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桜ヶ丘高校生徒会役員  作者: 嫁葉羽華流
冬の章 ~ソノオモヒハ ソラニイク~
124/151

百十二日目、「いつも」を過ごす人たち。

更新が遅れてすみません。

 朝。

 何も変わらない、平凡な一日だった。

 私はいつものようにお母さんに起こされ、

 私はいつものように遅刻寸前に学校に滑り込み、

 私はいつものように友達としゃべり、

 私はいつものように学校から帰ってきて、

 私はいつものように家でのんびりとテレビを見て、

 私はいつものようにお母さんとごはんを食べて、

 私はいつものように自分のベッドに入って。

 それが、私の「いつも」だったらしい。

 そして、今。

 私はその「いつも」をやっていた。

 まるで小説に出てくるキャラクターのように。

 まるでテレビやドラマに出てくる、俳優のように。

 まるでテレビゲームに出てくる勇者や村人のように。

 決まった行動をして、決まった事をやる。

 ああ、これが私が「望んだ日常」なんだ。

 あの電話の言葉がすこし納得できた。

 「生徒会役員」としてのつながりはそこにはなく、

 ただ、「学校」や「学校外」で会う「友達」。

 春樹や、抄華ちゃん、それに桔梗。

 これが、「私が一番ほしかったもの」だとするんだったら、私はそれを受け入れて、そのままもっててもいいのではないのだろうか。

 そう思った。


※――――


「ハルっち!」

「おぉうっ!?」

「まったく……何をそんなに驚いているんですか? ハルさん」


 私は「いつも」のように窓からぼーっと、外の景色を眺めていた。

 もうそろそろ春が来る。

 少し寒いと感じながらも、窓際で「いつも」のように外の景色を眺めていた。


「ご、ごめん、ちょっと考え事をしてて……」

「もー! しっかりしてくださいよね! ハルさん! この作戦の成功は、私たちにかかってるんですから!」

 

 そう言って抄華ちゃんはポケットからA4サイズの紙を机の上にばん! と叩きつけた。


「そう! 作戦名ミッション・ネーム『ラブラブ!? 二人ヲッチング』の成功には私たちにかかってるんですからね!」

「うん。毎度思うけど、桧木さんのこのネーミングセンスのなさはまさに天賦の才だと思うよ」

「ほめてるのかけなしてるのかどっちなんですか? 紅則サン?」


 精一杯の怒気をはらませながら抄華ちゃんは春樹を見た。

 その後、一つ咳払いをした後、作戦の説明を始めた。


「では、作戦ミッションの説明です。ミッションの内容は至極簡単。桔梗さんの恋をさらにより深く! 親密に! 嫉妬ジェラシーあふるる恋仲にすることです!」

「あれ? でも抄華ちゃん。これ作戦名がヲッチングってなってるんだけど……」

「ヲッチングはそのついでです!」

「んで、ホシのそばには?」

「この人です」


 そう言って抄華ちゃんはポケットから一枚の写真をとりだした。

 そこにはちょっとかっこいい、うちの学校の制服を着た少年が写っていた。なんというか、「寄らば斬る」といったような武人のオーラを醸し出している。


「誰?」

「閃神牙助。絶賛桔梗さんが片思い中の相手です」

「片思い?」

「ある人に対して恋愛感情を持っているが、相手が自分に対してそのような感情を持っているのかはっきりしない、または相手が自分に対して恋愛感情を抱いていないと思われる状況のことをいう。 稀に、双方が、お互いに相手に対して片想いをしている場合もある……Wikipediaより」

「そんなに詳しい情報は求めてないんだけど……」

「とーにーかーく! 私たちは桔梗さんの恋をおもしろおかしくぼうか……じゃなくって暖かく巣立ちを迎える親鳥の心境のごとき目線で見守るんです!」

「うん。明らかな下心をありがとう」

 

 絶対にもてあそぶ気だな、この子。

 そうやって苦笑いを浮かべていると脇から、


「私も一緒に行ってもいいですか?」

「わっ!? ……って、藤代さんですか」


 抄華ちゃんはちょっと驚いた後、平静を取り戻して「こほん」と一つ咳払いをして改めて作戦を説明していた。


「……なるほど。それはおもしろそうですね。よければ私も加えてくれないでしょうか?」

「いいですよ!! 三人よれば文殊の知恵、四人よればいろんな知恵、っていうじゃないですか!! それに藤代さん、結構頭いいですし」

「や、それは関係がないと思うけど……」


 春樹がやんわりと否定を入れた後、私たちは笑った。

 ただ、その笑いの中。

 誰かの支線が私にあったような気がした。

 気のせいかもしれないが。

 そんなこと、「いつも」には無いのだから。

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