十四日目、病院内でのできごと
さて、新キャラ、出てきました!
桜ヶ丘病院の一室で。
「雫ちゃん?」
雫と呼ばれた少女は窓の外を見ていた。
亜麻色の長い髪をなびかせて。
窓は開いていた。
「雫ちゃん。あんまり風に当たりすぎるのは毒よ?」
看護婦さんが窓を閉めた。
しかし、雫と呼ばれた少女はまた、窓を開けた。
雫という少女は、不幸だ。看護婦さんはそう思った。
高校入学が決まって、やっと明日入学、というときに、病気にかかってしまった。
病名は、癌。
それも、かなり進行していた、との事だった。
両親が学校に行かせなかったため、雫は病院生活を送っていた。
そのためか、いつも外の世界に思いをはせていた。
さらに不憫なことに、雫は自分の病名を知らされてはいない。
両親や、医者からも、「単なる盲腸炎」だとしか聞かされていなかった。
そして、食事もよく残した。
前はたくさん食べていたのに、今ではちょっとしか食べていない。
この子は、自分が死ぬって事を知っているんだろうか…。
看護婦は、時たまそう思うことがあった。
食事を下げながら、
「雫ちゃん。今度うちに入院してきた患者さん、雫ちゃんの高校の人みたいよ?」
変化がない。
「だから、その人たちに、会いに言ってみたらどうかしら?」
「行かない」
雫は間髪いれずにそう答えた。
「…そう。じゃ、また来るからね」
そう言って看護婦さんは部屋から出て行った。
一方、別の病室では。
全員、寝込んでいた。
「うぅ…」
「お、お腹が…」
「か、看護婦さ〜ん…と、トイレ〜…」
「うぅぅ…」
「…………………(ゴロゴロゴロ)」
けっ。いい様だ。
作者に黙って蟹なんぞ食おうとしたからだ! 馬鹿どもが!
せいぜいそこで苦しむがいい!
作者はここでのんびりとするめとサイダーをつまみにして高みの見物だ!
ざまぁ見やがれ! アッハッハッハッハッハッハ!!!
「さ、作者ぁぁぁ…」
ん〜? なんだ? 聞こえないなぁ…?
あ、ちなみに解毒薬持ってるのは俺だけだからね? 医者頼みもいいとこだ!
あ〜っはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!
「「「「「…………もう治ってんだよ!!!!!」」」」」
え?
う、嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!?????
「あんたねぇ…人の希望を遠慮容赦なくよくもまぁあんなものを…!」
「コロス。マジで殺す。泣いて謝っても殺しつくす…!」
「キャラクターによくもまぁあんなものを…!」
「早速どんな風に社会的に抹殺してやるか考えますか…!」
「試し撃ちにはちょうどいい的が見つかってよかったです…!」
ちょっ! ちょちょちょちょ!
ちょと待て! お前ら!
こ、これには、山よりも高く、マリアナ海溝よりかふか〜い訳が…
そ、それよりかさ! ほ、ほら! こ、こここ今度はマシなものを送るからさ! な!?
許して?
ね?
だから…
話せば分かる!!
「「「「「問答無用っ!!!!!!」」」」」
ちょやめろまじでお前らほんとにぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!!
ふぅ…作者への血の制裁がすんだから気が晴れた。
まったく、あんなものを送りつけてくるなんて…。
うっ! ま、またお腹が…!
「み、みんな…は、早く作者から奪った解毒剤を点滴に打ち込めぇぇぇぇ…」
「「「「り、りょうか〜い…」」」」
あたたた…まったく…ちょっと気が楽になったからよかった…マジで死ぬかと思った…。
「ん? あら? 雫ちゃん、お出かけ?」
ナースカウンターの看護婦さんが、雫の姿に気づいた。
「…………」
「屋上は今日も青空が見えて綺麗よ」
「…………」
雫は、エレベーターに乗って、屋上へと向かった。
「あ、ハルちゃん、立つんならちょうどいいからあの作者が送ってきた果物、取ってくんない?」
「へ? これですか?」
「そ。それは毒は入ってないからちょうどいいからちょっと研究しようと思って」
「何の?」
「万病を治す薬の研究。後もう一歩で完成するのよ」
「へぇ〜」
「だからとって」
「はいはい」
「ところで桜田、どこに行くんだ?」
「屋上です。空が綺麗なので」
「なるほどな。晩飯までには帰ってこいよ」
「は〜い」
そしてハルは屋上へと向かった。
近いうちに出会うだろう。
雫と、ハルは。
そしてそれは、
雫の運命を大きく変えた。