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桜ヶ丘高校生徒会役員  作者: 嫁葉羽華流
冬の章 ~ソノオモヒハ ソラニイク~
129/151

百十七日目、そのままで、そのままで。

何となく言いましょう。

ハンカチの準備を。

俺は、言う。


「なんつーかよぉ、痛みとか、苦しみとか、そんなもんは人に必要なもんだ。だから、それは無くしちゃいけねぇもんだと思うんだよ。

お前は言ってたよな。『この世界には苦しみも、痛みも無い』って。それじゃだめだ。

どんな世界に行っても、痛みとかはつきものだ。苦しみがないことはない。

痛みがあるから、傷が治る喜びが味わえる。

苦しんでこそ、人の心のつらさも分かる。

だから、俺は元の世界に帰りたい。

いやさ、みんな連れて帰る。

萩も、柊も、乍乃も、桧木も、紅則も、雁岨も、そして、桜田も……みんなみんな、一緒の世界に帰るんだ。

だから。俺は今いる」


俺がそう言いきったあと、女は瞳を伏せた。

そして、


「そう……なんだ……じゃあ……」


女は、俺を蹴り飛ばした。

後ろにあるフェンスに当たって少しだけ血を吐いた。


「私は、あなたをこの世界には不必要と判断して、消滅しなくちゃならない……!」


※――――


お母さんは、私に後ろから抱きついて、言った。


「あなたがどう思っているのかなんて分からないし、知ることも出来ない。

でもね、私は思うの。だからこそ、あなたを思いやることが出来るんだって。

だから、私はあなたのそばにいなくても私はあなたのそばにいる。

忘れないでね。ハル。あなたは一人じゃないんだから」


慈愛に満ちた笑顔で、こともなげに、言った。

それを聞いたとき。

私は――なにか、暖かいものに触れたように思えた。


「お母さん……」


一言つぶやき、私は立ち上がった。


「ちょっと、出かけてくる!」


玄関まで一気に走り、ローファーを履いて、つま先を地面に打ち付ける。

そして玄関のドアに手をかけたとき、


「ハル」


お母さんが、後ろに立っていた。


「はいこれ。お守り」


そう言って、お母さんは手のひらに何かを握らせてきた。

開いてみると、そこには深青色のお守りだった。一般的なお守りの形で、結われた麻紐が、首にかけられるようになっていた。

中心には金色の糸で、「幸運成就」と刺繍されていた。


「良かった。間に合って。なんか作らなきゃならない気がしてならなかったの。ちょっと雑になっちゃったけど」

「ううん。すごい。神社に売られてるのと勘違いしちゃったよ」

「効き目ばっちり。直接に幸運が届きます」


ここでどこに、と聞くのはやぶ蛇だろう。

私はお守りをぎゅっと握ると、玄関を開けて言った。


「行ってきます!」


そう言って、夜の住宅街を走った。

そして、目指す場所に向かった。

私が行くべき場所……桜ヶ丘高校へ。

すみません。若干の作者からのメッセージです。

え? 意図はなんなのかって?

……すみません。それはネタバレ的なので言えません。

では。

次辺りでも、会いましょう。

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