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桜ヶ丘高校生徒会役員  作者: 嫁葉羽華流
冬の章 ~ユキ ト オモヒデ~
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九十七日目、怒れるメイド。落ちる副会長。

だんだん……なんかこう……コメディーの方がこれ重点的になってきました……。

そ、そんなこんなで! 九十七日目、ご覧ください! どぞー。

人が、死んだ?

あの工場には、人がいた?

何でだろう?

どうして僕は、こんなにも。

こんなにも固まってしまってるんだろう?


「おー。固まってる固まってるねぇ」


アイツが何かを言っている。

でも、そんな事じゃない。

そんなことじゃ、ないんだ。

人が、いた。

僕が、殺した、のか?

僕は何かが崩れていく音を感じながら、そのまま膝から崩れ落ちた。


「ま、いーじゃねーか。人はいつか死ぬんだかラよ? そぉれによぉ。昔のお前だったらこの程度のこと、へでもねぇべ?」


何か言ってる。

聞こえない。

聞こえない。

聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない!!

何も感じない! 何も聞こえない! 何も考えたくない!!

僕は頭を抱えて耳をふさぎ、何もかもを聞こえないようにした。

けど、聞こえてくる。


「思い出せよ。ハギぃ。昔のお前をよぉ。思い出せよぉ。思い出してくれよぉ……今のお前は、ただ、ただつまんねぇんだよぉ……!」

「それによぉ、ハギぃ。お前にはこんな生ぬるい世界なんて、にあわねぇんだよぉ……」

「あばれてぇだろぉ?」

「あばれさせてやるよぉ?」

「怒りが……世の中への不満が、お前の中に渦巻いてるんじゃないのかぁ?」

「さぁ……ぶつけろぉ……お前の思いの丈をよぉ」


そして、僕の意識が段々と遠のいていくように思えた。


――――ごめん。

――――ごめん。紫苑。

――――ごめん。会長。

――――ごめん。みんな。

――――ごめん。


最後に僕がちらと眼裏に浮かんだ映像は。

みんなで楽しく、談話している絵だった。















がっ! どっ! ごっ!!

何かを殴る音。

何かを蹴る音。

それは、人を蹴る音だった。

それは、人を殴る音だった。


「ひ、ひぃぃ……」

「へっ……ちょれーな? おい」

「い、命ばかりは……命ばかりは……!」

「だからよぉ……そんなこと言っても、だぁめなんだって……なぁ?」


黄色いハンケチを、スカーフとして巻いている男が、自分に向かって言っている。

そして、自分は言った。


「ああ……ボクの部下に手を出した罪は……重いぞ?」

「んで? どーすんの? コイツ?」


自分はすでに殴られた奴の顔を見た。唇は切れ、服はぼろぼろ。目は半泣きになっている。

自分はふ、と笑った……ような気がした。


「適当にコンクリに詰めて湾に沈めろ」

「うひょー! きっついねぇ……さすがはクサナギだ!」

「うるさいぞ……ショウジョウ」

「へーへー……っと」


そしてショウジョウ……とクサナギ……自分の名前らしい……が呼んだ男が他の人に言ってその倒れた男をどこかに連れて行った。

おそらく先程自分が言った通りのことをするつもりらしい。

ショウジョウと呼ばれた人物がこちらに近づいてくる。


「さっすがだなぁ? ハギ・・?」

「うるさいぞ、康煕コウキ。少しは静かにすると言う行為を覚えられないのか?」

「おーおー。怒らせたらこわいからねぇ……さすがは萩組の若頭……だっけ?」


……そうか。

これは、自分だ。

と言うことは……これは……自分の、過去?

過去、なのか?













一方。こちらの……「黄色いハンケチ」のグループのアジトでは……。


「寒いな……」

「ああ……さすがにこんなところでクリスマスを過ごすなんてよ……康煕さんにも困ったぜ……」

「にしてもよぉ……萩さん、戻ってきてくれっかな?」

「ああ?」

「いや、今、康煕さんがうちらのグループを仕切ってるだろ?」

「そうだな? それが?」

「いや、康煕さんが急に『萩を連れ戻してやる』って言ったときには何をトチ狂ったのかと思ったけど……」

「なんだよ……康煕さんは確かにあんな感じだけど……萩さんのことは信用してるんだろ? っということは、萩さんを連れ戻しに交渉に行ってるんだよ」

「でも萩さん……ああみえて堅いぜ? そう簡単に聞いてくれっかなぁ……」

「さぁな……ん?」

「どうした?」

「いや……気のせいか? 今さっき……メイド服の女がいたような……」

「まさか。おまえ彼女にメイド服でもきせてんのか?」

「彼女なんているわけねぇだろ? あーあー。どうせだったらアキバにいってメイド喫茶にでもいきてぇよ」


そこまで見張りの男達が言った時だった。


「……そこまで言うのならば少し体を暖かくしてはどうでしょうか?」

「え?」

「な?」


二人の背後にメイド服の女性がいた、と視認したと思ったその刹那。

二人の男はいつの間にやら雪の奥深くに埋められていた。

まるで……頭から雪に刺さったみたいに。

出ているのは靴だけだった。

体勢を立て直したメイド服を着た女性は背中に陽炎を浴びながら目の前の建物をねめつけるように見た。


「……この中にお嬢様がいるのですね」


そして、小さく息を吸い込み、一気に言った。


「……誘拐犯共。私こと柊家専用メイド、井宮朱鷺の嫌いな物を教えて差し上げましょう」


一つ、と小さく言って前にある雪をブーツで力強く踏みしめた。

と思ったらその雪はへこみ、大きなクレーターを作った。


「……お嬢様にむやみに手を出そうとする物……」


二つ、と小さく言ったときにアジトの中から出てきた男達が井宮さんに向けて発砲してきた。

が、それを流れるような動きで全弾よけた。


「……お嬢様の貞操を奪おうとする物……」


そして三つ、と言ったとき、自身の目がキラリと、昆虫類の目へと変化した。顔は暗く、目だけが異様に光っている。男達は暗闇の中で妖しく、そして異様な光を……人知を超えた光を放つメイドに怯えていた。


「……私の邪魔をしようとする者。これらに値する者には地面へのキッス権を押しつけましょう」


さぁ。と言って男達の眼前に瞬きをした、と同時に近づいた。


「……最初にキスをしたい人物はだぁれぇでぇすぅかぁ~~~~~~…………!?」


そして、辺り一帯には血溜り(という名のトマトジュースと思っていただきたい)と倒れている男達(という名のマネキンと思っていただきたい)が散乱していて……。

そんな男達の通ったあとには。

エプロンドレスを血に染めた、にやりと笑うメイド(という名の鬼子母神)がいたらしい……。

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