百三・五日目、サー・イエッサー!!
これを描いていたが為に今の今までのものが遅れておりました。申し訳ございません。
まぁ、それはともかくとして百三、五日目。お楽しみください。
「ところで二人とも、お家に遊びに来ませんか?」
そんなことを不意に抄華ちゃんは言い出した。
「抄華ちゃんの家?」
「曹長さんの家……ですか」
「はい、ちょうどてい……じゃない、パパが帰ってきていていて、是非とも私の友達に会ってみたいと言っていて……」
へぇ。
抄華ちゃんのお父さんが、ねぇ……。
どんな人なんだろう……。
「まぁ、すこし外国人部隊で働いているだけですし……そんなには」
『外国人部隊!?』
え? フランス帰りのお人ですか?
「そ、それでも、少しの間つとめていて……今では各地紛争地帯に医者として行っているだけですから……そんなには」
「は、ははは……」
「紛争地域で……お医者さん……」
とにかく、戦争を渡り歩くことにはすごい人らしい。
と、言うわけで。
※――――
日曜日。
学校の生徒会も休みなので抄華ちゃんの家に遊びに行くことにした。
「ここがお家ですか~」
「まぁ、早速入って……」
そう言って一歩入ろうとしたとき、抄華ちゃんが待ったをかけた。
「これを見ていてください」
そう言って手頃な石を一つ握って庭に投げ込んだ。
するとそれは地面に当たり。
ずどん。
…………え?
何今の。
なんかまぶしい光がした後にそこには穴が開いているんだけど?
「あちらこちらに閃光落とし穴が仕掛けてありますから気をつけてください」
『いやいやいやいやいやいやいやいやいや!』
急いで突っ込む!!
「え? なんでそんな罠を設置しておくの!? 普通の民家だよね? これ!」
「なな、なのにこんな物をせっちする必要性がまったく持って感じられません!」
めっちゃ動揺する私たち。しかし抄華ちゃんはけろりと、
「え? これって普通の防犯設備ですよね?」
「いや、普通じゃないから!」
これが普通であればたいへんだよ! どこの紛争地帯なんだよ!
とにかく、抄華ちゃんの後についていけば罠は回避できるということだったので私たちは無事、桧木家に入ることが出来た。
「ただいまー」
「お……おじゃましまーす……」
「はひぃぃ…………」
一人は普通に。一人はめっさつかれて。一人はボロボロの状態で玄関へと。
それもそのはず。設置された罠は閃光落とし穴以外にも巨大ハンマーや巨石、硫酸の入った落とし穴にせり上がる竹槍まであった。ひどい物になっては上空レーザーまで。
……桧木家、恐るべし。
「まぁ、家の中ではそんなにひどい物はないですから」
「あ……あはは……だといーね……」
まぁ、こんな事をしていればまぁ、普通の人よりかは丈夫なんじゃないだろうか、この子は。
つくづく恐ろしさの片鱗を見た。
「まぁ、居間でくつろいでてください。お茶を持ってきますから」
そう言って抄華ちゃんは台所に消える。
その間私たちは周りを見渡していた。
二十五インチほどのテレビ|(でかっ!)や、いろんなトロフィー|(そのほとんどが射撃や狩猟大会のもの)が置いてあった。
ふと、端っこに家族の写真があった。
そこにはまだ(今よりも)小さい抄華ちゃんや顔がよく似たお母さん、背の高い、優しそうなメガネをかけた男の人がいた。でもあれ?
なんか隣にもう一個写真立てがあるような……?
