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桜ヶ丘高校生徒会役員  作者: 嫁葉羽華流
春の章 ~そしてまわりだす~
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百二十七日目、一騎当千

一騎当千いっきとうせん……一人の騎馬武者で千人もの敵を相手に戦えるほど強い事。非常に高い能力がある人の事。

            

一騎とは馬に乗った一人の将兵、当千とは千人に相当するの意。


遅くなりました。百二十七日目です。どうぞ。

「よくもまぁ、そろいもそろってごちゃごちゃと……」


今俺の目の前には目の前の受付の人が呼びつけた警備員がいた。

しかし、それは尋常な数じゃない。白い床が一面見えなくなるほどの多さ。まさしくありの大群といっても過言ではない。


「んで? どうするってんだこれだけで?」


俺が挑発気味に言ってみると警備員は顔色一つ変えず襲いかかってきた。

やがてある程度の人数が俺の上に乗っかってきたときに


「――重いんじゃクソボケェ!!」


よく漫画にあるような感じでわるいんだが、こんもりとできた人山を一瞬ではじき飛ばした。

そしてそれからは殴り合いの乱闘。

――と思いきや、


「だらぁ!」


人をつかんで、


「ふんぬぅ!」


ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、


「どぅりゃぁ!」


とにかくまぁ、次々とやってくる警備員を投げ飛ばし、手刀で打ち据えるなどしてなぎ倒していった。



※――――



「夏木はどこだ!? 急いで探し出せ!」


コガセンの怒声が響く。

無理もない。部屋に軟禁状態にして置いたはずの会長がいつのまにやらいなくなっていたのだから。

学校内をくまなく探し回っていても何の意味もないと思う。

あの会長が行き着きそうなところといえば……。


「あそこしかないんだろうけど……」


僕は校舎の外を見た。

そろそろ桜の花が咲こうかとつぼみを見せ始めた姿の先には、大きなビルが建っていた。

読者の皆様には説明をしていなかったが、叙述トリックということで勘弁をしてもらいたい。

全部ミラー張りの超高層ビル。桐裂コーポレーション本社ビル。

柊グループから脱退し、めきめきとその実績を上げていった新進気鋭の会社。

しかし最近は営業不振からか、株価とかもっかり落ちているらしい。

たぶん会長は――あそこに行ったのだろう。


「昌介」

「あ、紫苑」


その後ろには無言で井宮さんが無言で立っていた。

紫苑はどこかあきらめたような口調で、


「会長は学校の中にはいないみたい……」

「ということは……」


紫苑はうなずく。


「ここは何が何でも学校から脱出して、私たちも――」

「どこに行こうというんだ?」


はっとなり後ろを見ると、そこにはコガセンが立っていた。


「おまえら……ここから脱出しようなんて考えを持っているんじゃ……ないだろうな?」

「コガセン……」


僕らが苦虫をかみつぶしたような顔になっていると、


「――私にお任せください」

「井宮さん!?」


井宮さんが音も立てずに僕らの前に立っていた。


「――私が時間を稼いでいる間に、お二人ともお逃げください」

「井宮さん……」


ちょっとかっこいいと感じつつ、僕らは走って逃げ出す。


「……一応、言っておくけど、あたしを普通とおもってなめてるとひどい目に遭うよ?」


そんな言葉が聞こえたような気がしたが、僕らは一刻も早く目的地へと急ぐことにした。


※――――


「くっ……」


私こと桧木抄華は一足早く校門の前に立っていました。

が、どうしてもその先を越えることができません。

なぜなら目の前には……。


「……はぁ」


ため息をついている一見すると小学生、若しくは幼稚園児ほどに見える子供――桜ヶ丘高校食堂長(自称)桜田ウメさん――が立っていた。


「……話にならんねぇ、あんた。抄華ちゃん、って言ってたっけ? そんなんじゃ死にに行くようなものさね」

「だったらば通して――」


私は銃を構えてもう一度突進します。


「もらうまでですっ!」


至近距離になりつつの射撃。だんだんとウメさんが避ける間隔が短くなってくる。

接近戦闘ができる範囲までになったとき、私はいったん銃を捨て、太ももにしまってあったナイフに持ち替えました。


「であっ!」


ナイフを一閃。

しかしウメさんは軽くそれを避けました。

ならばと連檄を仕掛けます。

大振りの一閃がきたかと思ったら突撃をし、また突撃をすると思えば足をかけ、連続の攻撃を放つ。

それを繰り返していました。

が、


「……はぁ……」


ウメさんは落胆したようなため息をはいて突撃をしてきた腕をつかみ、そのまま投げ飛ばしました。

私の視界は一瞬空を見て、そのまま地面へと戻って地面につきました。

ようは早い話、ぶん投げられました。それもすんごいちからで。


「がっ!」


私がそのままもだえていると、


「その程度の腕じゃ、ハルを連れ戻そうとしても自分が殺されるだけだわさ」


ウメさんは落胆のこもった声でさらに続けます。


「あんたにはあんたにしかやれないことがあるんだ。それを見直してみたらどうだい?」

「……私は、怖かった」


ウメさんが「あ?」と不思議そうな声を上げます。


「私は、怖かった! ハルさんが連れ去られたとき、一緒にいたあの白い服の人たちが! 今の今までとは何か違った、あの人たちが怖くて仕方がなかった! そのせいで、ハルさんは連れ去られてしまった! だから私は――」


私はしゃべっている間、バズーカを取り出し、その銃口をウメさんに向ける。


「ここで退くわけには、いかないんですっ――――!」


そして引き金を引く。

轟音と共に、小型のミサイルがウメさんに向かって飛んでいきます。

ウメさんはまたしても落胆を浮かべ、


「……はぁ」


そのまま何も起こりませんでした。

ただ、ウメさんの手には先程はなったはずのバズーカの弾が握られている以外は。


「……うそ」


バズーカの弾を握る……つまりは押し止めた、ということ? なんで?


「……あたしゃ、こう見えて武術をかじっていたもんでね。極めた結果、こういう事ができるようになっていた……というわけさね」


ウメさんはバズーカの弾を空に向けてえいやっと投げました。そのままバズーカの弾は空に消えていきました……。


「……あなた、本当に人間ですか?」


私がそう聞いたとき、ウメさんは少し笑い、


「さあね? 人間じゃないかもしれんさね? 私も――あの子も」


あの子?


「……抄華ちゃん。あたしゃ今から少しばかりの独り言を話すよ」


※――――


私は油断していたのかもしれない。

竜介がそう簡単に私の元から離れたりはしない。

そう確信していたのかもしれない。

それが、間違いだった、ということに気づくのは朝になってからだが。

私は急いで桐裂コーポレーション本社ビルに向かった。もちろん、竜介を止めるため、だ。

……本当に止めに行っただけだからな。

そして本社ビルに入ってそこで見たものは。


「な……」


万には届くであろう警官が、全て気絶されていた。

こんな事ができるのは世界の軍人や格闘家ならまだしも、一介の高校生がやった事実とは思えない。


「竜介……」


あいつは、完璧に怒っている。かろうじて理性だけは保っているが、それがいつまで続くか。

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