百十一日目、一から始め。
なんだかんだでサクコーは一周年を迎えました。ありがとうございます。
これもひとえに読者様方の応援があったからこそだと思います。
これからも末永く、この作品とおつきあいをよろしくお願いします。
――んな事はともかくとして早速本編へGO!!
消失編、第三話!!
「桜田。ちょっといいか?」
休み時間。コガセンに不意に呼ばれた。
一応コガセンの所に行った。コガセンは職員室まで私を連行(?)していった。
「んで何ー? コガセン」
「? コガセンって……。珍しいな。いつからそんなにフランクになったんだ? 桜田。いつもだったら私のことは『甲賀先生』って呼んでいるだろう?」
こ、甲賀先生って……。
私は一体どんなキャラだったんだ!?
自分自身に自己嫌悪と探りを入れたい気分になりつつ、
「んで、コガセ……じゃなくって、甲賀先生何の用事なんですか?」
「んー? お前にちょっと藤代の学校案内を頼もうと思ってな」
藤代八雲。
自己紹介の時に私をじっと見ていたあの子だ。
「なぜに私なんですか?」
「? 確かお前、藤代とは同じ中学の友達じゃなかったか? だいぶ親しいと聞いていたぞ」
「はぁ……――ッ!?」
一瞬、視界がぐらついた。
ちょっと頭を押さえて深呼吸。深呼吸。
――中学校からの友達。
何かを思い出しかけたけど……何だったんだろ?
まぁ、些細なことはほっておいて……。
「あの……できればそーいうことは別の人に……」
「ちなみに引き受けてくれたら午前中の授業は免除だ」
「やりましょう」
困っている人を放っておくのはいけないことだと思う。
―――※
「――ここが保健室。九割仮病の人が使う部屋。んじゃ、藤代さん、いい? 行くよ?」
「はい」
どうも。桜田ハルです。
今現在、私たちは学校の中をぶらりぶらりと彷徨っています。
と、いうのも今藤代さんの学校案内中。
意外と骨が折れるんですね。これは。
「ここは食堂。おいしい物とかがあるところ」
かどうかは定かではないんだけどね。私行ったことないし。
「まぁ、食堂ですし。おいしい物とかがたくさんあるんですね」
これは藤代さんのコメント。
んで、さっきの食堂がラスト。
「以上、桜ヶ丘高校の案内でした、っと。なんかもう一度行きたいところ、他にない?」
藤代さんは少し考えた後顔を上げ、
「……生徒会室に行きたいんですが」
――――※
「――ここが生徒会室。詳しくは分かりません」
と、言っているものの、内心、のぞき込みたくてうずうずしていた。
この中にはいつも通りの生徒会があるはずだ。
そう信じたい。
生徒会室棟が無かったことには少し驚いたけど……。でも、
(居るはずですよね? 会長)
願いを込めてドアを開いた――――。
「ん? いらっしゃ~い生徒会室へ~」
「かわいらしい生徒会役員もいらっしゃるんですね……どうしたんですか? 桜田さん? 顔が青いですよ?」
いや、青くもなる。
だって、目の前にいるのは……。
「おい、黒芽。そんなところで油を売らずに、さっさとこちらの書類を整理しろ。卒業式まで日はないんだぞ」
「んにゃぁ~。輝君のいじわるぅ~」
いつぞやだったのか忘れてしまったけど、そこにいたのは麻上輝と黒芽エルだった。
てか――
「な、なんで……ここに……?」
「あら? いつぞやの校門の子じゃない」
そう言って話しかけてきたのは柊先輩だった。
ちなみに萩先輩は黙々と自分の作業をこなしていた。
「ひ、柊先輩!? あ、あの、その……こ、この二人って生徒会の人……でしたっけ?」
「ぶーぶー! ひどいぞー! ぶー! ぶー!」
「僕らは正々堂々と生徒会選挙に立候補して、そして今、この場所にいる。違うと言うことは無いだろう?」
「…………」
私はただ、呆然としていた。
「桜田さん? どうしたんですか?」
「…………お仕事中、失礼、しました」
何とか声をひねり出して、私たちは生徒会室を後にした。
昼休み。
私は図書室に行って生徒名簿を覗いていた。
ほんとは普通の生徒は覗いてはいけないモノだったが、ちょっと目をかいくぐって見ることに成功していた。
そして私は一人の生徒を捜していた。
「夏樹竜介――夏樹竜介――」
三年生の名簿を見つつ、会長の名前を必死に探した。
だが、三年生の名簿の最後の欄にも、二年生にも、ましてや一年生にも居なかった。
私は、確信した。
いや、確信してしまった。
この学校に――桜ヶ丘高校に――
「会長が……居ない」
そう絶望と一緒につぶやいた。
その瞬間。
たら~ら~らら~ら~らら~ら~らら~ら~(花は桜 君は○しのテンポで)
携帯が鳴った。
私は携帯を取って見てみると、またしても非通知でかかってきていた。
「……もしもし?」
『どうですか? あなたの望んだ日常は、楽しめていますか?』
「……会長は」
『あの男は居ませんよ』
「――――っ!」
『あなたがあの男をどれだけ渇望していても、私にはそれをどうにかすることはできません。あの男がいるから、この世界は駄目になってしまうのです』
「会長は、そんな人じゃ――」
『とにかく。あなたの望んだ日常には、あなたを敵視する人間も、あなたの特別な力も、あなたの何もかもが一から始めです。これで、私からの電話も最後です。では、桜田さん』
そして、電話の声の主は少し笑ったような声を出し、
『明日、学校で会いましょう?』
そう言い残し、電話は切れた。
会話の終了音が――あのツー、ツー、と言う音が、ひどく虚しく私の中に響いていた。