「お待たせしました」
それを調べようと席を立とうとしたとき、抄華ちゃんが台所から帰ってきた。
「はい、これ。お茶っぱがどこにあるか分かりませんでしたよ~。ほんと、こういう時に困りますよねぇ」
「いや、ていうか抄華ちゃん……」
「これは……何なんですか……?」
私たちの前に出されたのはなにやら丸っこい容器にストローが刺さった液体が入った物。でも液体は澄んでいるからかろうじて飲める物なんだろう。だが、それ以前にもう一つ奇妙な気配を発している物があった。
そう。目の前にある円形とも四角形とも言えない、固形の物質。
なんかいいにおいがする。
「? 何って……マテ茶とレーションですよ?」
『レーション!?』
「はい。お二人とも、体力が大変なことになってますからね。ささ、こんがりおいしく焼いていますので、冷めないうちに」
「いやいやいやいや! レーションて何!? そこを言うけど!」
「軍曹さん、レーションは携帯食料ですよ」
「いや分かるけど! 何故焼く!?」
「あら? こんがりレーションはお気に召さなかったかしら?」
そうやって入ってきたのは背の高い抄華ちゃんによく似た女の人。すごくきれいだった。胸もなんかぼーんて出ている。
……やばい、負けた。
「? 軍曹さん? 何へこんでるんですか?」
「い、いや……何でも……」
「あ、ママ」
「抄華ちゃん、お帰り。大丈夫だった?」
「うん。平気。それと、ここにいるのが以前話してた……」
あら、と言って抄華ちゃんのママさんは口に手をあて、
「こっそりと無線傍受をして聞いてたけど……なるほど、彼女たちが抄華ちゃんの……娘がいつもお世話になってます。粗相をしませんでしたか? この子、昔から変なことがあるとすぐ手榴弾を爆発させちゃって……」
「もう、ママ。それは昔の話だよ。もう手榴弾はやらないって。今は安全にC3ですませてるから。それに、また無線傍受してたの?」
「ええ。だっておもしろいんですもの」
「もう、相変わらずなんだから」
「うふふ」
「あはは」
「うふふ」
「あはは」
『いやいやいやいやいやいや!!』
何なんだ!
何なんだ今の会話!
突っ込みたいことが山ほどあるよ!
「無線傍受って!? どゆこと!?」
「ああ、私の趣味なんです。一応資格持ってますので」
「ああ、アマチュア無線……」
「まぁ、所詮プロですが」
その道のプロだった。
「ママは自衛隊に少しいただけだから、そこまでは強くはありませんよ」
「ふふふ。すこし合気道をたしなんでいただけよ?」
「は、はぁ」
なんか、すごそうなお母さんだった。
そうやってたとき、
「やー、帰ってきていたのか、抄華」
背後から急に声がした。気配すらも完全になかった。まさしく幽霊のように急に出てきたのだ。
「あ、パパ」
「ひょっとして、こちらにいるのが、抄華のお友達かな?」
「はい。ハルさんと雫さんです」
「ど、どうも」
「初めまして」
とりあえず私たちは抄華ちゃんのお父さんにもご挨拶。
抄華ちゃんのパパさんはにこやかに、
「ははっ。いや、いつも抄華と仲良くしてもらっていて、僕もとてもうれしい――」
とそこまで言ったとき、目の前をハエが通り過ぎ――
突如、謎の煙が。
見ると抄華ちゃんのお父さんが銃を握って引き金を引いた後のように銃口から煙が出ていました。
え?
「いやぁ、人と話している最中にハエが飛ぶなんて。まったく持ってKYなハエだね」
「まぁ、お父さんったら」
「あはは」
「うふふ」
『いやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!』
ちょっと!
和やかな会話の最中悪いんですけど、え?
いま、まさかハエを……。
「飛んでるハエを撃ち落とすのは余裕ですよ?」
「いや、箸でつかむことすら難しいよ!?」
「軍曹さん、何をあわてているんですか? 今時の達人は箸でつかむどころか、その足に紐をくくりつけることも出来るんですよ?」
「いないよ! そんな達人!!」
そうやって突っ込んでいると「そういえば……」とパパさんが話を切り出した。
「さっきからその子は君のことを『軍曹』と呼んでいるけど……どこかの軍関係者かい?」
※――――
翌日。
「軍曹さん……生きてますか……?」
「ごめん……あの後の事がまだ頭に残ってて離れない……」
あの後、急にガラリと態度が変わってとんでもない程の訓練を受けたのだ。
庭の周りを(トラップ解除無しで)走り回ったり、家の中でサバゲー(当たったら腕立て伏せ500回)をやったりとさんざんな後半戦が待ちかまえていた。
「あれくらいは普通ですよ? 家では」
思わず全員がその場で引いた。