、あんまりおもしろくねぇ…。
「………………………」
ふぅ。今日の仕事はこれでおしまいだなぁ…。
「桧木ちゃん、帰るよ?」
「あ、ごめんなさい。ちょっとまだ用事があるので残っておきます」
「そ。分かった。じゃね」
ふぅ…ハルさんも帰りましたね…。
ここに残っているのは私だけ…。
…………………………………………………よし。
私は誰もいないことを本当に確認してパソコンのキーを叩いた。
そこは、誰も知らない、私が知ってる、秘密の楽園。
そのパスワードは…。
「********…っと」
そして、Enterキーを叩くと…。
たどり着いたそこは、チャット場。
ここで日頃のたまりにたまったうっぷんを晴らすのだ。
最近来てくれてるのは三人。
反面教師さんと、いなか大将さん。
今日も来てくれてたよ。よかったぁ…。
早速私はハンドルネーム、消火器で入った。
消化器)遅くなってすみません!
まずは謝っておかないとね。
そしたらすぐに返事が。
反面教師)遅い。死刑!!
ええええ!!?? ひ、ひどい! 何もそこまで言わなくても!!
と思ったらここに仲裁してくれたいなか大将。
いなか大将)まあまあ、何もそこまで言わなくても。
ああ、やっぱりやさしいや、この人…。
と思ったらそこに!
いなか大将)遅れてきたことには目をつぶるよ、消火器さん。でも今度からちゃんと来ないと…
消火器)ど、どうなるんですか…?
いなか大将)…いや、これ以上は何も言わない。
言ってくださいよ! 気になるじゃないですか!!
と思ったらそこに管理人さんがやってきた。たまにここ、管理人さんが荒らしが来ないか定期的に来るんだよね…。
管理人)皆さん、楽しんでますか?
反面教師)あ、管理人さん。
いなか大将)お疲れ様です。管理人さん。
一応私も挨拶挨拶っと…。
消火器)ど、どうもです、管理人さん。
管理人)どうも。消火器さん。最近よく来てくれますね。ありがとうございます。
消火器)いやぁ、それほどでも…。
そして、次の言葉を聞いた、もとい見たとき、とんでもないショックを受けた。
管理人)いやぁよかった。これで心おきなくこのページを閉じられる、と言うことです。
消火器)へ?
反面教師)どういう事だ?
いなか大将)えぇ〜!?
だって、ここって私の唯一の心の清涼剤なのに!
消火器)閉鎖しないでください!
反面教師)そうだぞ! 利用してるのに閉鎖するというのはどうもいただけない!
いなか大将)閉鎖しないで〜!!
管理人)いやでも、もう決めてしまったことですから…。
一縷の望みをかけながら私はパソコンのキーを打った。
消火器)お願い! 消さないでください!
反面教師)頼む!
いなか大将)お願い!!!
そして、管理人さんが出した結論は…、
管理人)すみません、もう決めたことなので…。
「そんなぁあぁあぁぁああぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!」
思わず私は絶叫した。
心の底から絶叫した。
そして、心の底から悲しんだ。
何でかって?
それは私の心の清涼剤がきれたからさ!!
あぁ…私の心の清涼剤…。
翌日。
「な、何があったんだろ、桧木ちゃん…」
「なんか、仕事に打ち込む勢いが違うな…」
その日の私は違っていた。
パソコンのきーを打つ早さが違っていた。
しかし、調べていたのは違っていた。
その日調べていたのは、新しい心の清涼剤を探しているのだった。
「あれ? そう言えば萩先輩は?」
「んあ? 寝てたぞ? あいつ」
「寝てた?」
「ああ…死んだように眠ってたな…何かよほどショックなことがあったんだんだな…」
その日の私は、生徒会室棟の自分のデスクの上で目にもとまらぬ早さでパソコンのキーを叩いていた。
そして調べる。
自分の新しい心の清涼剤を見つけるために…。
「あれぇ? 何を調べてるんですかぁ? 甲賀先生ぇ?」
「あ、清水先生。来てらしてたんですか」
このロリロリフェイスな身長も胸も何もかも小さいこの先生は清水このか先生。こないだまで産休だったんだが、親と子供に逃げられたらしい。何とも世知辛い世の中だ。
「…? 脇役のためのホームページ?」
「あ、はい。自分がこないだまで通い詰めていたチャット場所が閉鎖に追い込まれちゃって…」
「なるほど〜どんなホームページだったんですかぁ?」
「? 『脇役の呟き処』っていうところですが…」
「……………あ〜」
「へ?」
「いや、なんでもないです」
「?」
変な清水先生だな…?
「…ごめんなさい…反面教師さん…」
「へ?」
なんか小言で聞こえたような…? ま、いっか。
さぁ〜て…頑張るか…。