百五日目、卑怯汚いは敗者の戯言
ちょっち長めです。今回は。
前回のあらすじ。
サッカーをすることになりました。
「では……キック・オフ!!」
ぴぴーっ!!
試合開始のホイッスルが鳴らされた。
ボールはまず会長に渡された。
そしてゴールに向かって……。
「うぉらぁぁぁぁ!! どけどけどけどけぇ! ひき殺されてぇか!!」
「ひき殺す気ですか会長!!」
工事用一輪車でボールを載せて一直線へゴールへ。
「――って、アホですか!! てかそれどっから持ってきたんですか!!」
「昨日『三丁目の夕日』に向かって落ちてたから拾って今日使ってみた」
「……なにやら発言が危ないですね」
そう言ってる井宮さんは動きにくいメイド服で私たちと同じスピードで駆け回っていた。
ある意味すごいなあの人は。
そして会長、向かってくる敵陣の中を颯爽と(工事用の一輪車で)突っ切っていった。
だけど……読者の皆さん。想像してください。
この……サクコーメンバーですよ?
ただですむとお思いで?
「どくべや竜介ぇぇぇぇええええ~!!」
そう言って久々の登場で張り切っている薄影先輩が会長に向かってスライディングしてきた。
そのスライディングはさながらボブスレーのような速さでつっこんで行っている。
「うおぉぉぉおおおおおお!?」
一輪車は見るも無惨な位に薄影先輩のボブスレースライディングによって粉々に砕け、ボールは天空へ舞い上がった。
そして……。
「桜田!! ボールはいきてんぞ! クリアしろ!!」
「クリアって何ですか!? 意味分かりません!!」
馬鹿でした。私。
クリアって何? わかんないよ。ちゃんと日本語でお願いします!
「貰うぞ!」
意外と運動神経がよかった桔梗にボールがとられ、そのままあり得ない速さで私たちの陣までつっこまれていく。
てかあれ速すぎない? どーなってんの?
てかあれ? ん?
なんか……桔梗の足に車輪みたいな物が……。
「萩! この『淫裸陰助絵斗』ってどうやったらとまるんだ!?」
「ふつーのスケートと同じようにしてとまって!」
「てかインラインスケート使ってるんじゃないんですか! しかも当て字が妙にエロい!! 普通にインラインスケートって言って!!」
だめじゃん!! インラインスケート使ってちゃだめじゃん!! ちゃんと自分の足で走ろうよ!!
「くっ……止まり方が分からん……。雫!」
そしてインラインスケートにのったまま桔梗が雫ちゃんにパス!
しようとしたそのときだった!!
だちゅん!!(ボールの軌道が何かによってそれた音。てか簡単に言うと狙撃音)
『ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ!?』
「ナイス! ひのきたん!!」
「ひのきぃ? 誰ですかそれは……です」
会長が抄華ちゃんに向かってハグをしようとしたとき、抄華ちゃんは会長に散弾銃を一発ぶちかました後に姿勢を整え、いつの間にやらかけていた星形眼鏡を外し、言い放つ。
「私は……エリア内のボールの軌道修正屋……ヒノキ13……です」
「いいにくっ!! 普通にサーティーンっていいなよ!!」
「版権に関する。《禁則事項》だ……です」
劇画タッチで言えば何でも良いってもんじゃないと思う。
てか星形眼鏡って。
んなつっこみをしている場合じゃなかった。軌道修正(という名のゴム弾での狙撃)でボールはコガセンの方へ。
「っしゃ。任せろ。行くぞ! 秋原、柊!」
『応ッ!!』
「あ……あれはっ!!」
「会長!? こっちも劇画タッチ!?」
「間違いない……あれは三国志の陣だっ!!」
「三国志の陣?」
「『三国志の陣……中国四千年の歴史の中で生み出された近づく物全てを力づくで消し去る三角形フォーメーションである! 起源は無論、劉備・ジョナサン、そしてサッカーの神・ジョナベスによって考案された! これを使うと地球のなんか気力とか魔力とかMPとかHPとかそのたもろもろを使ってその、良い具合に相手にボールを渡さない陣である!! ミンメイ・パブリッシング・カンパニー著 『よい子のための蹴球』より』」
「なげぇ!! しかもかなり曖昧!! あと三国志の人名間違ってる!!」
でもさすがはなんちゃって中国四千年の歴史。相手にボールを渡さずにそのまま三人は相手のゴールに一直線に進んでいった。それこそ生で見たらレッドカード続出なくらいに。
そしてゴール前。
GKは……おばあちゃんだった。
「ひよっこ共が……アタシに勝てると思ってるのかィ?」
「やってみなくちゃ!」(コガセン)
「わからないでしょう?」(柊先輩)
『師匠、すまん』(雁岨さん)
『くらえっ!! I・M・N・Yシュート!!』
「技名が中二センスだぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」
そんなつっこみがさえ渡る中、ボールはなんか野球のナックルボール的な分身をしておばあちゃんに向かっている。結構速いぞ!? あれ!! 大丈夫か!?
「仕方ないねぇ……これだけは使いたくなかったんだけど……」
そう言っておばあちゃんはなんか気を溜め始めた。背後には陽炎が……。
そしてっ!!
「喰らえィ!! 渾身のイソギンチャクの手!!」
イナズ○イレブン!?
作者はやったこと無いのに何故これを使った!?
い、いや……つっこんでる暇は無かった!
なんかたくさんの手によって掴まれたボールはそのまま相手に投げ返された。
そして……私たちのゴールキーパーは……
いない?
「あ、ゴールキーパー設定しとくの忘れてた」
……ごーる。
投げ返されたボールはゴールネットを揺らして、試合終了のホイッスルが鳴らされた。
「いっやぁ~メンゴメンゴ。GK決めてなかったな。ホントごめん。てかさ。よく考えたらさ、サッカーとかに一輪車とかチェーンソーとか使っちゃいけないよね。なんか反則的なフォーメーションとかも。いっやぁ~。ホント。今度は普通のサッカーを……あれ? なんだ? どうしたお前ら? 何でそんなに背中に陽炎をしょってるんだ? あれ? 何? 何で桜田は手をばきごきならしてんだ? なんでひのきたんはどこからともなくロケットランチャーを取り出してるんだ? 何で雁岨はチェーンソーを取り出したんだ? 何でコガセンはチョークを取り出してんだ? なんで井宮さんはメリケンサックを取り出してんだ? なんで柊はハァハァしながら一眼レフを構えてるんだ? あれ? ねぇ? ちょっと? 何でこっちに? あれ? 皆さん? ま、まて。話し合おう。話し合おうじゃないか。ほ、ほら、相手方は水月の羊羹を今まさに食おうとしているぞ? いつものノリで行こうぜ? な? だからお前ら…………
その手に持ってる凶器とかを下げてください」
涙姿で土下座している会長を一瞥し、私たちは言い放った。
『アッハッハッハッハッハッハッハッハッハ………シネ☆』
その日の夕方。
布を裂くような悲鳴がたっぷり三分間した後、へんじのないただのしかばねができあがったそうな。