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桜ヶ丘高校生徒会役員  作者: 嫁葉羽華流
冬の章 ~ユキ ト オモヒデ~
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九十一日目、出だしも仕事もいろいろある。いろいろあるから、結構難しかったりする。

「新しい出だしを考えようじゃないか!!」


それは、会長の一言から始まった。


「はぁ……」

「……なんでとか、聞かないんだな……桜田」

「もはや聞くのも鬱陶しくなります」

「雑務が! 雑務がぐれた!!」


しかし、今回のみんなは非常に冷徹……そのわけは……。


「早くしてください会長。こちらの承認の判子を押してもらわないと、卒業式が滞りなく始まらないんですからね? ダメなんですからね? サボっちゃ」

「うぅ……今回は仕事かよ……仕事話かよぉ……はぎぃ……サボらせてくれよぉ……」

「ダメです」


それは私だって同じだ。


「会長? 文句ばっかり言わないでくださいね? 昌介、こっちの書類は終わってる?」

「あ、終わってる」

「じゃぁ抄華ちゃん? こっちの書類を印刷してきて」

「はい。あ、じゃぁハルさん、こちらの方の書類を作成していてください」

「はいは~い、っと……」


そう言いつつも机についてキーボードを叩き始める。

軽やかに。

優雅に。

そしてアグレッシブに。


「――ってハルちゃん!? なんかすごい勢いでキーボードを入力しているけど!?」

「へ? ……ああ。これですか」


さすがに生徒会に入ってこんな風に何万何千回に渡って入力を続ければ意地でも早くなるだろう。

喋りながらもタイピングする手は止まらない。つーか止められない。

――えびせんとか食べたいなぁ……。

そんなことを考え始めていたとき、


突然、机が宙に浮いた。

そのまま机は、一世代前のちゃぶ台返しよろしくひっくり返った。


「うがらっしゃぁぁぁぁぁぁぁあぁあああああああああ!!」

「って会長何してるんですか!? 何をトチ狂って!?」

「紫苑! 会長を押さえて! 今桧木さんに麻酔銃(鯨用)を持ってきてもらってるから!」

「鯨用って死ぬんじゃぁ……」


ひっくり返した主かいちょうは暴れながらも抗議行動(?)をしていた。ガキかアンタは。


                  ~数分後~


「――と、言うわけで! 今から新しい小説の出だしを考えるぞ!」


まぁ、仕切り直し。会長の一言(と、大暴れ)で今回の仕事が決まった。


「出だしって言われても……いろいろありますよね?」

「まぁな……まぁ、最初の出だしがこんな人だっているからな」


爆発した。


「って何がっ!?」


俺は孤独だっ!!


「何でッ!?」


ジーザス!!


「訳がわからない!!」


すぱーん。


「擬音から!?」


俺はヒーローだっ!!


「今の時代はたぶん必要ないと思う。そしてアパートに行ってくださいっ!」


いきなり地の文を乗っ取られたものだからびっくりした。

何でいきなりこんなものを引き載せる!?


「まぁ、こんな出だしがあったりするからな」

「無いですよ!? 私が知る限りこんな出だしから始まる小説は見たことがないですよ!? ついでに作者も!!」

(※確かに。By作者)

「まま、ほかにもこんな出だしがあったりするからな」


世界は美しい。しかしそれ故に、美しくなんか無い。


「どんだけこんな危ない出だしを考えるんですかぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」

「そのほか、こんな物まで」


何事もはじめが肝心なのよ!


「碧陽学園!?」

「生徒会議事録だな」

FFファンフィクションでもやってらっしゃる人もいるから止めて!!」

「でも確かに、会話文から入る出だしってありますよね」


萩先輩が妙に落ち着いた口調で話し始めた。確かに。

最近の小説の出だしって、バラエティーに富んでいるらしい。

いきなり戦闘シーン、なんてものもざらだ。

しかし……なぜに今頃……出だしなんて……?


「まぁ、俺が書こうとしている小説の出だしがうまく決まらんのでな。今度なろう文庫小説大賞に送ろうと思ってるやつにな」


『……はぁ……?』


「いやぁ、ほんとありがとな! ほとほと困ってた……ってあれ? なんだお前ら? その後ろに浮かぶ赤色の陽炎は?」

「……会長?」

「……な、なんだ? そんなにゆらぁりとこちらに向かってきて……?」


そして私たちはちょっとずつ……

ちょっとずつ……会長の机の上に承認すべき判子を押さなければならないものや、会長が仕上げなければならない書類。

これらがちょっとずつ積み重なっていっていた。


「あ……あのー……? これらのものは?」

「……会長?」

「……はい?」


そして私たちは一言告げる。


『……ふざけてないで、仕事しましょうね?』

「…………………………………………はい」













「……会長?」

「おう、乍乃。お疲れだな? 目の下にはクマができているぞ?」

「はい……実は……『なろう小説家文庫』という文庫本の大賞に出そうと作品を考えていまして……それで、小説の出だしが思うように浮かばなくて……」

「出だしはそんなに重要なのか?」

「……はい。とても重要なんです」

そう言う雫はげっそりとやせこけているように見える。髪の毛がぼさぼさ。いくつか毛羽立っている。

……というか、どうやったら髪の毛って毛羽立つんだ? 誰か説明プリーズ。

「うむ……」

なにやら夏樹は考え込むような仕草をしていた。

「ほかの奴らに言ってはダメか?」

「ダメですよぉ……」

「? なんでだ?」

「だって……恥ずかしいですもん……」

夏樹ははぁ、と溜息をつくと言った。

「いいか? 乍乃。自分のやっていることに誇りを持て。お前が持っているそのやりたいこと。ホントにやりたいことか?」

「……ほえ?」

「いいか? やりたいことはやり遂げろ。誰かに笑われたってかまわない。やりたいことは最後までやりきってやれ。そして結果を出したら、笑った奴らを逆に笑い飛ばしてやれ」

ま、といって区切った後、続けた。

「うちの生徒会にお前の事を笑うやつなんざ、一人もいないけどな」

それから何かを思い立ったかのように柏手を打った。

「よしっ! 俺に任せとけ!!」

「ほえ?」

「俺がその出だし、考えてやるぁ!」















ということで考えようとしたんだが……スマン。乍乃。

俺、仕事しかできないような機械になっちまいそうだ。


「ほら、会長! 手が止まってる!」

「判子を押してください!! 早く!!」

「……ふぇ~ん……今回の議題について話し合おうぜぇ……おまえらぁ……」


そしたらみんながキッと見てきて……。

一斉に言った。


『ダメですっっっっっっっっっっっっっっ!』

「そんなぁ~……」


そしてその頃……乍乃雫は……。


「ぐ~……ぐ~……」


眠りこけていました。幸せそうに。

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