九十九日目、トニカク、カオスな状況になってきてないか、これ?
「ここ、だな……いるとすれば」
自分は繁華街から外れたとある廃ビルに来ていた。
こういうところは不良のたまり場になっていることが多いのだが、実際、不良やヤンキー、もしくはヤクザ、ときどき麻薬のブローカーなどがここに出入りする。
……自分はどうやら、こんな風に記憶を思い返すうちになにかと思い出してきたのかもしれない。
自分は廃ビルの中に足を踏み入れた。
埃が少し舞う。
月光に照らされて何か光る一筋の光が見える。
自分はその光を不思議に思い、背中から木刀を二本取り出した。
木刀はどうやら塚の部分でゴムチューブか何かで繋がれており、伸縮ができるようになっているらしい。
自分は木刀のうち、一本をその光る線に向かって投げた。
少しの手応えの後、ぷつんと切れる音がして糸のあった場にネットが落ちてきた。
そして少しした後、非常ベルが鳴った。
人の怒鳴り声が非常ベルの警報の音と共に近くなってきた。
やがて、人が集まった。
その数、ざっと見てから五十人弱ほど。
鉄パイプや角材、鎖や釘バットを装備している奴もいる。
そのうち一人がこちらに向かってきた。昼間自分がぶちのめした男だ。頬に湿布が貼ってある。
「よぉ? クサナギ。一人で来るなんて……よっぽどしにてぇらしいな……?」
「その前に、僕にぼろぼろにされておきながらまだ手を出そうだなんてね……君は真性の馬鹿か、それとも――――」
なにか場の空気が緊張してぴりぴりとなってきている。
そして、自分の一言によってその緊張が破られた。
「――ただの阿呆の軍勢か」
先頭の男が咆吼をあげた。
それにつられてなのか、後ろにいた男達が各々の武器を持ってこちらに向かってきた。
自分は木刀を持ち直し、目の前を見据えた。
そして最初に向かってきたのはやはり先頭の湿布の男だった。
手にはサバイバルナイフを持っている。そういえば昼間も使ってきていたな。
「死ねやぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」
ナイフを振りかぶってこちらに刺しかかってきた。だが、
「ふっ」
自分は短く息を吐きその男の手からサバイバルナイフをたたき落とした。
男は何があったのかさっぱり分からない様子できょとんとしていた。
それを見計らって自分はその男に足払いをかけ、すっころばせた後、その男の足を持ち、向かってくる男達に向かってぶん投げた。
男達がうろたえている隙をねらって、自分は切り込んでいった。
「くくくっ……まぁだかなぁ?」
誰もいない体育館。
そこには愉快犯が一人、眠っている萩の隣で嬉しそうににやにやとしながら見ていた。
「まぁだかよぉ? はぎぃ……はやく……はやくもどってこいよぉ」
そんな声が響いたときだった。
どこからともなく鈴の音が聞こえてきた。
そして何かが勢いよく近づいてくる音も。
そして。
「――――メェェェェエエエエリィィィィイイイイイクリスマァァァァァァァァアアアアアアアスゥゥゥゥウウウウ!!!!」
ドアから勢いよく出てきた黒い影。よくよく見てみると……。
点滴台。
キャスター椅子。
そして見慣れぬ白衣を着た女の子。どうやら目を回しているようだ。
そしてそれらの存在を更に異様に引き立たせていたのは……。
真っ白な袋を担いだ、赤い服と赤い帽子。先端には白くほわほわとした玉がついており、途中でくにゃんと曲がっている。
そしてこれまた赤いズボンに更に異様だったのは黒いサンダル。
金髪が帽子からちょこんと飛び出ている。そう。こんな登場をする奴は一人しかいない。いや、この小説内ではこんなド派手な登場をする人物はコイツしかいない。
「待たせたな野郎共!! 夏樹サンタがプレゼントを届けに来てやったぜ!!」
唯一一人しかいない、単なる馬鹿。そしてこの窮地を救える、たった一人の人物。
はい!! ここら辺で少しギャグ的な要素が加わってきます!!
え? 結末はどうなったのかって?
……安心してください。きっちりとやりますから。